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プリンスの冷たいキス

プリンスの冷たいキス


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★☆☆☆1
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著者プロフィール

 ケイト・ヒューイット(Kate Hewitt)
 アメリカ、ペンシルバニア州で育つ。大学で演劇を学び、劇場での仕事に就こうと移ったニューヨークで兄の幼なじみと出会い結婚した。その後、イギリスに渡り六年間を過ごす。雑誌に短編を書いたのがきっかけで執筆を始め、長編や連載小説も手がけている。読書、旅行、編みものが趣味。現在はコネチカット州に夫と三人の子供と住む。

解説

 なんの感情もこもらぬ誓いのキス。私は、名ばかりのシンデレラ。

 婚礼衣装を着たアリスの胸は不安でいっぱいだった。マルディニアの王子リオとの政略結婚。偽りの花嫁となることを受け入れたのは、18歳の誕生パーティで出会った瞬間、リオに恋をしたから。――いつの日か、彼も私を愛してくれるかしら? だがアリスの夢想は、リオの言葉で瞬時に打ち砕かれる。「念を押すまでもないと思うが、これは便宜結婚にすぎない」祝福を受けるたび、見せかけの愛を示し続けるリオ。感情のこもらぬ冷たいキスを受け、アリスの心は凍えそうだった。そして二人は一度も結ばれることなく、カリブの島へと旅立つ……。

 ■恋い焦がれるプリンスの名ばかりの花嫁となったヒロイン。ハネムーン先の南国の太陽の下でなら、プリンスの氷の心をとかすことができるのでしょうか? ケイト・ヒューイットが描く、華やかなロイヤル・ロマンスをお楽しみください。

抄録

 木の台座にのった建物の中に入ると、高価な家具がいくつかあるだけだった。チーク材のたんすと、二脚の籐椅子、それに、柔らかなリネンのシーツがかかった特大のベッド。戸口には蚊帳がかかっている。いまはそれも結ばれて一面の海が見え、数メートル先まで波が寄せてきている。
 コンセントの差しこみ口はなく、コンピュータもテレビも電話もない。携帯電話もつながらない。誰もやってこない。
 いるのは二人だけ。
「僕はそのへんをひとまわりしてこよう」リオが言った。「君はゆっくりしたら?」
 二人きりになってもこんなものだ。アリスは荷ほどきにかかった。リゾートのスタッフがやると言ってくれたが、いまは誰もいないほうがありがたい。
 もっとも、一週間分の服を出すのに時間はかからなかった。そのあと、アリスは小屋の中を落ち着きなく歩きまわった。リオの帰りが待ち遠しく、その一方で戻ってほしくない気持ちもあった。彼は私と話をすることになんの興味もないのだろうか。
 リオがまだ戻らないので、アリスはひと泳ぎすることにした。少々恥じらいつつ、自分では選ばないような水着に着替える。それを言うなら、スーツケースの中にあったどの服も、ショーツやTシャツにいたるまで、見たこともないものばかりだ。
 この水着も自分の好みより肌が出ているが、どうせ二人きりだと肩をすくめ、海へ向かった。
 素足の下の砂はきめ細かく、爪先に寄せる波は透明で温かい。波打ち際にたたずみ、果てしない水平線を見渡すうち、これまでの緊張がいくらかほぐれ、肩の力も抜けてきた。
 リオが戻ったら、機内で彼が後まわしにした話をしよう。他人行儀なふるまいはしたくない。きちんとそう伝えるのだ。普通の夫婦らしくなれないなら、せめて友人でいたい。堅苦しく避け合うよりも、そのほうがまだ耐えられる。
 アリスは深呼吸をし、海に飛びこんだ。数メートル泳いで解放感にひたり、水中の静けさを楽しむ。
 水から顔を出し、髪を後ろに撫でつけたとき、アリスはぎょっとした。リオが浅瀬に立ち、ボードショーツだけの姿でこちらを見ている。
「いつ息継ぎをするのかと思ったよ」彼は強い日差しに目を細めながら言った。「君がこんなに泳ぎが上手とは知らなかった」
 アリスは足を底につけた。まだ浅い場所なので、水はウエストのあたりまでしか来ない。「お互い、知らないことはたくさんあるわ」
 ビキニ姿の体からしずくがしたたるのを、リオが眺めている。彼の瞳が熱をおび、離れていても熱さを感じた。それを意識してアリスの体もざわめき、燃え立つような期待に肌が張りつめた。
「ああ」リオがゆっくりと言った。「たしかに」
 アリスの鼓動が激しくなった。リオの瞳に欲望を見たのはこれが初めてだ。彼がこんなに飢えた目をするなんて。彼女は体の芯までぞくりとした。いままでになく野性的な生々しいまなざしに、驚きと恐れを感じた。そして、焦がれるような切望も。「あなたも泳ぎたい?」
「そうしようか」
 リオが水に入ってくる。アリスは息が止まりそうだった。彼の体はあまりにも美しい。筋肉はたくましく、研ぎ澄まされている。リオはきれいに飛びこみ、水を切って泳いできた。アリスの期待もいやおうなく高まった。彼が隣に来て足を底につけると、その腰に波が寄せ、胸からしずくが垂れた。
 肌のぬくもりが感じられるほど、彼は近くにいる。あの濡れた胸に手を、唇を押し当てたい。舌でしずくをとらえ、塩辛い肌を味わいたい……。
 アリスの喉元で脈が激しく打った。「きれいな場所ね」むなしく響く言葉だと自分でもわかっていた。どうふるまえばいいのか、何を言えばいいのかわからない。いまはただ、こらえきれないほどの欲望と、それにも増して、怖いくらいの希望があふれるばかりだ。彼が私を欲してくれるなら、もっと何かが生まれるかもしれない。生まれるに違いない。
 けれど、それ以上は何も考えられなかった。いま彼の瞳は欲望に燃え立ち、触れたがってでもいるように片手が上がる。アリスの息が浅くなった。彼は人前でしか触れたことがない。
「きれいだ」リオは低い声で認めた。そこで手を伸ばし、彼女の頬に触れた。いくら予期し、望んだことであれ、アリスは驚きに打たれて息をのんだ。
 リオが一本の指で優しく彼女の頬を撫でた。「君のことだよ」熱いまなざしと指の感触に魅了され、アリスはただ彼を見つめるばかりだった。彼の瞳にはいまも冷たい何かが、笑みには皮肉な何かが浮かんでいる。それでも、この男性を求めずにはいられない。「どうすればいいのかな」アリスの頬を撫で続けながら、彼が静かにつぶやいた。「嘘を真実に、見せかけを本物にするには?」
 アリスの胸はいまにも爆発しそうだった。彼の問いかけを聞くだけで、途方もない希望が湧いてくる。「わからないけれど、そうしたいわ」彼女はささやいた。心臓が苦しいほどに胸をたたいている。「これを本物にしたい」
 リオの唇がゆがみ、苦しげな笑みになった。彼は顔を寄せ、息が吹きかかるほど唇を近づけた。「いまでも充分本物だ」つぶやき、キスをした。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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