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クリスマスの幸せ星

クリスマスの幸せ星


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★★2
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解説

 クリスマスの星は、きっと幸せの星なんだ――
 読み応え120%の心に染みいる物語は、C・ケリーの真髄。

 1812年――ローラ・オルティスの人生は18歳にして突如、天国から地獄に変わった。名高い会計士だったはずの父親が横領と町の人々への詐欺の罪で捕まったのだ。彼女に対する世間の態度は一変。屋敷も家財道具も奪われたローラに優しい声をかける者はなく、彼女は自身の下着までもが売られる悪夢に打ちひしがれながら、辛辣な蔑みに耐えるほかなかった。そんなローラに手を差し伸べたのは英国軍医トーマス。長身で気高き名医は、すべてを失ったローラを救うため結婚を申し込み……。3世代に渡り、ある一族の奇跡を描いた珠玉作。

 ■ロマンス界で最高権威とも言われるRITA賞を2度受賞し、数いる作家の中でも「もはや別格の存在!」と評されるカーラ・ケリー。そんな彼女の、心の奥底にまで沁みこむクリスマスストーリーをお届けします。本作は、3世代に渡ってある一族を描いた物語。1812年を舞台にした「英国軍医のウエディング」で幕を開けます。王室会計士の父親が詐欺を働いたため、尊敬されていた立場から、一気に街の嫌われ者になってしまったローラ。打ちひしがれるローラを見かねた英国人医師トーマスは“結婚”という形で彼女を救おうとし……。さすが史実に詳しいカーラ・ケリーだけあり、本作には実在した歴史上の人物も出てきますので、そんなところにも要ご注目。訳者のさとうさんも「ほろりと来た」と語るようにひしひしと胸を打ちながらも、随所にユーモアが垣間見える、オススメの1作です。クリスマス独特の神聖な空気感を、どうぞ読みながら肌で感じてみてください。

抄録

 何度か息をのみながらも、ローラは長いこと押し黙っていたが、ようやく小声で言った。「こんなに親切にしてもらえるとは思ってもいませんでした、セニョール」
「私はそのつもりだったよ。あと、セニョールじゃなくてトーマスと呼んでほしい」
 ローラは頬を染めた。「そんな呼び方はできません」息をのみながらつけ加える。「まだ」
 今はまだ、ということだろうか? 朝食のトレイの蓋を取りながらトーマスは自問した。実のところ、事は期待以上にうまく進んでいる。“計画”と呼べるかどうかさえわからないほどささやかなこの計画は、今朝眠りにつく前にひねり出したものだ。
 トーマスがボウルを二つ並べると、ローラは迷わず台所用品をおさめてある飾り戸棚のほうへ歩いていった。思わず頬を緩めずにはいられない。なんて女性らしいんだろう。ローラはちっぽけな所帯のどこに何があるか、すでに全部把握しているらしい。
 ローラが祈りの言葉をつぶやき、十字を切るあいだ、トーマスは頭を垂れていた。それから慣れた手つきで、ローラはコーンミールの粥をよそい、トーマスの前へ置き、続いて自分のためによそった。
 食事中も二人ははにかんで押し黙ったままだった。ローラは目をあげてトーマスを見ることさえできない様子だ。トーマスはといえば、妻の長いまつげや、美しいスプーンの使い方にまたしても感心しきりだった。まさに上品さの化身と言っていい。
 だがそんな彼女に、トーマスは汚れ仕事をさせようともくろんでいた。これも計画の一環だ。
「ローラ、私の同僚の薬剤師は二、三日前に出港してしまった」
 ローラは興味深そうにトーマスのほうを見た。きっと“同僚の薬剤師”という言葉を、きちんとスペイン語で言えなかったに違いない。
「私が手術をしたり、病棟の患者の面倒を見たりするときに手伝ってくれる男のことだ。つまり、私には今手伝ってくれる人がいない」
 ローラはうなずくと、またトーマスのほうを見た。瞳に知的な好奇心が感じられる。
「きみはすでに私やイラリオ神父を手伝い、集落の貧しい家族たちを助けてくれている」何口か食べたあと、トーマスは話を続けた。気をきかせ、トルティーヤの小皿を手渡してくれたローラにうなずき、感謝の意を伝える。
 それからトーマスはテーブルに肘をついた。以前のように、こちらの行儀の悪さに思わず眉をひそめるローラを見れば大笑いできるだろうと考えたのだ。だが実際は、思ったほど笑えなかった。
「そこで、きみに私の助手になってほしいんだ。駐屯地や集落の巡回に同行してほしい。一緒に病人の世話をしよう」
 ローラはさっと青ざめ、絶望的なまなざしでトーマスを見た。
「できません……彼らが許してくれるはずがありません。だって、私……」濃い茶色の瞳に涙を浮かべながら言葉を切る。「ああ、セニョール、私はやっぱり父とここを去るべきだったんです。ここの人たちは私のことを、ひどく憎んでいるんですもの」
 トーマスはナプキンの隅を持ちあげ、ローラの涙をそっと拭き取った。だが内心では、ローラをうわまわるほどの苦悩を感じていた。
「そんなふうに決めつけてはいけないよ」
 ローラが思わず立ちあがった。「あなたにはわからないでしょうね、セニョール。でも、私はあの人たちをよく知っているんです」泣きじゃくりながら言葉を継ぐ。「あの人たちは、あなたのことまで憎むようになるに決まっています!」
 真剣な様子に胸を打たれ、トーマスはローラが寝室へ引っこんでしまわないよう、彼女の手を取って引き寄せた。もちろん力ずくではない。
「私も彼らのことを知っているよ、ローラ。きっと彼らは、私たちがお似合いのカップルだと思うようになるだろう」ローラが突然不思議そうな顔つきになった。きっとスペイン語でうまく伝えられていないのだろう。「一台の荷馬車を引く二頭の馬みたいに。ベーコンと卵みたいに」そう立て続けにスペイン語で言ったあと、ぽつりと英語でつけ加えた。「紅茶とトーストみたいに」
 かぶりを振ったが、ローラはもはやトーマスの腕から逃れようとはしなかった。腕を放してもじっと立ったままだ。トーマスにはわかっていた。選択肢は二つだけ。ローラがこのまま寝室へ引きこもってしまうか、こちらの話を最後まで聞こうとするか。ローラの好奇心を頼りにするほかない。夫に対する愛情に訴えたいところだが、あいにく自信がなかった。
「話を聞いてほしいんだ、ローラ。すべて私にまかせてくれ。きみをサンディエゴになくてはならない存在にしてあげよう」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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