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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ディザイア

癒されぬ傷

癒されぬ傷


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイア
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 メッツィ・ヒングル(METSY HINGLE)
 ウォールデンブックスのベストセラーリストに登場し、アメリカロマンス作家協会のゴールデンハート賞やロマンティックタイムズ誌の、日本で言う“ベストヒーロー賞”を受賞。結婚二十年以上の、四人の子を持つ多忙な母でもある。執筆に専念するため、ビジネススーツを売り、広報の仕事と慌ただしいホテル暮らしをやめた。愛とロマンスの力、そしてハッピーエンドを信じ、それらを作品の中に表現し続けている。

解説

 お堅い牧師の娘が恋をし、捨てられた。その身に残ったのは心の傷だけではなかった。

 ■ひと夏を親密に過ごした相手に裏切られたレイチェルは、看護婦として働く傍ら、そのとき宿した子を一人で育てていた。あるとき、職場の病院にたたずむ背の高い男性に目を奪われた。それは、あの夏の日、“ぼくの人生にきみは必要ない”という言葉を残して町を去っていった、マックだった。彼に傷つけられ、やるせない思いに苦しんできたのに、いざ再びそのハンサムな顔を目の前にすると、レイチェルの胸は痛みと同時に高鳴りを覚えた。そんな心の動揺を見透かすかのように、マックが甘く優しい言葉を投げかけ、彼女の心をさらに掻き乱した。どうせ体が目当てに決まっているわ。これ以上近づかないで! 二度と傷つきたくない彼女の心が、警鐘を鳴らした。だがその音は、彼の耳には届かない……。

抄録

 帰ってきたんだわ!
 海軍の白い制服を着た背の高い黒髪の男性がナースステーションの前に立っている。高鳴る胸に息もできず、レイチェル・グラントは病室の前で立ち尽くした。軍服の広い肩から目を上げると、短めに刈り込んだ黒髪の先が首筋に波打っている。
 やっぱりそうよ、マックだわ!
 いいえ、そんなはずないわ。レイチェルは懸命に動悸を抑えた。ピート“マック”マッケンナ少佐は今ごろ、どこか聞いたこともないような名前の国で、海軍特殊部隊の過酷な任務についているはずだ。もし仮にアメリカに戻ってきたとしても、このニューオーリンズに帰ってくるはずがない。だってそうでしょう? あの人は二年前、わたしと結婚するつもりはないとはっきり告げたのだから。自分がいかに愚かだったかを思い出し、鋭い痛みがレイチェルを襲った。二年以上たった今でも、彼に夢中で何も見えなくなっていたあのころに胸がうずく。かろうじて残ったプライドのおかげで、捨てないでとすがりつくような惨めな真似だけはせずにすんだのだ。
 エレベーターの到着を知らせる音にレイチェルははっと我に返り、過去の記憶を振り払った。マックがここにいるはずがないでしょう。何を考えているの。軍服と黒髪のせいでそう見えただけよ。アレックスが最近結婚を匂わせてきて、気持ちが揺れているせいもあるわ。結婚といえば、いやでもマックのことを思い出してしまう。そう、かつてはマックのプロポーズを待ち焦がれていたこともあったから。
 レイチェルはこぶしで胸を押さえ、顔をしかめた。もう二年以上も前のことなのに、昔の失恋にいまだに胸を痛める自分が情けない。もっと大事な仕事があるでしょう――今日胆のうの手術を受けるゴールドブラムさんにも大丈夫よと声をかけてあげなくちゃ。レイチェルは病室のドアから患者のカルテとクリップボードを取ると、医師のメモに目を通し始めた。
「ここで働いている看護婦を捜してるんです――レイチェル・グラントを。ここへ来れば居場所がわかると言われたもので」
 そのよく響く低い声を耳にして、レイチェルは息が止まりそうになった。激しく高鳴る胸であの軍服の男性の方を振り返る。まさか、マックが! うそよ、今ごろになって。
「この時間は病室を回っていると思いますけど。どうしましょうか?」
「そうか、やっぱりまだここで働いているんだ」
 ああ、間違いない。マックだわ!
 あまりのショックに思わず声が出てしまったのか、それともあのころと同じように驚くほどの勘の鋭さで彼女の存在を感じ取ったのか、男性はくるりと振り向き、立ちすくんでいるレイチェルを見た。
「レイチェル!」
 彼を見た瞬間、レイチェルの顔からさっと血の気が引いた。別れたあともずっと脳裏から離れなかったあの顔。身動きもできず、ただ立ち尽くして見つめる。マックは昔のままだ。頑固そうなあご、鋭い頬骨の線。ほほ笑みかけられるといつも体がうずいた、官能的な唇。あのころと同じようにほほ笑みながら、マックがこちらに近づいてくる。
「レイチェル、本当にきみに会えるなんて」マックはまるで獲物を見る虎のような目で彼女の全身を眺め回した。そのブルーの瞳に金縛りになっていたレイチェルは、気づくとすでに彼の腕の中にいた。「ああ……また会えて本当にうれしいよ。とても……元気そうだね」
「あ……あなたも」動揺のあまり間抜けな返事をするレイチェルに、マックがいきなり唇を重ねてきた。温かく優しく、むさぼるような唇。懐かしい唇。
 その味と匂い、押しつけられた体の感触が、はるか昔に涙と傷心の海に深く沈めたレイチェルの一部、心の奥にぽっかりと空いた穴に入り込んでくる。クリップボードが床に落ちる音が雷のように響いた。彼女ははっと唇を離し、一歩、また一歩とあとずさった。
「カルテが」そうつぶやき、ぼうっとしたまましゃがみ込むと、彼女は散乱したカルテやフォルダーを震える指で拾い集め、動揺を鎮めようと努めた。
「ぼくが拾おう」にっこり笑ってみせるマックに、レイチェルの心はますます乱れた。
 マックが隣にしゃがみ込んでフォルダーから落ちた書類を拾い集め始めると、レイチェルは立ち上がった。病院内のざわめきでやっと頭がはっきりしてきた。ナースステーションの方に目をやった彼女は思わずうめき声をあげそうになった。興味津々の視線がこちらに注がれている。
「はい、どうぞ」マックが書類を手渡した。
 レイチェルは書類を受け取るとあわててフォルダーに押し込み、カルテと一緒に胸に抱きしめた。「ありがとう」なんて他人行儀な返事かしら――つい今しがたキスしたばかりの相手に。
「どういたしまして」レイチェルの動揺を感じ取ったのか、マックの唇に浮かんでいた笑みが消えた。「うそじゃない、レイチェル。きみに会えて本当にうれしいんだよ。それに、きみはぼくの記憶の中よりもずっときれいだ」
「ミズ・グラントに会えたようですね」ナースステーションの受付係の若い看護助手がマックに言った。
 マックは彼女に百万ワットの笑顔を向けた。「ああ、どうもありがとう」
 彼女がぱっと顔を輝かせた。「どういたしまして」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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