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リラの結婚の条件 ギリシアの恋人 III

リラの結婚の条件 ギリシアの恋人 III


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイアギリシアの恋人
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 フィオナ・ブランド(Fiona Brand)
 ロマンス小説を書くことを除けば、自分の人生はごくありふれた平凡なものだと彼女は言う。作家としてデビューする前は、八年間ニュージーランド林野局に勤務していた。現在は二人の息子とともに、亜熱帯にある釣りやダイビングの楽園、ベイ・オブ・アイランズに暮らす。

解説

 彼は理想の夫とは正反対。
 なのに、なぜこんなに惹かれてしまうの?

 シングルマザーだった母の苦労を身近で見てきたリラの望みは、自分を大事にしてくれる夫と、長く続く幸せな結婚生活を送ること。しかしリラには忘れられない人がいた。2年前に出会い心奪われたゼイン。セクシーな彼は有名なプレイボーイで、理想の夫とはかけ離れている。けれどあのとき、情熱を交わす一歩手前で彼の秘書が現れなければ、母と同じ道をたどっていたかもしれない。もうゼインのことは忘れるのよ。そう誓った矢先、リラはゼインの兄の恋愛スキャンダルに巻き込まれてしまう。マスコミに追われるリラを、フラッシュと質問の嵐から助け出したのはゼインだった。「リラ、ぼくと来るんだ」そしてリラが連れていかれた先は、なんと彼のスイートルームで……?!

 ■〈ギリシアの恋人〉3話目は、前作のヒロインの部下リラと、ヒーローの弟ゼインの恋を描きます。慎み深かったリラは、ゼインに恋をしたことで、大胆に変身して……。4話目には、ゼインの元秘書ジェマがヒロインとして登場します。お楽しみに!

抄録

 リラはサングラスを直して気を引き締め、タクシーから午前中の熱いシドニーの街へ降り立った。記者会見が開かれるホテルの立派なドアへ二歩近づいたところで、フラッシュと質問の嵐に巻きこまれた。
 困惑に頬を紅潮させ、スーツに合わせたアイボリーのハンドバッグを握り締めて前へ突き進む。誰かが上着の袖を引っぱった。フラッシュで目がくらむ。一瞬の後、腕をつかんでいた手も記者も魔法のように消え、代わりに制服を着た護衛のたくましい背中が現れた。記者の集団は離れ、ゼインの黒い目が混乱の中で妙に落ち着いたまなざしを向けた。彼の前では冷静さを保ち、あのキスは忘れようと決心したにもかかわらず、熱い興奮が背筋を駆け下りる。
「リラ、ぼくと来るんだ」
 一瞬“ぼくのところへ来るんだ”と言われた気がして立ちすくんだ。
 アトレウス家の男には二度苦い経験をさせられている。一難去ってまた一難になるような妄想をふくらませている場合ではない。
 記者が押し寄せ背中に誰かの肘が当たった。ゼインが差しのべた手をつかんだが、その手はすぐに放され彼の脇に抱き寄せられた。体温が伝わってくる。
 足早に進むと前方にガラスのドアが見えた。フラッシュが光る。「もう、またスキャンダルだわ」
 ゼインがにやりと笑った。「アトレウス家の男と遊ぶとこうなるんだ」
 ドアが開いた。中には物見高いホテルの客や従業員に加えて、より多くのマスコミがいた。リラは穏やかな表情を保とうとしたが、異様に頬が紅潮するのを感じた。「遊んでなんかいないわ」
「メディノスへ行ったのはたいした初デートだよ」
 ゼインが助けに来てくれた興奮は消えていく。「楽しい経験ではなかったわ」
 初デートとしては大失敗だった。
 ゼインに導かれてエレベーターに乗りこむ。背中に置かれた手のぬくもりから全身に衝撃波が走る。大柄なメディノス人の護衛が二人乗りこんできて両側に立った。三人目のがっしりした坊主頭の確かスピロスという男がドアの前に陣取りボタンを押した。
 ゼインのそばにいる動揺はエレベーターとともに上昇した。「シドニーへは美術品の慈善オークションのために来たんでしょう?」
「アンブロウジ社の買収にも携わっているんだ。だからきみの世話をするようルーカスに頼まれた」
 ゼインが助けに来てくれたという強い興奮の最後の名残が消え失せた。「昨夜のこと、ルーカスから聞いているんでしょう?」
「カーラとペントハウスにいるところをきみに見られたと言っていた」
 くだらない三角関係に巻きこまれているような言われ方に頬がますます赤くなる。「部屋まで行ったわけじゃないのよ。セキュリティーが――」
「説明しなくていい」
 リラは目を細めた。朝刊を見てから今まで、なんとか保ってきた落ち着きが崩壊した。「メディノスから戻って以来、ルーカスと連絡が取れなくて、待つのにうんざりしたの。辞表を出しに行ったのよ」
 ドアが開いた。ロビーを見てアドレナリンが出る。路上にいた鋭い目つきのパパラッチとは違うが記者が大勢いる。雑誌の編集者、まじめなタブロイド紙やテレビニュースの取材班など、知った顔も見える。
 大きく息を吸い、エレベーターを降りる。
 ゼインに手首をつかまれた。「今逃げたら、もっとひどいことを書かれるぞ」
「“捨てられたアトレウス家の愛人、路上に置き去り”よりひどい書かれ方があるかしら?」
 ゼインの表情は険しい。「きみだって、ルーカスは高嶺の花だとわかっていたんだろう」
 心の中で何かが切れた。「ルーカスに会わなければよかったと今さら言っても手遅れよね?」
 その瞬間解放感を覚えた。ルーカスと気持ちが通じ合ったことはない。結婚したら失敗だっただろう。
 ゼインと目が合い、胸が高鳴る。「そんなにマスコミが心配かい?」
 リラは目をしばたたいた。ゼインの熱い視線に魅了される。「テレビは持っていないし、新聞も今朝断ったの。マスコミ対応は得意じゃないわ」
「そうかい?」
 ゼインの顎が額に触れた。予期せぬ接触に興奮が駆け抜ける。両手で顔を挟まれ、ゼインはキスするつもりなのだとわかった。護衛やマスコミやホテルの従業員が大勢いる騒ぎの中で時の流れが遅くなり、止まったように思える。二年前の静かな控室と十一日前のメディノス行きの飛行機を思い出す。
 浅く息を吸いこんだ。一歩下がって落ち着いて、ゼインのそばでいつも感じる狂おしい誘引力を無視する必要がある。コンスタンティンとルーカスは熱いナイフでバターを切るように見事に美女をものにしたが、ゼインの評判はかなりひどい。
 彼の息が唇にかかる。目を閉じるとうっとりするほど柔らかく温かい唇が触れた。その小さな一点から熱い衝撃の波が全身に広がる。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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