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公爵の花嫁

公爵の花嫁


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:200pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★☆☆☆1
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著者プロフィール

 メリッサ・ジェイムズ(MELISSA JAMES)
 三人の子供の母親で、毎朝夫と一緒に地元の海岸でウォーキングと水泳をするスポーツウーマン。看護師、ウエイトレス、チョコレート販売員などさまざまな職業を経て、ロマンス小説家となる。映画『ダンシング・ヒーロー』に出てきた“恐れを抱いて生きる人間は、人生を半分しか楽しめない”という名言を心に留め、人生を楽しんでいる。オーストラリアのニューサウスウェールズ州在住。

解説

 シドニーで働くマリはヨーロッパのヘレニア王国に来ていた。ヘレニア王国の末裔であることが判明したいとこが、壮麗な宮殿で結婚式を挙げたのだ。ところが、披露宴でマリは某国の俗悪な皇太子に言い寄られる。窮地に陥った彼女はライサンダーという男に助けられるが……。

抄録

 サンダーの眉根のしわが深くなった。だが、決して恐ろしい顔ではなかった。「兄は昔から教会を、さまざまな儀式や聖歌を愛していた」その顔に笑みが浮かんだ。「ぼくはただ眠いだけだったがね」
 マリも楽しげな笑みを彼に向けた。「やっとわたしたちの共通点が見つかったわ。うちの両親なんて、ヘレニア語のむにゃむにゃを始めるとたちまち寝てしまうわたしを異教徒呼ばわりしていたわ」
 サンダーはぱっと顔に生気をよみがえらせ、大声で笑いだした。「むにゃむにゃか。まさにそれだ。ぼくも数秒であくびが出るよ」
 マリは彼の笑い顔を、たしなみも忘れてまじまじと見つめた。もっと近づきたい、あの生き生きした顔に、温かい肌に触れたい。こんな気持ちの十分の一でも、サンダーは感じてくれているだろうか。これほど早く男性に心奪われたのは初めてのことだ。
「きみのご両親は、今もきみに失望している?」さっきより親しみを込めてサンダーが尋ねた。
 マリはため息をついてうなずいた。「両親はチャーリーの例を見ているから、ミハイルもわたしと結婚するつもりだと思っているの。うちの娘だって王妃さまになれるわ、と」サンダーと目を合わせた瞬間、マリは後悔した。笑みと同情の混じったその目に心が揺れる。「せっかく王家の一員になれるチャンスを本人がみすみす壊しているように見えるのね。わが娘は王妃にふさわしいと思っているのよ」
 サンダーの視線が和らいだ。「ご両親の思いはもっともだよ。誰だってわが子の幸せを願うものだ。まして、いとこが王家に入ったとなると、夢に手が届くかもと期待して当然だ。その上きみは美しいし、チャーリーたちと同じく道徳心も強い。チャーリーたちが来てくれたことで、この国に新鮮な風が入ったしね」
「でもわたし、ミハイルは嫌いなの」マリはぴしゃりと返した。「利己的で傲慢な人だし、いくら皇太子でもまったく魅力を感じないわ」
「彼の富や特権には惹かれない、と?」マリの怒りにはお構いなく、むしろ好奇心にかられた様子でサンダーが尋ねた。
 マリは肩をすくめた。「この一年間で学んだの、富や権力などより大切なものがあると。愛情や家族、自尊心がなければ、いくら裕福でも無意味だわ」
 彼はマリの顔を見つめたまま、わずかに近づいて足を止め、静かに言った。「きみは美しいだけじゃなく、実に聡明だな、マリエラ・ミツィアロス」
 マリは頬を染めて顔をそむけた。「人生の根本的な真実よ。知っていても聡明でもなんでもないわ」
 サンダーの美しい目にいぶかるような影がさした。「きみは自分にあまり自信がないのかい?」
 すぐそばに立つサンダーの存在とその笑顔に気を取られ、マリは彼の問いかけに困惑した。「それはそうよ。わたしは普通の女だわ。有名だとすれば、いとこが突然国王と王女になったことぐらいだし」
 サンダーはくすっと笑った。「突然国王か。きみの言葉選びはなかなかおもしろいな、マリ」
 愛称で呼ばれ、マリの全身に小さな震えが走った。親しげで、危険な響き……。
 そんな心の動きを見透かしたように、サンダーはまた一歩マリに近づいた。その目にはむき出しの欲望が燃えている。「船長からきみにきいておいてくれと頼まれたんだ。有名な美しい港町サントリーニに寄港するか、もっとひなびた島に行くか。あちこちヨットを走らせて泳ぐポイントを探しながらパトモスを目指してもいいし」サンダーの目がまたきらりと光った。「たぶん船長のお気に入りなんだろうな。パトモスは彼の生まれ故郷だから」
 彼は運転手じゃない。結婚もしていない。頭に浮かぶそんなばかな考えに、マリは思わずどきりとした。「そう、それに、きっと聖書の愛読者じゃないかしら」彼女はかすれ声で言った。「パトモスって、たしか聖書の一部が執筆された場所でしょう?」
 サンダーは驚きに眉を上げた。「聖ヨハネが流刑にされた島らしい。聖書の歴史に興味があるなら、ガイドツアーもあるよ。さあ、今日はどうする? このヨットはどこでもきみの希望どおりに行くよ」
 マリはねだるような目でサンダーを見た。「いかにも観光客っぽいけど、わたし、サントリーニはどうしても行きたいの。あそこが本物のアトランティスだという説もあるんでしょう?」
 サンダーがほほえんだ。「よし。じゃ、サントリーニだ。ぼくも同行していいかな?」
 マリの目がさらに輝いた。「ええ、ぜひ。一人だと迷子になるかもしれないし、買い物の値切り方も知らないし」そして何よりも、彼のそばにいたいのだ。爵位が魅力なのではない。運転手だと思ったままでも、きっと同じように惹かれていただろう。彼の正体を知った今でさえ、彼と距離をおくこともできそうにない……。
 たった一日のうちに、こんなに夢中になるなんて。
 マリの心中の葛藤に気づいたかのように、サンダーが真顔になった。「きみなら何を買うにしても、にっこりほほえめばなんでもまけてもらえるさ」
 マリははっと息をのんだ。ゴーカートに乗って急な坂道を下りるように、思いきって飛び込むしかない。もうゴーカートは走りだしているのだ。
「じゃ、船長に指示してくるよ」サンダーはそう言うと、何かに追われるように歩きだした。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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