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うわべだけの結婚

うわべだけの結婚


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャロル・マリネッリ(Carol Marinelli)
 イギリスで看護教育を受け、その後救急外来に長年勤務する。バックパックを背負っての旅行中に芽生えたロマンスを経て結婚し、オーストラリアに移り住む。現在も三人の子供とともに住むオーストラリアは彼女にとって第二の故郷になっているという。

解説

 妹夫婦が事故で死んだ事実を受け入れられないまま、キャサリンはひとり、病院の待合室にたたずんでいた。そのとき、リコ・マンチーニが現れ、彼女は動揺した。リコに会うのは、妹夫婦の結婚式以来だ。あの日、妹の夫の兄であるリコに熱いまなざしで見つめられ、男性に慣れていないキャサリンは舞い上がってしまった。だがその数時間後、リコは態度を一変し、彼女をはねつけたのだ。リコは赤の他人に接するかのように、妹夫婦とその遺児リリーについて説明するようキャサリンに求めた。そしてさらに、信じがたい提案を持ちかけた。

抄録

 こぼれそうな涙を、キャサリンは目を固く閉じて押し返し、深々と息を吸った。目を開けたとき、リコはまだそこに座っていた。彼の目からはもうあざけりの色が消え、どこまでも忍耐強そうに見えた。
「大切な人を失ったんだ、キャサリン。泣くのは恥ずかしいことじゃないよ」
「でも、意味もないわ」キャサリンは無気力に肩をすくめた。「泣いても何も変わらないことを八年前に学んだの」
「そうかな。何も感じないより、苦しみを感じるほうがいいときもあるよ」
 自分がそうできることを、キャサリンはこれまでに願った何よりも望んだ。けれど沈黙が長引き、彼女の涙が抑えられたとき、口を開いたのはリコだった。彼は雰囲気の重苦しさを短い言葉で要約した。
「マルコが恋しくなるだろうな。二度と帰らないのだと思うとつらい」彼の手はまだキャサリンの顔にあった。彼女は向き直って温かい手のひらに頬を寄せた。「マルコはこの国で生まれた。僕は彼の世話をしたものだ」リコは優しくほほえんだ。「僕が受けた苦しみを、弟に受けさせたくなかった」キャサリンが目で問いかけると、リコの微笑はわずかに広がった。「僕は小学校に入ったとき、英語を話せなかった。悪臭のするランチを持ったシチリアの少年だった。サラミと四十度の気温はいい組み合わせではない。あのころのマルコは僕を尊敬していて、何かあるとすぐ僕のところに来た」声には物思いに沈む様子があった。リコはつばをのんでから続けた。「道を踏みはずす前に、僕にアドバイスを求めに来てくれたらよかったのに。でもあいつが過ちを犯したのを知っていても、僕は弟を愛していた。彼はいつも悪かったわけじゃない」
「ジェイニーもよ」キャサリンはリコの肩がこわばるのを見た。否定する言葉が舌の先まで出ているのは疑いない。だがリコはうなずいて、彼女に妹を好きな形で思い出させた。
 そばに座るリコの姿はもう威圧的ではなく、不思議にキャサリンに慰めを与えた。ランプの光は彼の胴に暗い影を描き、広い肩を際立たせる。筋肉質の体のたくましさは自信を物語っていた。うっすら伸びたひげが顎を陰らせている。しかし陰鬱《いんうつ》な目にきらめく涙の一滴一滴には誠実さがあった。その目はもうあざけってもいず、疑念で曇ってもいなかった。ただ果てしない理解と黙認があった。
「私たちが小さかったころのことを考えていたの。一緒にどんな遊びをしたか、妹がどうやって私を笑わせたか。彼女はいつもいたずらっ子だった……」嗚咽が込み上げた。「もういないなんて、信じられない」
 リコはキャサリンを抱き上げて腕に包んだ。「胸の内を吐き出して。今は我慢するときじゃないよ」
 どんなにそうしたいことか。こぼれそうな涙にどれほど屈したいことか。リコの優しさを垣間見たキャサリンは、一緒に過ごした最初の夜を思い出した。何よりも感情が勝ったあの夜を。キャサリンはリコに感謝した。部屋に来てくれたことに。彼女を腕に抱いて自分も苦しんでいるのを話してくれたことに。冷たい外見で隠していても、時には傷つき、引き裂かれる心臓が鼓動しているのを見せてくれたことに。
 でも私はそこまでできない。自分をおぼれさせる恐れのある涙に負けることはできない。そこでキャサリンは彼を抱き締めた。悲しみにはモラルを一時的に棚上げさせるものがある。寂しさにはあらゆるルールを破らせるところがある。今夜は一人でいたくない。彼もそう感じていることを知っている。明かりを消して、数分前にいた絶望の中に投げ戻されたくない。リコが彼女を抱き締めて、愛撫するにつれ、キャサリンはテンポが変わったことを意識した。彼の愛撫はもう慰めを与えるのではなく、切迫していた。彼女の指の下で、彼の体はもうそれほど安全なものではなかった。彼女の皮膚に触れる彼の皮膚や、頬をたどる唇はぞくぞくする感触を伝える。今夜の苦しみに一人で直面するより、彼のキスにおぼれるほうがはるかにたやすい。むごい現実を直視するより彼の愛撫に逃避するほうがずっと容易だ……。
 あとで自分のおろかさを後悔しようとも、今は何もかも忘れていたい。リコだけが与えられる無上の喜びが欲しい。彼の舌が彼女の唇に滑り込み、彼の手が糊のきいたシャツの上から胸を押さえたとき、キャサリンはリコもそれを求めているのを悟った。
 キャサリンは脚を彼の腰に巻きつけた。リコはもどかしげに自分の衣服を脱ぎ去った。彼がシャツを脱がせるのに腕を上げて協力しながら、キャサリンはみぞおちに熱い唇を感じた。それからリコは彼女を静かに押し倒して、両脚を分けた。
 リコが前にひざまずくのを、キャサリンはうっとりと見つめた。彼の欲望の証《あかし》を見ると、不安と興奮と期待が込み上げた。リコは彼女の腰を少し持ち上げて自分のほうに導いた。甘美な苦痛に貫かれた瞬間、キャサリンは叫び声をあげた。
 リコが動くにつれ、熱い息が彼女の肩をなでた。
 キャサリンは自分のあえぎが高まり、彼が自分の中で大きくなるのを感じた。彼の呼吸が不安定になって、低いうめきがもれたとき、絶頂が二人を強い絆《きずな》で結びつけた。自分の名を呼ぶリコの声を、キャサリンは遠くに聞いた。彼女もリコの名を呼び、暗闇の中で彼を捜した。二人ともが心の安息所を見つけた瞬間、キャサリンはリコが自分を必要としていることを知った。この解放はすばらしいと同時になくてはならないものだったことを悟った。
 リコが明かりを消したとき、キャサリンはもう暗闇を恐れなかった。リコがそばにいれば、どんな陰鬱な空想も彼女を傷つけることはできないのだから。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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