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誤解に満ちた出会い

誤解に満ちた出会い


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 リンゼイ・アームストロング(Lindsay Armstrong)
 南アフリカ生まれ。現在はニュージーランド生まれの夫と五人の子供たちとともに、オーストラリアで暮らす。オーストラリアのほとんどの州に住んだことがあり、農場経営や馬の調教など、普通では経験できない職業を経てきた。彼女の作品にはその体験が大いに生かされている。

解説

 悪路に車を走らせていたジョアンは、急ブレーキをかけた。行く手に男が立ちはだかったのだ。男はいきなり運転席のドアを開け、彼女を手荒に車から降ろすと、武器を隠しているはずだと身体検査を始めた。あげくに、おまえは連中の情婦だろうとののしった。でも、乱暴な言葉遣いのわりには良家の出身者特有のアクセントがあるし、着ているものも上等だ。ジョアンは人違いだと必死に訴えた。「寝返るべきだな。ぼくの情婦になるほうがずっと有利だ」男は耳を貸そうともせずに言った。

抄録

「ねえ、ちょっと、こんなの正気の沙汰《さた》じゃ――」
「名前は?」男はうなり声をあげ、彼女を車のボンネットに押しつけた。
「ジョ……ジョアンよ。で、でもジョーと呼ばれることもあるわ」
「思ったとおりだ。もっとも、ジョーというのは男だと思っていたが。どうやら連中はきみにぼくを誘惑させて、追いつくまで時間稼ぎができると考えたようだな」男はジョアンの全身にすばやく視線を走らせた。あざやかな青い目にちらっと皮肉っぽい光がきらめく。「とはいえ、きみは大して女らしくも見えないが」
 ジョアンは気色ばみ、ブーツのかかとで相手の爪先を力いっぱい踏みつけた。
 男はひるむ様子もない。「爪先が鋼で覆われているんだ。さては、女らしくないと言われて、かっとなったのか」
 ジョアンは重いため息をついたが、心の片隅ではそれを認めていた。このばかげた状況と同じくらいどうかしているとは思うけれど、かちんときたのはたしかだ。しわくちゃのカーゴパンツに分厚いアノラックを着て、髪をすっぽり覆うつばなし帽をかぶっていれば、どんな女性だって女らしく見えるはずがない。この頭のおかしい男にそう言ってやりたいのを、ジョアンはぐっとこらえた。もっとも、長身といかり肩が女らしくないと思う男性もいるけれど……。
「ねえ、あなたが誰だろうと」ジョアンはきりだした。「わたしは牧場のお屋敷に行くことになっているのよ。だから――」
「そうだろうとも」男はいらだたしげにさえぎった。「しかし、ぼくたちが向かう先は別だ。まずは、きみが何を隠しているか調べなければ」彼は警官が身体検査をするように、ジョアンの体を上からぽんぽんとたたいていった。
「隠している?」ジョアンは怒りのにじんだ声で言い、彼の手をかわそうとした。「さわるのをやめてくれない?わたしは何も隠してないわ」
「だったら、それを脱ぐんだ」両手がウエストに達すると男は命じた。
 ジョアンはぽかんと口を開けた。「脱ぐって、何を?」
「はいているものを」
「断じてその気はないわ。あなた、頭がおかしいんじゃないの?」
「わかった!後ろを向いてボンネットに両手をつけ。ヒップホルスターか、レッグホルスターか、女が武器を隠し持っていそうな場所を調べてやる」
 暮れなずむ夕空のもと、ジョアンは謎《なぞ》の男を凝視した。わたしの頭がおかしくなったのか、それとも悪夢を見ているのだろうか?
 男は長身のジョアンよりもさらに背が高く、がっしりした肩をしていた。紺色のセーターとかぎ裂きのできた汚れたジーンズに包まれた体は、見るからに引きしまっている。豊かな黒髪はくしゃくしゃに乱れ、顎は黒い不精髭《ひげ》で覆われている。そして怒りのにじんだ青い目が、軽率に扱ってはいけない相手だとはっきり物語っていた。
 でもなぜ。どうしてこんなことに。奥地にひそむ山賊?まさかそんな!
「決心しろ」男が命じた。「悠長に構えてはいられないんだ」
 ジョアンは震える手でアノラックのファスナーを下げ、カーゴパンツを下ろしはじめた。怒りがこみあげてくる。アノラックを乱暴に脱ぐと、ボンネットの上にほうった。それからブーツをもぎとり、カーゴパンツから両足を抜く。「見るのはいいけど、指一本触れないで」灰色の目に怒りをたぎらせ、ジョアンは吐き捨てるように言った。
 男は顔をしかめ、眉をつりあげた。「これはこれは!」体にぴったりした青いセーターから、水色のショーツ、長い脚へと視線をさまよわせる。「性急な判断はすべきじゃなかったな」ジョアンの目を見つめ返し、愉快そうに言う。「状況が違っていたら、きみはぼくを自在に誘惑できただろうに。後ろ向きになって」
 ジョアンは今やはらわたが煮えくり返っていたが、それよりも警戒心がまさった。後ろ向きになり、両腕を肩の高さまで上げる。「これで納得した?」肩越しにきく。
「ああ。服を着ろ。これからドライブだ」
 ジョアンはカーゴパンツを引っ張りあげた。「ドライブ?どこまで?」
「それは……」彼は間を置いた。「どうして?」
 ジョアンはためらった。キン・カン牧場までの距離をあなどっていたせいでガス欠になる恐れがある、と教えたものかどうか。
「さあ、ジョアン」男は威嚇するようにライフル銃を肩からはずした。「言うんだ」
「ガソリンがあまり残ってないの」
 悪態がもれた。「大した女だ!」
「屋敷まで行けば、給油ポンプがあるはずよ」
「連中がそう言ったのか?その手は通用しないぞ。エンジンをかけろ。どのくらい残っているか、見てみようじゃないか」
 ジョアンは喉をごくりとさせ、手早く服を身につけてエンジンをかけた。ガソリンゲージの針は赤い線まで来ている。ふたたび男が悪態をついた。
「予備のタンクは?」
「ないわ」
「きみは何者だ。連中の情婦か?」
「いったいなんの話かさっぱりわからないわ!」ジョアンは声を荒らげた。
「わかっているはずだ」男は横柄に言い、顎をこすった。一瞬、その顔にほんのわずかだが不安そうな影がさした。「じゃあ、プランBでいく」彼は冷ややかに言った。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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