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シークの罠

シークの罠


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 サラ・モーガン(Sarah Morgan)
 イギリスのウィルトシャー州生まれ。看護師としての訓練を受けたのち、医療関連のさまざまな仕事に携わり、その経験をもとにしてロマンス小説を書き始めた。すてきなビジネスマンと結婚し、小さな男の子が二人いる。子育てに追われながらも暇を見つけては執筆活動にいそしんでいる。アウトドアライフを愛し、とりわけスキーと散歩が大のお気に入り。

解説

 エミリーは砂漠の王国カズバーンへやってきた。兄が作った借金の返済を延ばしてもらうためだ。借金の相手であるプリンスにあと二カ月待ってほしいと伝えたところ、彼は耳を貸そうとせず、すぐにも全額返すよう迫ってきた。踏み倒すつもりはないのに、なぜこうもわからず屋なの? 憤慨したエミリーの目の前にプリンスが立ちはだかり、いきなり彼女の髪どめを取った。流れ落ちる金髪に、荒々しく鋭い眼光が向けられる。「君はお兄さんから、女の魅力で迫ってこいと言われたんだろう」エミリーは自分の耳が信じられなかった。
 ★アラブのとある王国でのロマンスをお届けします。次期国王の座を約束されているザックと、愛に溢れる家庭を夢見るエミリー。二人の心はいつしか、砂漠の熱砂のように高く熱く舞い上がります。★

抄録

「背中に流れるその金髪も、服装と同じく露骨に誘っているようだ」そのいらだたしげな口ぶりに、思わずエミリーはかっとなった。
「髪はあなたのせいよ!宮殿で髪どめをはずしたりするから、なくなったの。市場で帽子を買おうとしたんだけど、見つからなくて」
「帽子なんて旅行客しか買わない。それに、このあたりに店などない」ザックがうんざりした顔をしたかと思うと、急に身を硬くした。二人の耳に、叫び声が近づいてくるのが聞こえた。
 ザックが声をもらしそうになったエミリーの口をすかさず手でふさぎ、体でドアに押しつける。
「静かに!」小声で命じられたとき、エミリーはやっと自分の愚かさに気づいた。こんな見知らぬ町を歩いて家までたどり着けると思っていたなんて。もし彼が見つけてくれなければ――。
 エミリーは目を閉じた。感じられるのは日没直後の蒸すような熱気と、押しつけられたザックのたくましい体の感触だけだった。エミリーを隠そうとする彼の荒い息づかいを聞いていると、しっかりと守られている気がした。初めての経験に我を忘れて男らしい香りを吸いこみ、頼もしくたくましい体に身を任せる。無意識のうちに手足から力が抜けていき、ザックの手にふさがれた唇が開く。ふいに褐色の長い指を味わいたくなり、エミリーは舌で触れた。
 その瞬間、鋭く息を吸いこんだザックがかすれた声で何事かつぶやき、エミリーの唇から手をどけた。そしてなんの予告もなくその手をシルクのような金髪に乱暴にすべりこませると、彼女の顔を上向かせ、鋭い目で見おろした。
 ザックが荒い息をつきながら瞳を怒りと欲望にきらめかせた瞬間、罰するかのような激しさでエミリーの唇を奪った。炎のようなキスの中で、彼女は驚きの叫び声をあげた。
 興奮が全身をつらぬいた。口を巧みにさぐられ、熱い体を押しつけられて、エミリーはすべてをザックにあずけた。温かくたくましい手が背中を撫《な》でおろし、強く抱き寄せる。やわらかな体とがっちりとした体がぴったりと合わさった。
 うっとりとしながらも、エミリーは正気になろうともがいた。しかし押しつけられるザックの体とキスに自制心は奪われ、頭がくらくらし、体に力が入らない。生まれて初めて経験する、あまりにも強烈な感覚だった。二人はどこからが自分でどこからが相手なのかもわからないほど強く抱き合い、夢中になって唇を重ねつづけた。
 またしても大きな叫び声が、白く輝く欲望の靄《もや》の向こうから聞こえた。声は鋭い剣が布を切り裂くように、たちまち二人の間に燃えあがった炎を消した。ザックがさっと唇を離して体を引くと、エミリーはよろめきながらも困惑した目で厳しい表情の浮かぶハンサムな顔を見つめた。初めて味わった刺激的な喜びを中断されて、体は不満の叫び声をあげていた。
 全身がうずいていた。彼が始めたことをやめないでほしいと。
 同時に、エミリーはそんなふうに反応してしまった自分を心から恐れた。まったく説明がつかない。彼を嫌いながら、すべてが欲しくてしがみつくなんてことがあっていいのだろうか?
 彼の頬をたたき、体を押し返すべきだった。先に体を離したのがザックだったことに、エミリーは屈辱を覚えた。「まずかったな」ザックはうめくように言うと、さらに一歩あとずさった。「カズバーンでは、こんなことを人前でしてはいけないんだ」
 どちらがよりショックを受けているのだろうと考えながら、エミリーは無言でザックを見つめた。
 涼しい顔で深刻な過ちを犯したと言わんばかりの彼のほう?それとも、熱いひとときを初めて経験した私のほうかしら?エミリーは今まで、女性としての喜びというものをあまり信じていなかった。年ごろになってから何度かキスをしたことはあったけれど、どれも味気なかった。だから、性にはあまり関心のない女だと思いこんでいた。
 でも、関心がなかったわけではなかった。その事実を教えてくれたのがザックだということに、エミリーはぞっとした。
「面倒なことになる前に帰ろう」ザックが厳しい声で言った。
 面倒なことってなに?ほかの誰かに襲われること?それとも、私に襲われると思っているの?
 きっと彼にとっては、さっきのキスなどなんでもないに違いない。プリンスにつくしたい女性なんて星の数ほどいるのだろう。暗い路地裏で一度キスしたくらいでは、火がつくことなどないのだ。
「あなたのボディガードはどこにいるの?」
 黒い瞳が謎《なぞ》めいたように光った。「近くにいるよ。彼らを呼ぶべきなのかもしれないが、そうはしたくない。自分の身くらい、自分で守れるから」
 ザックは低く口笛を吹いた。とどろくような蹄《ひづめ》の音が聞こえたかと思うと、黒い馬がこちらへ突進してきてザックのそばでとまった。見事な頭を振りあげ、鼻を鳴らし、今にも走りだしそうに蹄を踏み鳴らしている。
 エミリーはその美しさに息をのんだ。馬を生涯の友のように愛し、自分でも二頭を飼っているので、目の前に現れた馬がどんなにすばらしいかはよくわかる。
 彼女はかすかにほほえんだ。その馬には主人を連想させるところがあったからだ。強く、たくましく、このうえなく危険なところが。
 ザックは馬にやさしく話しかけ、エミリーの方を振り向いた。「さあ、行こう」
 彼は私を宮殿へ連れて帰る気だわ。エミリーはあとずさりしながらかぶりを振った。
「一緒になんか行かないわ。私は――きゃっ」エミリーが言いおわるよりも早く、ザックは軽々と彼女を馬の背に乗せると、自分も後ろに飛び乗った。両手で軽く手綱を握り、急速に暮れゆく通りを疾走する。
 馬に乗るのは慣れていたとはいえ、こんなに荒々しい迫力に満ちた俊足の馬に乗ったことはなかった。馬は体を震わせ、目をぎらつかせながら、埃っぽい道を全速力で走った。
 しかし、ザックは冷静そのものだった。馬のみなぎる力を牽制《けんせい》しながら、適度なスピードを保っている。馬と一体になっているかのようだった。
 ほかのときなら、エミリーはこんなすばらしい手綱さばきを見て畏敬《いけい》の念を抱いただろう。しかし今は、いったん宮殿に連れ戻されたら二度と逃げられそうにないという思いで頭がいっぱいだった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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