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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル

愛の足かせ

愛の足かせ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ステファニー・ローレンス(Stephanie Laurens)
 セイロン(現スリランカ)生まれ。五歳のとき、一家でオーストラリアのメルボルンに移り住む。大学では生化学を専攻して博士号を取得。その後、最愛の夫とともにロンドンに渡り、四年を過ごしたのち、帰国。研究活動に従事しつつ、十代のころから愛読していた歴史ロマンス小説を書き始める、現在はアメリカでも人気が高まり、ベストセラーリストの常連に名を連ねている。趣味は海外旅行。

解説

 アントニアは幼いころからフィリップとの結婚を夢みていた。それなのに、のほほんと年月を重ね、気がつくと二十四歳になっていた。大変! ぐずぐずしてはいられないわ。幸い、フィリップにはまだ結婚を約束した相手はいないらしい。ここで私が彼の花嫁にふさわしいレディで、男爵の妻としても立派にやっていけると証明できたなら、求婚してくれるかもしれない。かくして二人は八年ぶりに再会したのだが、彼はアントニアのことをなかなか思い出してくれず……。
 ★ステファニー・ローレンスの三部作〈三人の求婚者〉の最終話をお届けします。放蕩者を気どっていたフィリップもついに年貢の納めどきのようです。ヒロインのアントニアが仕掛けた愛らしい罠とは? 恋人たちがついばむ協奏曲をお楽しみください。★

抄録

 フィリップは目を細めた。「教えてくれ、アントニア――わたしがきみを誘惑しているのか、きみがわたしを誘惑しているのか」
 一瞬、アントニアは世界が引っくり返った気がした。彼女はまばたきした。「誘惑……?」
「誘惑だ」フィリップは容赦なく彼女をにらみつけた。「大昔からときとして男と女のあいだに発生する引力を利用してね」
 アントニアは当惑した。いったい何が言いたいのだろう。「わたしが……?」
「なんの話だかわからないと言うのか?」フィリップは彼女のあごをつかんだ。
 皮肉な口調が胸に突き刺さる。アントニアの瞳がきらりと光った。「そもそもどうやってあなたを誘惑すればいいのかもわからないのに!」
「わからない?」きょう一日フィリップを苦しめていた緊張感がさらに高まった。「わかる必要もないだろう。直感だけでできてしまうのだから」アントニアの大きく見開いた茶色の目、形のいい唇を見つめていると、彼の心はいっそう激しく乱れた。心の渦にのまれてしまいたいという衝動がしだいに強くなる。今までそんなふうに自分を見失ったことなど一度もないのに。「いずれにせよ」フィリップは低くくぐもった声で言った。「きみは成功したよ」差し出されたものを受け取れば、再び心の平安を得られるのだろうか?フィリップは身をかがめて彼女の唇に唇を重ねた。
 思ったとおり、アントニアは即座に反応した。反射的にこわばった体も彼の愛撫《あいぶ》にやすやすと溶けていった。彼女の熱い反応がフィリップの傷ついた自尊心を癒《いや》した。少なくともこの段階では彼女もわたし同様、自分をどうすることもできなくなっている。彼女の唇から力が抜けた。巧みに促されて、ためらいつつも彼の唇の下で彼女の唇が開いていった。
 アントニアは激しい快感の渦にのまれ、そのまま舞い上がっていくしかなかった。理性は砕け散り、感覚だけが研ぎすまされ、もっと経験したいと渇望の叫びをあげる。いつの間にかフィリップにきつく抱きしめられていた。
 もっと愛撫が欲しくて、アントニアは自ら彼の唇に唇を押しつけた。もはや彼のキスの魔力の奴隷だ。自分からもおずおずとキスを返し、驚くほどの親密さ、めくるめく快感を満喫した。彼女を包むたくましい筋肉、大きな体が放つ熱気、すべてが初めての体験だ。徐々に胸の中でふくらんでいく何かも、初めて味わう魅力的な感覚だった。
 フィリップの強さが彼女を包み、キスが彼女を酔わせる。彼の感触、彼の味がアントニアを圧倒し、興奮させた。アントニアは彼の首に両腕をからませ、自分でも驚くほど熱烈にキスを返した。
 フィリップはうなり声をあげ、さらに強くアントニアを抱きしめた。彼女の胸のふくらみが胸に押しつけられる。フィリップは片手で彼女の腰を撫《な》で、さらに一体になろうとした。
 彼もまた快感の渦にのまれていた。
 しかし、経験豊富な彼は自分を失うことはなかった。強烈な官能の力から身を引きはがすには全力を振り絞らなくてはならなかったが。なんとか頭を上げ、彼女の飢えた唇を唇でやさしくなだめたときには、ふたりとも荒い息をしていた。
 フィリップは筋肉をこわばらせ、常識が戻ってきてふたりを救ってくれるのを待った。ゆっくりとアントニアのまぶたが上がっていく。いつにも増して宝石のように輝く瞳を、フィリップはうっとりと眺めた。それはどこか暗い輝きだ。彼は息をのんだ。アントニアは下唇を噛《か》んで、驚いたように目を見開いた。
 そして、彼の腕の中で身をこわばらせた。
 アントニアがひどく動揺しているのがフィリップにもわかった。「違うんだ」彼女がもがきだす直前に彼は言った。
 ほっとしたことに、アントニアは動きを止めた。おびえた小鳥は彼の腕の籠《かご》の中で震えていた。
 彼女を見つめたまま、フィリップは深呼吸した。上下する胸に柔らかなふくらみを感じつつも、なんとか自分を抑えた。「きみを犯すつもりはない」
 彼女は無垢《むく》だ。わたしは彼女を脅《おび》えさせてしまったのだ。
 アントニアの大きな瞳は疑わしげだった。フィリップは慌ててつけ加えた。「そんな気がまったくなかったわけじゃないが」肩から腰までぴったり重ねていたのだから、彼女もこちらの欲望に気づいただろう。「そうするつもりはないから」
 アントニアは答えることもできなかった。耳にはまだ鼓動がどくどくと響いている。いったいどこまで見透かされているのだろうとぼんやり考えながら、しばらくただ彼を見つめていた。わたしがどれほど燃え上がったか、彼は気づいただろうか?今もまだわたしの中で欲望が息づいているのが、まなざしに映っているだろうか?
 そうでないことを祈るしかない。
 ひどくうろたえショックを受けて、アントニアは頬が真っ赤に染まるのを感じた。フィリップが片眉を上げたのでさっきの言葉を思い出し、無理にうなずいた。それでまたさらに赤くなった。
「もう戻らないと」フィリップはもう一度気を取り直し、アントニアに回した腕をほどいて彼女の手を取った。
「戻る?」それ以上言う前に、アントニアは馬のほうへ引っ張られた。さまざまな場面が胸の中でぐるぐる回った。「でも……」
 フィリップは低いうなり声をあげると、振り返ってアントニアを馬に押しつけた。そして身をこわばらせ、彼女にのしかかるようにして険しい目でにらみつけた。「今ここで犯されたいのか?」
 アントニアはまた真っ赤になった。首を振るのがやっとだった。
「じゃあ、戻ろう」フィリップは歯を食いしばって言った。「今すぐだ」彼はアントニアを抱え上げて馬に乗せ、手綱を持たせた。そしてすぐさまペガサスにまたがった。
 それ以上は無言で館へと馬を走らせた。
 馬を走らせるうちに、アントニアの頭もはっきりしてきた。館に着くころには頬は真っ赤で、瞳はきらきら輝いていた。
 ふたりは厩の前に馬をつけたが、誰も出てこない。フィリップは周囲を見回し、馬丁たちに園遊会の催しに協力してもらう礼に、村の酒場へ行っていいと許可を出したことを思い出した。子供たちをポニーに乗せたり、年長の子には近くの運動場で乗馬のジャンプをさせたりするのだ。彼は舌打ちして馬から下りた。「馬の世話は自分たちでしないと」
 アントニアは足を振ってあぶみをはずし、滑るように馬から下りた。そしてフィリップを振り返った。
「誘惑しようとしたなんて人を非難しておいて、そんなことまでさせようというの?」それ以上は言葉が出てこない。手綱をフィリップに投げつけると、くるりと背を向けて中庭をあとにした。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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