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始まりはウエディング

始まりはウエディング


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・クラシックス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・ハミルトン(Diana Hamilton)
 イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供をもうけた。就寝前の子供たちにベッドで読み聞かせるために物語を書きはじめる。ロマンス小説家としてのデビューは1987年、その後数多くの名作を世に送る。2009年5月、ファンや作家仲間に惜しまれつつ亡くなった。

解説

 友人のパーティーでハニーはグレアムと言い争っていた。以前からグレアムはしつこく結婚を迫り、愛してもいない彼と結婚する気のないハニーはうんざりしていた。いくら断ってもあきらめないグレアムは、そのときもまた……そこへ、ベン・クレアモントという男性が現れ、ハニーをさりげなくパーティー会場から連れ出してくれた。静かなバーでベンは彼女の話を親身になって聞き、最初は警戒していたハニーもいつしか彼との会話を楽しんでいた。翌朝、ベンから電話で食事に誘われたハニーは、グレアムとの問題を解決する“完璧な”方法を提案された。しかし、それは彼女にとっては信じられない方法だった。グレアムから逃れるために、ベンと形式だけの結婚をするなんて……。

抄録

 この三週間というもの、ハニーは半分死んだような気分で過ごしてきた。ベンがセバン川のほとりに借りた家にも興味はわかなかった。二人の新居となるその家は、初期のヴィクトリア様式のテラスハウスで、正面に小さな庭、裏手に丘の懐に抱かれるようにもうひとまわり小さな庭がついている。キッチンやバスルームのほかに、一階と二階に二部屋ずつのその家は、充分美しかったけれど、大きさの点ではハニーのフラットとさして変わりなかった。ベンはあのフラットを、ビジネスの接待に使うには小さすぎると横柄な身ぶりでばかにしたのに。
 罪の重さに気力がなえていたハニーは、ベンがその家を選んだことにあえて疑問を挟みもしなかった。彼女は不意に暑苦しさを覚え、大きくため息をついた。ベージュのシルクのスーツに体を締めつけられている気がする。襟なしのジャケットのウエストはきつすぎるし、ぴったりしたスカートは短すぎる。
 そのとき、彼女の無表情な小さな顔を温かいてのひらと男性的な長い指が包み込んだ。逃れようもないままに彼女の顔は横に向けられ、ベンの唇が彼女の唇に重ねられた。最初は軽く触れただけだったが、すぐに彼の温かい唇が再び強く押しつけられ、その下で彼女の冷たい唇は小刻みに震えた。ゆっくりと彼の舌が彼女の唇をなぞる。それは二人だけの秘密だったが、その感触に彼女は夢見心地になった。ベンにキスをされたのはそれが初めてだった。そのキスに目覚めさせられた感覚に彼女は茫然としたが、頭の中では、これは最初で最後のキスだと自分に言い聞かせていた。二人を祝福する小さな声が儀式の終わりを告げ、ベンとハニーは正式に夫婦となった。
 ハニーはめまいを感じた。ベンのキスに応えた自分が恥ずかしくてたまらなかった。立ち会った人々を納得させるためだけの儀式でしかなかったのに。彼女は招待客の祝いの言葉を受けるのも心苦しかった。式のあとのランチ・パーティーをどうやって切り抜けたらいいの? どうやって笑顔をつくり、これが神に祝福された結婚だというふりをすればいいの? 呪われた結婚だというのに。
 ハニーは自分が今にもパニックに陥って登記所から飛び出し、やみくもに通りを走りだすのではないかと思った。ぐらぐらするヒールの高い靴、ばかげた帽子、アプリコット色のばらのブーケを歩道にまき散らしながら。
 だが、ハニーの腕はベンの手にしっかりつかまれていた。その手は、逃げたがっているのはわかっているよ、とでもいうように力がこもっている。突然、全身の力が抜けて、ハニーは硬く引き締まった彼の体に弱々しくもたれかかっていた。

「すてきだわ」ハニーは部屋に案内してくれたホテルの主人に愛想よく言った。小さなホテルの経営者は、今度はベンを廊下のはずれの部屋に案内している。別々の部屋だ。
 もちろん部屋は別々でなければ。ただハニーが暗い気持になったのは、この旅がそれまで思い描いていたハネムーンにはほど遠かったからだ。ウェールズの海辺のリゾートで二日間。わずか二日というのは、ベンがそれ以上仕事を休めないせいだった。ベンは興味津々の招待客に説明した。今は新しいプロジェクトが急ピッチで進行している大事な時期だから、それが一段落したら、ちゃんとしたハネムーンに出かけるつもりだ、と。
 真っ赤な嘘よ。嘘で塗り固めたこの結婚と同じ。ただでさえ山のように仕事を抱えているのだし、わたしと過ごすのは二日が限度だと思っているんだわ。
 わたしだってそうよ。あなたと二人きりでいたいものですか! むっつりした顔つきで、ハニーは小型のスーツケースをどさりと大きなベッドにほうり出した。わざわざ荷物をほどく必要があるかしら?
「気に入った? 必要なものはそろってるかい?」
 ベンの姿を見、声を聞いただけで、ハニーはうろたえた。ノックもせずに部屋に入ってくるなんて、とても我慢できない。ハニーは険しい目で彼をにらみつけた。ベンはドアにもたれ、官能的な唇の端にちらりとからかうような笑みを浮かべている。淡いグレイのスラックスにカジュアルな黒のセーターという格好だ。着替えたのね。彼がいきなり部屋に入ってきたとき、わたしだって着替えようとしていたかも……。
 見る見るハニーの顔が怒りに赤く染まった。それでいて、しびれるような微妙な感覚に襲われ、脚から力が抜けていく。どうかしてるわ。それもこれもみんなこの人のせいよ。ハニーは不機嫌な口調で言った。「今後、ノックもせずにわたしの部屋に入ってこないで」
「ぼくが見てはいけないものを見るかもしれないって心配?」彼が皮肉っぽく問いかける。「これまで目にしたもの以外、見ようという気はないよ。それに、生まれたままのきみの姿を見たからといって、ぼくが欲望に狂うとは思えないな」
 ベンはドアから離れて、ゆっくりと彼女のそばに近づいてきた。ハニーは彼が憎らしかった。そうなの、これっぽっちもわたしに魅力を感じないというのね。いいわ、けっこうよ。でも、しつこくそれを持ち出すことはないんじゃない?
「わたしたち、ルールをきめる必要があるわね」彼女はとげとげしい口調で言った。彼はベッドに腰を下ろして、スプリングの具合を確かめている。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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