マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・クラシックス プレミアム

渚のノクターン

渚のノクターン


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・クラシックス プレミアム
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


著者プロフィール

 シャーロット・ラム(Charlotte Lamb)
 第二次大戦中にロンドンで生まれ、結婚後はマン島で暮らす。大の子供好きで、五人の子供を育てた。ジャーナリストだった夫の強いすすめによって執筆活動に入り、百作以上の作品を著す。二〇〇〇年秋、多くのファンに惜しまれつつこの世を去った。

解説

 セリーナがフレディの店で歌うようになったのは十六歳で高校生のころ――借り物のドレスを着たおどおどした少女だった。しかし、三年ほど前からは引く手あまたの売れっ子だ。ある朝、セリーナは新聞を見て、青くなった。ペルーで事故を起こした飛行機に三年前に別れた資産家の夫アシュレイが乗っていた。だがその夜、観客の中に彼の顔を見つけ、セリーナはステージで気を失った。

抄録

 セリーナは、アシュレイの顔に浮かんだ怒りの表情に驚いた。あごがきつくひきしまり、グレーの瞳が氷のように冷たいまなざしで見おろしている。
「そんなこと、僕が考えていないと思ってるのか? 十分承知してるよ。ただ、むかしのことをよく覚えてるから、こわがっているのに無理やり襲うつもりはないのさ」
 セリーナは、それ以上余計なことを言わなければよかったのだが、アシュレイの高飛車な口調と、視線の冷たさにプライドを傷つけられ、つい口から出てしまった。「でも、そのつもりでここにいるんでしょ」
 アシュレイがかたずをのむ音が聞こえたかと思うと、急に両手をセリーナのウエストにかけ、ぐいとひきよせた。たくましい筋肉を身近に感じ、海辺にいたときから自分が望んでいたのは、このことだったと思った。鼓動は高まり、不安がつのっていった。
 セリーナは、海水でよれたアシュレイの髪の毛に手を入れ、ぴったりと体をくっつけた。アシュレイは信じられないという顔でセリーナを見つめていたが、顔を近づけようとはしないので、彼女の方から、つま先立ちになって、軽くくちびるにキスした。勝ちほこったような熱い吐息が、セリーナの口からもれた。
 すると、今度はアシュレイが激しい勢いでくちびるを吸い、めちゃめちゃにキスの嵐を浴びせた。抑えつづけてきた欲望が、どっとわきあがり、セリーナを力まかせに抱きしめた。セリーナは全身の力を抜き、されるがままに体をしならせ、かたく目を閉じる。こんなキスは生まれてはじめて――。やがて、荒々しいキスが甘いささやきに変わり、だんだんと現実にひきもどされる。このままこうしていたい。激しいキス、甘い抱擁。このときが来るのを、何日も待っていたのだ。力強く熱っぽい腕の中で、むかしのわたしなら想像もできなかったような気持ちになっているのを感じる。心の片隅では、墜落事故の記事を読んだときから思いつめてきたことなのだけれど。
 アシュレイへの愛情が、恐怖心よりも強いとわかったのは、あのときだった。今になって思うと、アシュレイの死をあれほど悲しく思った理由のひとつは、どんなに自分が彼を愛しているかを語らないうちに、彼が死んでしまったと思ったからだった。
 いろいろ思いめぐらしているうちに、ふと気づくとベッドに寝かされている。アシュレイはやさしくセリーナのくちびるをふさぎ、片手で胸を愛撫した。セリーナはキスを受けながら、体中を貫く戦慄に身もだえした。
 ドレスの下に手が伸び、肌に触れたとき、セリーナは鋭い悲鳴をあげ、アシュレイをつき飛ばそうとした。
「抵抗してもむだだぜ」
「おねがい、離して!」逃げだそうと必死にもがいたが、アシュレイの力はますます強くなるばかりだ。また、いつもの恐怖心がよみがえってきた。
 アシュレイはおそろしい顔でにらんでいる。「そんなことはできないはずだ。僕に火をつけたのはきみなんだからね」
「ごめんなさい……」ふるえる声でつぶやき、複雑な気持ちをどう説明してよいかわからず、目から大粒の涙をこぼした。愛と恐怖の中で揺れうごいているこの気持ちを。
「ごめん、だって?」突然、平手打ちが飛んできて、めまいがした。
 一瞬、体が自由になったが、すぐまた前にも増して強い力で押さえつけられた。アシュレイは荒っぽくドレスに手をかけ、びりっとひき裂いた。セリーナは苦しそうに声をあげたが、アシュレイのくちびるにふさがれ、すぐにかき消されてしまった。アシュレイはセリーナのことなどおかまいなしに、いつまでもいつまでもキスを続けた。情け容赦なくなでまわされているうちに、セリーナの体は、だんだん無抵抗になっていった。
 アシュレイは急に手を止め、がっくりと首うなだれた。「ああ、セリーナ。僕はなんてひどいことをしてるんだ……。きみに刺激されて、つい理性を失ってしまった……」
 セリーナは、目にいっぱい涙を浮かべ、ふるえながら、青白い顔でアシュレイを見ている。
「きみがさせたんだ。きみが悪いんだからな」
「わかってるわ」セリーナは、低いはずかしそうな声でつぶやいた。「ごめんなさい……」
 アシュレイはじっとセリーナの目をのぞきこんだ。涙がますますあふれ、頬を伝って落ちる。アシュレイは体を起こし、セリーナを抱きよせて、やさしく髪の毛をなでつけた。
「もういいよ。泣かなくていい。どうしてあんなことをしたんだい?}
「ほんとうにごめんなさい」そっとつぶやき、アシュレイの胸に顔をうずめた。心臓の音が聞こえてくる。「説明できるといいんだけど……」
「わかってるよ、セリーナ」抑揚のない口調でアシュレイは言った。「お義父さんのことはね」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。