マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

愛なき王と氷の女神

愛なき王と氷の女神


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


著者プロフィール

 ケイト・ヒューイット(Kate Hewitt)
 アメリカ、ペンシルバニア州で育つ。大学で演劇を学び、劇場での仕事に就こうと移ったニューヨークで兄の幼なじみと出会い結婚した。その後、イギリスに渡り六年間を過ごす。雑誌に短編を書いたのがきっかけで執筆を始め、長編や連載小説も手がけている。読書、旅行、編みものが趣味。現在はコネチカット州に夫と三人の子供と住む。

解説

 この王宮という名の牢獄で、私は愛とは無縁のまま一生を終える……。

 8歳のとき妹を突然失い、リアーナの心は凍りついた。以来、慈善活動に打ち込むだけの日々を送っていたある日、マルディニア国王アレッサンドロとの縁談が持ちあがった。両親は諸手を挙げて喜び、リアーナの気持ちなど慮りもしない。アレッサンドロとは10年前、たった1度会ったきりだというのに。リアーナは自身の宿命を悟った――愛とは無縁の一生を送ることを。やがて迎えた結婚交渉の日、生気に満ちあふれたアレッサンドロ王を見てリアーナの氷のような心はかすかに揺れた。だが、彼の口元は嘲るように歪み、まなざしはぞっとするほど冷たい。私を花嫁にと望んでおきながら、なぜ蔑みの目で見るの……?

 ■冷酷な王が花嫁に望んだのは、品行方正で完璧であること。けれどやがて、どんな感情も見せぬ妻が氷の仮面の下に隠した情熱を切望するようになって……。R−3017『プリンスの冷たいキス』に続く、きらびやかな王宮ロマンスをお楽しみください。

抄録

 サンドロが彼女を上から下へと眺めた。訳知りの、値踏みするような視線で。「君は彫像を思わせる」
 彫像? 冷たく、血も骨もなく、思考も感情も持たない置物。私はそんなふうに思われているの?
 たしかに、この二十年間は彫像と変わらなかった。その事実に気づき、リアーナの心は重く沈んだ。目をしばたたき、必死に無表情を保つ。彼が非難するとおりの彫像めいた顔になろうと努めた。「私を侮辱なさっているの?」なんとか声を抑えたつもりだが、あまりうまくいかなかった。
 彼は正直に言っているだけ。当たらずとも遠からずだわ。でも……彫像ではいたくない。この男性の前では。その思いこそ、ほかの何よりも危険だった。
「他意はないんだ。つい口から出てしまう」
「そのようですね」
 サンドロは嘆くようにゆっくりとかぶりを振った。「君は癇癪を起こしたりしないのか? わめいたり、ののしったり」
「あなたは、やかましい妻をめとりたいの?」
 リアーナが平然ときき返すと、彼の口元に微笑が浮かんだ。
「君は腹の立つことなど何一つないと?」
 なおも彼が尋ねるので、リアーナはいけないと思いつつ、ぴしゃりと言い放った。「あるとしたら、いまのあなたよ」
 彼が笑った。さもおかしそうな、ほがらかな笑い声がリアーナをシルクのように優しく包み、奇妙なぬくもりをもたらした。無神経な言葉で私を傷つけ、憤慨させる人なのに、笑い声がこんなにすてきだなんて……。
「それはよかった」サンドロが応じた。「無関心でいられるよりは、怒りを買うほうがましだ」
「無関心なつもりはありません」
「君の言葉や態度に表れているよ、おおむね」
「おおむね?」
「実際の君はそれほど無関心じゃない」サンドロの声があの低いつぶやきに変わった。「僕に信じこませ、自分で信じこもうとするほどには」
 喉がふさがり、リアーナは息苦しくなった。「意味がわかりません、陛下」
「そうかな?」サンドロは身を乗りだした。ろうそくの明かりを受け、瞳が銀色に輝いている。「それに、また念押しさせてもらうが、サンドロだよ」
 リアーナの頬がさらに濃く染まった。彼女の五感は痛いほど研ぎ澄まされていた。いま感じるのは怒りと恐怖、何よりも欲望……しかも、それを彼に知られている。「いまはそんな気になれません」声が震える。「名前でお呼びしたくないんです、陛下」
「どういう場面ならサンドロと呼んでくれる?」
 リアーナは手のひらに爪を食いこませた。「いまは一つも考えつかないわ」
 銀色に輝く瞳がゆっくりと値踏みのまなざしを注ぐ。「僕は一つ、二つ思いつくよ」
 彼が物憂げに言い、不意に獣めいた強い光を目に宿した。リアーナはどきっとした。鼓動が速まり、手が冷たくなり、口の中が乾いていく。
「そう、一つ、二つはね」サンドロはそうつぶやき、ナプキンをテーブルに放りだして席を立った。

 彼女は罠にかかった兎のようだ、とサンドロは思った。もっとも、そこまでおびえてはいない。驚き、警戒しながらも、自制心と冷たさを失うまいとしている。それを剥がし、中身を見たいという猛烈な衝動がこみあげた。いますぐそうしたい。
 こちらを見つめる彼女は目を見開き、まばたきもしない。ナイフとフォークを指の関節が白くなるほど握り締め、その細い手は皿の上で凍りついている。
 サンドロは肉食獣を思わせるしなやかな足取りで彼女に近づいた。本能だけで動いていた。あの高慢な見せかけを剥ぎ取り、いまいましい氷の仮面を砕いて粉々にしたい。彼女が僕をサンドロと呼び、この腕の中でとろけるまで。
 リアーナの指からナイフとフォークを優しく、だが断固として取ると、その二つは皿に転がった。彼女はなんの抵抗も示さない。ラベンダー色の瞳はまだ彼に釘づけだ。唇はかすかに開いている。彼女の手首をつかむと、激しい脈が指に感じられた。サンドロは彼女の体を引きあげ、自分の前に立たせた。
 まだリアーナはあらがわずにいる。サンドロはさらに近づき、膝を彼女の腿のあいだに押し入れて、両手で顔を挟んだ。
 彼女の肌はひんやりと冷たく、たまらないほど柔らかい。開かれた唇を親指でさすると、小さなあえぎ声がもれ、サンドロは微笑した。下唇のふくらみに親指を添えてから、あらわな肩まで両手を滑らせる。手のひらに感じる肌はシルクそのものだ。
 サンドロは彼女の目をのぞきこんだ。淡い金色のまつげに縁取られた大きな瞳は、何かを待っているようだ。サンドロは顔を寄せ、唇をこすり合わせた。優しく問いかけるような初めてのキス。けれど、リアーナは反応を見せない。微動だにせず、両手を脇で握り締め、唇が動く気配もなかった。動いているのは大きく弾む胸だけだ。その鼓動はサンドロにも伝わってきた。なんとしても彼女から反応を引きだしたい。彼はさらに決意を固めた。キスを深め、みずみずしい口の中に舌を差し入れる。問いかけるキスは求めるキスへと変わった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。