マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・プレゼンツ 作家シリーズ

奪われた唇 魅惑の独身貴族 III

奪われた唇 魅惑の独身貴族 III


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・プレゼンツ 作家シリーズ魅惑の独身貴族
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★☆☆☆1
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


著者プロフィール

 キャロル・モーティマー(Carole Mortimer)
 ハーレクイン・シリーズでもっとも愛され、人気のある作家の一人。1978年にイギリスでデビューして以来、これまでに刊行された作品は実に百冊を超える。十四歳のころからロマンス小説に傾倒し、アン・メイザーの作品に感銘を受けて作家になることを決意した。キャロルは三人兄妹の末っ子としてイギリスはベッドフォードシャー州の小村で育った。一時は看護師を志したが、転倒した際に痛めた背中が治りきらず断念。その後、某有名文房具メーカーのコンピューター部門に勤め、そこで働く間に時間を見つけて小説を書くようになった。物語を書くときに一番楽しいのは、ヒロインとヒーローの性格を考えるとき。書いているうちに徐々に主導権がヒロインとヒーローに移り、いつのまにか彼らが物語を語りはじめるのだという。現在キャロルは“イギリスで最も美しい場所”マン島に、夫と子供たちと住む。

解説

 世界的に有名な画家ブライスは、大金持ちの実業家から、ある女性の絵を描いてほしいと依頼を受けた。肖像画は描かない主義だ、とブライスはいったんは断った。依頼主の傲慢な態度も気に食わない。しかし、その女性サビーナの姿に、ブライスは魅了された。トップモデルの彼女はまさに美の化身だ。惹かれたのは、外見だけではない。サビーナの瞳をよぎる不安と恐怖を、ブライスは見逃さなかった。なんとしても彼女の内面に近づき、その謎を解き明かしたい。肖像画を描くことに、にわかに乗り気となったブライスを、なぜかサビーナは避けようとする。ブライスはいっそう意欲をかき立てられ、彼女をデートに誘った。

抄録

 サビーナは寝椅子に腰を下ろした。アトリエのいっぽうの壁は全面が窓になっていて、そこから五月のまぶしい日差しが降りそそいでいる。庭には春の花が咲きそろい、見ているだけで心が晴れていく。
「自分で庭の手入れをするの?」
「なんだって?」
 サビーナは庭からブライスに視線を移した。彼はすでに膝の上のスケッチブックに集中している。「始めていたなんて、知らなかったわ」庭を見て油断していたところを描かれていたなんて。
「ラフなスケッチだ」ジーンズに黒のTシャツという格好のブライスが、スケッチブックから目を上げて彼女を見た。「そう、ぼくが庭の手入れをしている。何時間もアトリエで過ごしたあと、いい気分転換になる。きみも庭いじりをするのか?」
 サビーナは悲しげな顔をした。「以前はしていたけれど」
「仕事が忙しくて、もう無理か」ブライスが推測する。
 サビーナの目に帳が下りた。「そんなところ」
 サビーナがガーデニングをやめたのは、仕事が理由ではなかった。小さなコテージでのひとり暮らしをやめたからだ。でも、ブライスに詳しい説明をする気はない。
 サビーナはこのアトリエを、進んで訪れたわけではなかった。来るしかなかったから来ただけだ。もちろんブライスに対するお礼の意味もある。わたしが電話を避けつづけていたことを、彼はリチャードに言わずにいてくれた。けれどなぜかお礼の言葉を口にできない……。
「“そんなところ”ってどういう意味だい?」ブライスがやさしくきき返す。
 サビーナは、落ち着かない様子で体の位置を変えた。「わたし、こういうことに向いていないみたいだわ。じっと座っていられないもの」彼女は顔をしかめた。
 ブライスがうなずいた。「動きまわってくれてもいいよ。座っていたほうがいいのかどうかも、まだわからないから」
 サビーナは立ち上がり、所在なく歩いた。彼はどういうポーズがいいと思っているのだろう?
 アトリエは、雑然としていながら不思議と秩序のある空間だった。壁にはカンバスがずらりと立てかけられ、絵の具や鉛筆や紙などが、棚にきちんと置かれている。家具は必要最低限のものしかない。彼が座っている椅子に、絵の具のついた大きなテーブル、あとはサビーナが座っていた寝椅子だけだ。
 そのときミセス・ポッターが入ってきて、トレイをテーブルに置いた。「さあ、どうぞ」トレイにはサンドイッチやフルーツケーキものっている。
「ありがとう」サビーナは心から礼を言った。
 家政婦が立ち去ったあと、ブライスは声をかけた。「自由に食べてくれ」
 サビーナは二つのカップにコーヒーをつぎ、チキンサンドイッチをつまんだ。ひと口食べてみて、ずいぶんおなかがすいていたのに気づいた。
「よくランチを抜くのかい?」じっと彼女を見ていたブライスが問いかけた。
 サビーナは軽く肩をすくめた。「ときどきね。たいていあとできちんと食べるけれど。わざと食事を抜いたりはしないわ。何もしなくても、こういう体形なの」
「みごとなスタイルだ」ブライスがうなずく。「結婚式はいつ?」
 いきなり話題が変わったので、サビーナは目をしばたたいた。「なんて言ったの……?」
「リチャード・レイサムは、きみの肖像画を自分への結婚祝いと考えている」ブライスは肩をすくめた。「いつまでに仕上げればいいのかと思ってね」
 サビーナは顔をしかめた。「彼の話を誤解しているんじゃないかしら」わたしたちは、理解し合っていても結婚には至らない関係だ。リチャードもそれは了承している……。
「誤解?」ブライスが眉をひそめた。「彼は結婚が間近という口ぶりだったが」
「そう?」きっとこの人の勘違いだ。
「ぼくはそう感じた」ブライスは続けた。「彼とはずいぶん年が離れているんだね?」
 サビーナの頬が赤くなった。わたしと婚約者に年の差があろうとなかろうと、この人にはなんの関係もない。
「まるで春と秋だ」ブライスがあざけるように言う。
 サビーナの口元がゆがんだ。「わたしは二十五歳だけれど、春というより夏よ。それに年の差なんて、いまどきたいした問題じゃないでしょう?」挑むような調子になる。
「そうかな?」
 サビーナは彼が言ったことにひどく動揺していた。リチャードとはただの友人同士、それだけ。きっとブライスの勘違いだ。でも、違うとしたら……?
「わたしはスケッチのためにここへ来たの、ミスター・マカリスター。個人的な質問を受けに来たんじゃないわ!」
「ブライスだよ」彼はこともなげに言った。
「わたしはミスター・マカリスターと呼びたいの」それより、この人を遠ざけたい!
 ブライスはどうでもいいと言わんばかりに肩をすくめた。「どちらでもいい。暖炉のそばに立ってもらえるかな?」彼はまたスケッチブックに目を落とした。
 サビーナは腹が立ったが、何事もなかったかのように火の気のない暖炉へと歩いた。
「それでいい」彼女がとったポーズにブライスは満足した。「着ているものはまずい。もちろんきみはその格好でもすてきだが」サビーナが眉をひそめるのを見て、彼は言い添えた。「ぼくがきみを描きたい姿ではないという意味だよ」
「どういう格好がいいの?」サビーナはいらだった。
 ブライスは答えなかった。スケッチブックに鉛筆を走らせながら、合間に難しい顔で彼女を見る。
 サビーナはその場で同じポーズをとったまま、彼の陶酔した表情を見ていた。撮影中のカメラマンが見せるのと同じ表情だ。名匠が作品に取りかかったということ。いまのわたしは、人ではなく題材なのだ。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。