マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

秘書の役割

秘書の役割


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


著者プロフィール

 エマ・リッチモンド( Emma Richmond)
 第二次大戦中、イギリスのケント州北部で生まれ、農場でのびのびとした子供時代を送った。現在三人の娘はみんな独立し、愛犬だけが残っている。ロマンス小説の熱心な読者であり、衝動的な作家であると彼女は自分を語る。想像の世界と人生をこよなく愛する彼女だが、きれい好きな家政婦をいつも求めているという。

解説

 未婚の母という噂を立てられ、相手は上司だと憶測されて……。

 ■実業家アダム・ターメインの秘書であるクラリスは、アダムとともに彼の生家のある小さな村に引っ越してきた。二人は一歳になる赤ん坊ネイサンを連れていた。村の領主だったターメイン家の屋敷はずっと管理人任せだったが、アダムが女性と赤ん坊を伴って戻ってきたことで、旧態依然とした村人たちのあいだに憶測が乱れ飛ぶ。実は交通事故で入院中のネイサンの両親に代わって、名付け親のアダムが赤ん坊の面倒を見るための処置だった。ところが、いちいち説明する必要はないというアダムの態度のせいで、クラリスは未婚の母、子供の父親はアダムではないかと噂が立つ。半年前に雇われたときからクラリスは彼に惹かれているものの、自分はアダムにふさわしくないと、思いを抑えているというのに……。

抄録

 アダムは彼女にグラスを渡してから自分用にもつくり、ソファに深々と座って画面を見つめた。
 ハンサムな横顔を見ながら、クラリスは昼間のアラベラの言葉を思い起こした。大勢の女性が彼を好きになるのも無理はない。
「シベリウスだね」アダムが言う。
「そうなの?」
 彼は笑った。「バイオリン協奏曲の≪タピオラ≫だよ。曲名も知らないのに、なぜ見ていたんだ?」
「音色が気に入ったの。好きになるのに知識は必要ないでしょう」クラリスは言い返した。
「いかにも。ぼくがどこへ行っていたか、きかないのかい?」
「わたしには関係ないことですもの。アラベラが結婚式に招待してくれたわ」クラリスはさりげなく言い添えた。「列席してもいいかしら?」
「ああ。ぼくも一緒に行こうかな」
「だめよ」クラリスはやんわりと否定した。
「だめ?」アダムは一瞬黙りこみ、それからうなずいた。「たぶんきみの言うとおりだろう」
「もちろんよ」
「ぼくを無神経だと思っているのか?」
 クラリスは視線を落とし、首を振った。「あなたは気づいていなかったと思いたいわ……」
「彼女がぼくに惹かれていたことを?」
「ええ」
「だったら、たしかに気づいていなかった。きみはそう思いたいんだろう?」
「失言だったわ」クラリスははぐらかした。
「彼女はなんと言っていた?」
「あなたはおめでとうと言って結婚祝いに何が欲しいかきくでしょうね、って」
「それは、きみがぼくにきこうとしていることなんじゃないのかい?」アダムは親しげに尋ねた。目は画面を見つめたままだ。
 心臓がどきっとした。クラリスは息をのみ、まじまじと彼を見た。「なんですって?」
「ふと思っただけだ。別に大したことじゃない」
 いいえ、大したことよ。彼は何かほのめかそうとしている……。「結婚するつもりなの?」
「いや」アダムはあっさり否定した。「今のところは」
「でもいつかはしようと思っているのね? わたしはてっきり……。あなたがよく言っていたから」
「気が変わったんだ」アダムは立ちあがり、お代わりをつぎにワゴンのところへ行った。「ショックを受けたようだね、クラリス」
「ええ」クラリスはぼんやりと相槌を打った。「いえ、つまり……ああ、わからないわ」うろたえている自分に腹が立つ。「意外だっただけよ」なんとか気持ちを落ち着け、彼女は尋ねた。「アラベラに会いに行ったのね?」
「いや、二、三用を足してから病院へ行ったんだ」
「だけど、アラベラがアリステアと結婚するのはいやなんでしょう?」
「その逆さ、心から喜んでいるよ。ぼくが二人を引きあわせたんだから」
 クラリスは怒りがつのるのを感じた。「彼女を追い払いたかったのね」
「ああ、追い払いたかった。ポールの容態を知りたくないのかい?」
 クラリスはいくらかとがった声で尋ねた。「ポールの容態はどうなの?」
「スキャン検査の結果は思わしくなかった。二人とも眠っていたんで、ぼくはしばらく枕元に座って考えごとをしていた」
 どんなことを? 彼が非情になれるのは知っている。クラリスはクッションにもたれ、アダムを見つめつづけた。彼はこちらに背を向けてワゴンのそばに立ちつくしている。
「あの子がいなくなったら、寂しくなるだろうな」アダムが独り言のようにつぶやいた。
「ネイサンのこと?」クラリスの声にはまだいくらか怒りがこもっていた。
「ああ。祖父母は快方に向かっている。あと数週間で退院するはずだ」
「そうしたら、孫を連れていくのね?」
「たぶん。きみも寂しくなるだろうね」
「ええ。すっかりあの子に心を奪われてしまったもの」アダムにはそうであってほしくない。冷たく無慈悲でいてほしい。クラリスは平静を装い、言い添えた。「本当にチャーミングな赤ちゃんよね」愛らしく、かわいくて、そばにいるだけで心をなごませてくれる。ふいに熱い塊が喉をふさいだ。
「すべてがふだんの状態に戻ったら、訪ねていけるさ」アダムは関心なさそうに言う。「木曜日の重役会議用の報告書は作成してくれたかい?」
「デスクの上に置いてあるわ」
「ありがとう」ようやくこちらを向いたアダムが静かな声で言った。「アラベラのような女性には頼れる人間が必要なんだ。支えなしに彼女をこの世の荒波にもませるのは、それこそ酷というものだ。きみはそう思っているようだが、ぼくは冷酷な男ではない。アラベラのことは好きだし、彼女はぼくを楽しませてくれる。それから、ぼくを批判するためにきみに給料を払っているわけではないからね」穏やかな口調だった。
「そのとおりよ。そろそろ寝たほうがよさそうね」クラリスはすばやくジントニックを飲みほして立ちあがった。彼のそばへ行き、ワゴンに空のグラスを置く。いきなり手首をつかまれ、クラリスは驚いて目を上げた。
 彼女の腫れあがった顔を、アダムがまじまじと見つめている。「なんとも……」口元をゆがめ、もっとよく見ようとテレビの明かりのほうへクラリスの顔を向けさせた。「目のまわりが痣になると言っただろう」アダムはほほ笑み、次いで今にも吹きだしそうな顔になった。「かわいそうに」完全にクラリスの虚を突き、彼はいきなり頭を傾けてキスをした。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。