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禁断の芽ばえ

禁断の芽ばえ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・クラシックス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・ハミルトン(Diana Hamilton)
 イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供をもうけた。就寝前の子供たちにベッドで読み聞かせるために物語を書きはじめる。ロマンス小説家としてのデビューは1987年、その後数多くの名作を世に送る。2009年5月、ファンや作家仲間に惜しまれつつ亡くなった。

解説

 華やかで美しく活発な姉ヘレンの陰で、いつも目立たず地味でおとなしい一方のベスは、常識的で、夫として理想的な幼なじみのトムと婚約した。二人の婚約披露パーティーが開かれた夜、相変わらず派手に着飾ったヘレンが、恋人を連れて現れた。強烈な魅力を発散するイタリア系の男性、ルーク・ヴァッカリだ。ルークはなぜか執拗に熱い視線でベスを追い続け、彼女は経験したことのないいらだちと激しい反発を感じる。すっかり調子を狂わされたベスを、ルークは無理やりダンスに誘った。熱いキスまで奪ったあと、彼は動揺するベスの耳元でささやいた―もっと自分らしく、思いどおりに生きるべきだ、と。そのときから、ベスの人生は何か奇妙に歯車が狂い始めた。

抄録

 ベスは怒りで顔を赤くした。平たくのばしたペストリーの生地の上にりんごを置き、ぎざぎざのナイフで手早く周囲の形を整えていった。「失礼な人ね。ヘレンに対してもこうなのかしら。だとしたら姉の気が知れないわ!」
「やけにつんけんしてるね」ヴァッカリは冷ややかに笑った。「まだぼくに対して敵意満々らしい」彼はベスに一歩近づいた。「恐怖心のほうはどうなったかな」さらに近寄り、ベスをテーブルに追いつめた。彼女の緑色の瞳が狼狽に揺れると、彼はふっと頬をゆるめた。「まだ怖がってるな。まあ、ゆうべのレッスンを繰り返す必要はないだろう」それから口調を和らげた。「ぼくはヘレンに対しては極めて礼儀正しいよ。彼女には火つけ役は必要ないからね。ただしきみには必要だ」
 ベスには彼が何を言いたいのかわからなかった。きっとからかっているに違いない。へたに返事をして彼を喜ばせるのはよそうと思った。
 それにしても、早くキッチンから出ていってほしい。こうして彼と同じ部屋に一緒にいるなんて、とても耐えられない。
 いったいなんだろう。彼へのこの激しい拒絶反応は。ベスはしだいに自制心を失っていった。彼の放つ強烈な刺激に我を忘れ、気がつくと粉まみれの拳を振り上げて、彼の胸を思いきり叩いていた。「放して! あなたなんて大嫌いよ!」ベスは激しく首を振って叫んだ。
「ふうん、そう」ヴァッカリは事もなげにベスの両手首をつかみ、テーブルの角に腰かけた。そして両膝を広げ、そのあいだにベスの体を引き寄せた。「どうだい、嬉しいかい?」
 嬉しいですって? こんな強引なことをされて嬉しいわけないでしょう! ベスが身をよじって逃れようとすると、彼はからかうように言った。
「こんな感じ、初めてなんだろう? いい加減に自分の気持に正直になったらどうだ? 周囲の人間がきみにどう期待しようが、そんなことは関係ないんだ。もっと自分らしくしてごらん」
「何を言ってるの?」ベスの声が震えた。「わたしに構わないで。あなたを招待したのはわたしじゃなくて、ヘレンよ。なのにどういうつもり? 何がお望みなの?」
「ぼくは自分がもらう資格のないものは望まない」彼は謎めいた言い方をして、両脚でベスの細くしなやかな体をはさみ込んだ。「もしぼくが礼儀知らずなら、相手に差し出される前に無理やり奪う」
 ベスは体がほてった。もう自分ではどうにもならない。どうしよう、こんなところへトムかヘレンが入ってきたら……。
 ベスは恐怖と罪悪感で胸が詰まり、口からすすり泣きがもれた。ヴァッカリは彼女の体をぐっと抱き寄せ、肩甲骨のあたりを両手でそっとなぞった。
「リラックスするんだ、ベス」彼の滑らかな声、指の感触、脚のたくましい筋肉。ベスはまるでロボットのように彼に従順になった。「きみにもっと目を開いてもらいたいだけだ。キッチンの床に押し倒すようなまねはしないよ。いいかい、人生は一度きりなんだ。ぼくは無駄なことが嫌いだ。だからきみの人生も無駄にしたくないんだ」
「わたしのことなんか何も知らないくせに」ベスは自分の声の弱々しさに驚いた。しかも彼の広い肩のぬくもりに、自分から頭をすり寄せている。不思議だわ。トムがそろそろ戻ってくるころなのに、ちっとも気にならない。
 ヴァッカリの力強い手に髪を優しく撫でられ、ベスは体の力がふっと抜けた。「きみのことは会う前から何もかもわかっていた。ヘレンの話を裏返しにしてね。美人で華やかな彼女は、妹のきみを存在しないも同然だと思っている。しかも誰もが同じ考えだと決めつけている。そうだろう?」
 ベスは何も答えられなかった。彼のせいで頭がぼうっとしている。興奮で目がかすんでいる。
「きみはスポイルされている」彼の声が催眠術のように響く。「きみには自分で思っている以上の力がある。なのに、今までそうではないと思い込まされてきた。トムは悪い男ではないだろうが、きみには向かない。きみは盤石で退屈な生活に甘んじるべき女性ではない。思いきって新しいものを見つけるんだ。生きることの情熱を存分に味わうんだ」
 ベスの中で強い感情のうねりが起こり、ヴァッカリのたくましい腕から素早く身を引いた。二人ともどうかしてるわ。彼はわけのわからないことをくどくどしゃべってるし、わたしはそれを真剣に聞いている。不愉快だわ。わたしのことをろくに知りもしない人に、なぜこんなことを言われるの!
「放して」ベスは怒って言った。だがヴァッカリは冷ややかに笑っている。ベスの顔から血の気が失せた。
「きみがそれを望んだんだ。ぼくに力ずくで向かってきたのは、力ずくで扱ってもらいたいからだ」その言葉でベスの顔に赤みが戻った。ヴァッカリはベスの体を引き戻して言った。「こうしてくれと望んだのはきみだ。きみは自分で求めたものを手に入れたんだ。文句を言うのは筋違いだよ」彼の目が、黒いまつげの奥できらりと光った。「それとも、まだ足りないのかな。もっと欲しいなら、何が欲しいのかはっきり言うんだな。自分の感じたことを素直に受け入れるべきだ」


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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