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放蕩者の求婚

放蕩者の求婚


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫ヒストリカル
価格:300pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ニコラ・コーニック(Nicola Cornick)
 イギリスのヨークシャー生まれ。詩人の祖父の影響を受け、幼いころ歴史小説を読みふけり、入学したロンドン大学でも歴史を専攻した。卒業後、いくつかの大学で管理者として働いたあと、本格的に執筆活動を始める。現在は、夫と二匹の猫と暮らしている。

解説

 貧しい家を支えるシーアは、見かねた幼なじみから求婚を受けることに。すると彼の従兄の侯爵ジャックが、いっそのこと僕の愛人にしてやろうと申し出た。

抄録

「これ以上お話しすることはなにもないと思いますわ、マーリン卿」シーアは冷ややかに言い、家政婦を呼ぶ呼び鈴の紐に手をかけた。「ごきげんよう」
 ジャックがシーアを止めた。「とんでもない」静かであざけるような口調だった。「ぼくにはまだいくつか話したいことがある。どうか座ってくれたまえ、ミス・ショー」
 ふたりは緊張した空気のなかで見つめ合い、やがてシーアがわざとらしく窓辺に向かった。彼の言うとおりになんてするものですか!
「あなたのお話がなんであれ、わたしがここに立っていても通じると思いますわ、マーリン卿」シーアは言った。「どうぞお話しください!」
 ジャックはぞんざいに肩をすくめた。「お好きなように、ミス・ショー。ぼくはきみのためを思って言っただけなのだから」
「さっさと用件を言って!」緊張のあまりいつもの礼儀正しさも忘れ、シーアはぴしゃりと言った。
 ジャックは落ち着き払っていた。「いいだろう。きみに提案したいことがある。バーティに二度と会わないと約束してくれたら、ぼくは喜んできみの損失を埋め合わせたいと思う」くたびれた応接室を見まわす。「次の求婚者を見つけるまでのあいだ、それでじゅうぶんしのげるだろう……」
 シーアは背筋を伸ばした。自分のことを癇癪持ちだと思ったことはなかったが、これまではマーリン侯爵から挑発されたことがなかったからかもしれない。
「わたしを買収しようとしているの、マーリン卿?」シーアの声は氷のように冷たかった。「そんなことでわたしの気持ちが変わると思うなんて、あなたは完全にわたしを誤解しているわ。わたしはなにがなんでもまたバーティに会うつもりでいるわよ。彼に謝るためだけだったとしてもね! 二十年以上前からのお友だちなんですもの」
「なんてことだ。思いちがいをしているのはきみのほうだな」怒り狂ったシーアの耳に、ジャックの声は退屈しているようにもおもしろがっているようにも聞こえた。「きみとバーティの結婚話が騎士道精神に、あるいは友情でもほかのなんでもいいが、そういうものに根ざしていると思いこんでいるふりをしていれば、きみの良心のとがめはやわらぐかもしれない。だが、ほんとうのところはあれは商取引で、ぼくがいまきみに提案していることと本質的にはまったく同じものなのさ」
 またぴりぴりした沈黙が落ちた。「わたしは買収されたりしません!」シーアは言った。「わたしがそう言うのだから、それでじゅうぶんなはずよ」
 ジャックが優雅に肩をすくめる。「確固たる信条を持った女性のことば、ということか?」ジャックの目には冷笑が浮かんでいた。「それを信じられたらと思うよ、ミス・ショー」
 ジャックはポケットから丸めた紙幣を取り出し、それを広げて無頓着に炉棚に置き、柱状に重ねたギニー金貨で押さえた。シーアは呆然と見つめた。こんなにたくさんのお金……。学校教師が一生かかっても稼げない金額だ。六人家族が快適に何年も暮らせる額……。
「いいかい、ミス・ショー……」ジャックの声はとてもやわらかだった。「信条なんて愚か者のためのものなのさ! 受け取れよ。きみのものだ……」
 シーアは炉棚の金を荒々しく手で払った。ギニー金貨が床に落ち、家具の下に入りこんだ。一枚の金貨がシーアの父のものだったとても醜い彫像にあたり、鼻を欠いてからはね返った。
 ジャックは紙幣を拾ってたたみ、ポケットにしまうとにやりと笑った。「断られたのかな?」
 シーアは震えていたが、なんとか落ち着いた声が出せた。「鋭い洞察力をお持ちね!」
 ジャックはおもしろがっていた。「たしかに信条を持った女性だ! ぼくの父にきみへの手切れ金を節約させたいのなら、ぼくは反対などしないよ!」ジャックが一歩シーアに近づいた。「だがね、この先スキャンダルを種に金の無心に来るのは許さないからな!」
 シーアはジャックを平手打ちしてやりたかったが、なんとか意志の力をふりしぼって冷淡に見下す態度をとった。追いつめられた猫のような凶暴さをこめて彼をにらみつける。「そんなことをするつもりは毛頭ありません! あなたはそういう行動様式がお好きかもしれないけれど――」
 ジャックの目が突然いたずらっぽくきらめいた。猛獣のような目の輝きにおそれをなし、シーアは思わずあとずさった。
「きみが話題にしたから言うが、ぼくの好きな行動様式はこれだよ、ミス・ショー」
 ジャックがシーアにしっかりと腕をまわし、彼女がそれと気づく前に唇が重なっていた。とっさにわき起こった怒りは、温かいジャックの唇が押しつけられた瞬間に消えてしまった。シーアは無言の命令に本能的に従って唇を開いた。舌と舌が触れ合うと、シーアの体のなかを誘惑の炎が駆け抜け、激しい欲望で息もたえだえになった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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