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子爵と偽りのシンデレラ

子爵と偽りのシンデレラ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ルイーズ・アレン(Louise Allen)
 物心ついたときから歴史に深い興味を抱いていて、八歳のときには三ページの歴史小説を書いた。地理と考古学の学位を持ち、特定の風景や場所から、小説を書くインスピレーションを得ることが多いという。とくにヴェネチアやブルゴーニュ、ギリシアの島々からはこれまでに多くのアイデアが生まれた。作品のモデルにもなる最愛の夫とベッドフォードシャーに在住している。

解説

 お情けで子爵夫人となった私に、彼の愛を求める資格はない。

 ロンドン郊外の小さな村の牧師館に父と暮らすベラは、妹たちのような幸せな結婚を夢見つつも父を見捨てることができず、ひたすら忍従の日々を送っている。ある日、ベラは保養に来た美しい子爵に見そめられ、甘い一夜を過ごしてしまう。だが幸せも束の間、彼は去っていった。ただの遊びだと言い捨てて。ほどなく妊娠に気づいたベラは、意を決して子爵の邸宅を訪ねた。私はどうでもいい。でも、お腹の子には相応の暮らしをさせてやりたい。ところが、案内された書斎でベラは驚愕の事実を知らされる。不実な子爵は亡くなり、弟のエリオットが地位を継承していたのだ! 絶望するベラにエリオットは提案した――子供のためだけの結婚を。

 ■ひと味違うリージェンシーで人気のルイーズ・アレンが描く、厳格な牧師の家に生まれた3姉妹のロマンス。次女メグが主人公を務めた『家政婦の切ない契約』に続き、長女ベラの物語をお届けします。思いがけず子爵夫人となった彼女に真の幸福は訪れるのでしょうか。

抄録

「アラベラ?」エリオットが手を差し出した。「どうやら僕は、驚くほど怠慢な花婿らしい」
 軽く受け答えをしようとしたが、何も言葉が出てこない。怯えたウサギのように、部屋から飛び出すこともできなかった。「主教様にお会いして、緊張していたからじゃないかしら」アラベラも立ち上がり、エリオットの案内で庭へ出るドアに向かった。
「もちろんだ。そのせいで少しまじめになってしまったに違いない」彼の目は笑っていたが、表情は硬いままだった。
 つまり、彼にはユーモアのセンスがあるのね。軽い冗談が通じてベラはほっとしていた。その喜びは、テラスに出るまで消えることはなかった。
 エリオットに手を握られたまま、ベラは振り向いた。爪先と爪先が触れ合いそうなほど近いところに彼がいる。薄暗い光の中で見た彼があまりにもレイフに似ていたので、ベラは寒気がして思わず半歩下がってしまった。
「アラベラ?」
 その深い声は間違いなくエリオットだ。レイフのはずがないわ。この人は優しくて、高潔な人なのだから、気が進まないようなところを見せてはいけない。ベラはためしに彼の上着の襟の折り返しに手を触れてみた。それ以上の行為は必要なかった。彼はベラの右手を握ったまま彼女を抱き寄せ、左手で肩を抱いた。体中でエリオットの熱を感じ、彼の顔が見えるよう、頭を後ろへ下げた。影の中では驚くほどなじみのある顔だが、やはり微妙に違う。
「どうかしたの?」エリオットがじっとしているので、ベラは尋ねた。いったいどうするつもりなの?
「君の顔を観察している」まただ。深刻な口調だけれど、どこか面白がっている。
「暗闇の中で?」きっと私が不器量すぎて、日の光の中では長いこと見ていられないのだろう。
「君の顔の形と目の輝き、それに君が困っているときに頭を一方からもう一方へ傾けるさまはわかる。君が髪をすすぐのに使っているローズマリーのにおいも」ベラの背中に当てられた手がいつの間にかうなじに置かれていた。一本の指がそっとうなじを撫でている。まるでむき出しの胸に触られているような親密さを覚え、どういうわけか体が反応して熱を帯び始めた。下腹部がこわばり、息が詰まるのを感じ、ベラは身を震わせた。
 自分の反応に驚いたベラが小さな声をあげたそのとき、エリオットが首を曲げて彼女の唇を奪い、その隙間にそっと舌を差し込んできた。うなじに置かれた手のせいで身動きできないでいると、彼の口が彼女の口をむさぼり始めた。親密な侵入は官能的で、決して無理強いするものではなかった。それでも、優しさの後ろに隠された要求を感じ、彼が本当の意味での結婚を主張したときのことが思い出された。
 ベラもキスを返した。そっと探るように彼の舌に触れる。自分のキスが下手なことはわかっていた。きっとすぐに彼は怒り出すわ。けれどもエリオットは不愉快に思うどころか、彼女をさらに引き寄せ、重ねた唇をそっとこすり合わせた。ベラはやがて、その感触とにおい、そして彼が発する熱にすっかり引き込まれていた。不思議なことに、彼は自分だけでなく、彼女をも悦ばそうとしてくれているように感じた。
 彼が頭をあげて口を離した。気がつくと、ベラは彼の襟をしっかりと握り締め、爪先立ちしていた。自分の唇に彼が届きやすいようにしていたのだ。ベラは頬を赤らめて襟を放し、後ろへ下がった。「私ったら……」私はなんてことをしてしまったの? 愛してもいない男性とキスをして悦びを感じるなんて。体を震わせながら考えた。やっぱり父の言うとおりだったのかしら、これがふしだらだということ? でも、欲しいのはエリオットのキスだけよ。それ以外は考えただけで怖くなる。
「僕はたぶん、考えるのをやめてしまったんだと思う」エリオットが言った。息を切らしているような、面白がっているような口調だ。「君を中へ連れていかないと。さすがに、あの大おばでも腹を立てるかもしれない」部屋の明かりがもれているところへ行くと、彼がベラを見下ろした。「また君の顔を赤くさせてしまったね。そのほうが、あの堕落者の大おばは喜ぶだろうが」
「え? あの方が堕落者?」ベラは家に入る前に赤らんだ頬を元どおりにしようとしてあえて尋ねた。ひどく戸惑っていた。
「若かりし頃は、ものすごく遊んでいたそうだ」エリオットが笑いながら言った。「恋人を次から次へと替えていたのだとか。母の話が正しければ、だけどね。大おばは今よりもっと活気のあった時代の人物さ。今でも筋骨たくましい従僕には目がない」
 ベラは微笑みながら客間へと戻った。あの恐ろしい老婦人を違った目でじっくりと見てみたいという楽しみができた。おかげで、客間に戻ることの億劫さも、エリオットの別れ際の頬へのキスも乗り越えられた。けれども、ふと我に返って気づいた。自分が二人の女性たちと共に残されたこと、そして明日の今頃は、厳格な行動規範に基づいているという理由だけで彼女と結婚しようとする、ほとんど知らない男性と夫婦になっているのだということを。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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