マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン文庫

情熱のフーガ

情熱のフーガ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆2
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


著者プロフィール

 ダイアナ・ハミルトン(Diana Hamilton)
 イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供をもうけた。就寝前の子供たちにベッドで読み聞かせるために物語を書きはじめる。ロマンス小説家としてのデビューは1987年、その後数多くの名作を世に送る。2009年5月、ファンや作家仲間に惜しまれつつ亡くなった。

解説

 3年前、休暇でアンダルシアを訪れた21歳のキャシーは、ハンサムな大富豪ロマン・フェルナンデスに見初められた。だが夢のような求婚のあとに待っていたのは、悪夢の結婚生活。“名家にふさわしくない”と使用人にまで蔑まれ、頼みの綱の夫もほとんど屋敷におらず、その隣には他の女性が。ついに耐えきれなくなり、キャシーはイギリスに逃げ帰ったのだ。だがあれから1年、弟がロマンの金を横領したことが発覚した――告訴はしないでと懇願するキャシーに、ロマンは条件を出した。君が3カ月ぼくとベッドをともにするなら考えてもいい、と。

抄録

「ぼくが家まで運んでもいいけど、歩いたほうが酔いがさめると思うよ」
「酔ってなんかいないわ!」
「じゃ、ほろ酔いかな?」ロマンはにこりともせず、形のいい唇を真一文字に結んだ。
 キャシーはその唇に唇を重ねたくなった。ロマンの唇を和らげ、今夜、二人を待ち受けていることを彼に思い出してほしくなった。二人のために。
「ちょっとだけね」キャシーは尊大な声を出そうとしたが、無残に失敗した。だが、本当はどうでもよかった。ロマンにいら立ち、身構えているのがばからしくなった。港町の旧市街、バリオアルトの小さなレストランで過ごしたひとときは、初めから終わりまですばらしかった。ワインを飲みすぎたのは、今夜これから起きることにあまり不安を感じないように、自分の感覚を鈍らせたかったからだ。
 だが、差し出されたロマンの腕を取ったとき、キャシーはじわじわと体にまわってきたアルコールに欲望をかき立てられていることに気づいた。みだらに振る舞いたくてたまらず、彼に身を投げ出し、わたしを抱いてと懇願したいほどだ。そして、二度と彼の前で体が凍りつかないことを心から願った。
 もっとも、今はまったく凍りついていない。旧市街の狭い通りを二人でゆっくり歩きながら、キャシーはそれに気づいた。そよ吹く風は温かく、海と川とオレンジのにおいがする。オレンジの木はいたるところに植わっているようだ。
 キャシーはこの場になじんでいた。しっくりなじんで、とても幸せな気分だった。ここにロマンといることが、ワインよりずっと彼女を酔わせた。
「スペインのこういうところがどれほど人をリラックスさせてくれるか忘れていたわ」キャシーはため息まじりに言い、がっしりしたロマンの肩につややかな栗色の頭をもたせかけた。
「アンダルシアが? それとも、ワインのボトルをほとんど空けたことが?」ロマンはそっけなく言い、キャシーのウエストに腕をまわして体を支えた。「もうすぐうちに着くよ」
 うち。ああ、なんてすてきな響きなの! すてきすぎて嘘みたい。キャシーの目は涙でうるんだ。結婚生活をここで送ってさえいれば、今ごろは……。
「あっ!」キャシーは出っ張っていた歩道の玉石につまずき、転びそうになった。ロマンは罵りの言葉を吐いて彼女を素早く抱き上げ、そう遠くない石造りの門まで歩いた。「ハネムーンのときは、わたしを抱いて敷居をまたがなかったのに」キャシーはろれつのまわらない口調で言い、自分でもおかしくて、くすくす笑った。
 これも、必ずしもアルコールのせいではない。ロマンの腕に抱かれているからだ。たくましい男性的な体に自分の体をあずけ、首にしがみつき、くっつきそうなほど顔を近づけている。キスできるくらいに……。
「忘れたのかい? あのときはみんながぼくたちを見守ってたんだよ」ロマンは、聞き分けのない子供の機嫌をとるように軽い口調で言った。「きみはとても内気だったから、ばつの悪い思いをさせたくなかった。きみはちょっとしたことでも顔を真っ赤にして、物陰に逃げ込んでいたからね」
 確かにロマンの言うとおり、三年前のわたしは情けないほど引っ込み思案だった。キャシーはそう思い、快活に答えた。「覚えてるわ。あのときは、だんなさまの花嫁を品定めしようと使用人たちが全員集まって、わたしのことをじろじろ見ながら、めちゃめちゃに酷評してたもの!」
 ロマンの全身が緊張し、キャシーを抱いている腕が鋼鉄の棒のように硬くなった。それを感じたキャシーは、さらにきつく彼の首にかじりついた。そうよ、過去がなんだっていうの? 今、わたしたちは二人きりなのよ。それが大事だわ。“あの新妻は、だんなさまにはちっともふさわしくない”と陰で言っていた古株の使用人たちもここにはいないのよ。もちろん、そんなことはもう問題じゃないけど。
 キャシーは突然、解放感を覚えた。一人前の女性として、どんな人にもどんなことにも立ち向かえる気がした。特に、ベッドの中でロマンを失望させることも怖くなくなった。知らないことは彼に教わればいいのよ。わたしは進んで学ぶ生徒になるわ!
「きみは妙なことを考えるんだな」ロマンはほの暗い明かりがともる涼しい玄関ホールを大股で進んだ。「もっとも、ぼくはきみの考えてることを知る栄誉を与えられたことは一度もないけど」
 あなたが尋ねなかったから? それとも、わたしがあなたに話さなかったから? コミュニケーションが不足していたのは両方の責任じゃないかしら? キャシーはそう自分に問いかけたが、答えられる状態ではなかった。全身の感覚が目覚め、頭が空っぽだった。体の中を血が駆けめぐり、肌が燃えるように熱い。予想に反してロマンは彼女を腕に抱いたまま、まるで子猫を抱えているように軽々と階段を上り始めた。
 今夜は何も問題ないわ。今夜わたしは、すんなりロマンを受け入れることができる。そんなことは、今まで夢にも思わなかったけれど。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。