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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル

伯爵夫人の出自

伯爵夫人の出自


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ニコラ・コーニック(Nicola Cornick)
 イギリスのヨークシャー生まれ。詩人の祖父の影響を受け、幼いころから歴史小説を読みふけり、入学したロンドン大学でも歴史を専攻した。卒業後、いくつかの大学で管理者として働いたあと、本格的に執筆活動を始める。現在は、夫と二匹の猫と暮らしている。

解説

 余興のために結婚式に呼ばれた煙突掃除人の娘ジェマイマは、式場で居合わせた伯爵に幸せを運ぶキスを求められ、思わず胸がときめいた。数日後、驚いたことに彼が家に訪ねてきて便宜上の結婚をしてはもらえないかと申し出る。聞けば、亡父の遺言で、花嫁を迎えなければ遺産を手にすることができないという。「結婚しても、きみはきみ、ぼくはぼくで暮らそう」すてきな申し出だわ。もう煤(すす)だらけの生活をしなくてもすむ。ジェマイマはにっこり笑って承諾したのだが……。
 ★一作ごとに大物感が増してきたニコラの最新刊をお届けします。今回のヒロインはなんと煙突掃除人の娘、ジェマイマ。結婚式に煙突掃除人とキスをすると幸せになれる――その言い伝えをヒントに、作者は寓話性の高い物語を書きあげました。さて、その結末は?★

抄録

 ロブは指に力をこめた。「きみのことはなんでも見ているよ、ジェマイマ」手を伸ばし、彼女の頬にそっと触れた。「ぬれた髪にどんなウエーブがかかるかも、怒ると眉間《みけん》に小さなしわが寄ることも」彼はジェマイマの頬をなでた。「そして、キスの前には目の色が濃くなることも」ロブは体をいっそう近づけた。「深い青になって、まつげを震わせ――」
「やめて!」ジェマイマは叫び、彼を押しのけようとして裸の肩に手をついた。肌のぬくもりに触れ、思わずたくましい肩に指をはわせた。はっとして指を止めると、ロブが笑った。
「もう少しできみを誘惑できたのにな」彼の目に強い光がある。からかいと欲望の光が。
 ジェマイマは開いた窓を背にしてできるだけ彼から離れた。動揺していたが、引き下がるわけにはいかない。言うだけのことを言うまでは。
「あなたはデラバルに一所懸命で、わたしのことはそっちのけ。この土地はまるできびしい監督みたいね」彼女は小首をかしげ、じっとロブを見た。「それともわがままな愛人かしら」
 彼はうっすら笑みを浮かべた。「確かに、ここのところ、領地に少々気をとられ――」
「少々?」
 ロブは照れ笑いした。「大いにかな?」
「ほかへまったく目がいかないくらいにね」
「遅れを取り戻したいのだ」
「それはわかるわ。でもあなたは夕食を六回食べそこねているし、いつ寝室に上がったのかわからないほど遅く帰った日が五回、早朝に出かけたきり一日じゅう姿を見かけないことも何度かあったわ」
 彼女は言葉を切った。ロブの表情にとまどったからだ。「それこそ妻の観察力だな。少しはぼくに関心があるということか?」
「わたし」ジェマイマは唇をかんだ。へたに返事をしたらつけこまれ、ほかのことまで認めさせられてしまうかもしれない。それに、彼に関心があるのは事実だ。デラバルに没頭する彼に腹がたつのはそのせいだということに気づかないとしたらどうかしている。「わたしは、あなたの疲れきった姿を見たくないの」彼女はあいまいな言い方をした。「体によくないわ」
「気遣ってくれるのはうれしい」ロブはかがんで彼女の頬にキスをした。「ぼくが長い時間働くもうひとつの理由を知りたくないか、ジェマイマ?」
 彼女は心臓がどきどきした。まだ剃《そ》っていないロブのひげが頬に触れ、あわてて飛びのいた。
「わざときみを避けているんだよ」ロブは静かに言った。「きみのこと以外はほとんど考えられない。塀を建てるときも、牛の乳をしぼるときも、発芽を早める保温箱を買うかどうかジェフソンと検討しているときも」
 ジェマイマの怒りが和らいだ。彼女は軽い笑みを浮かべた。「とてもロマンティックだわ、ロブ。続けて」
 ロブは彼女の髪に指をはわせた。「笑われるかもしれないが、ジェマイマ、きみは自分の危うさに気づいていない。ぼくは毎日外で精いっぱい働けば、疲れてほかのことを考える余裕はなくなると思ったのだ」彼は突然立ち上がった。「だが、逆だった。肉体労働で気持ちはますます……」
「激しくなった?」
「みだらに、ふしだらに、本能のままにね」ロブは彼女を見つめた。
「あなたって、軽薄で、軽率で、情熱的ね」ジェマイマは甘い声で言った。微笑まずにはいられない。「ああ、ロブ」
「笑いごとではない」ロブはむすっとして言った。
「そうね」ジェマイマは窓際の椅子から立ち上がった。彼のそばに行き、たくましい胸に両手を当てた。「でも、話をするくらいはできたでしょう」
「無理だ。話せばよけいにつらくなる。きみのことばかり考え、キスをしたくなる。キスの先もだ。さっきも言ったが、きみは自分の危うさに気づいていないのだ」
「だって、あなたが気持ちを聞かせてくれないから、きらいで避けているのかと思ったのよ。あなたにとってはデラバルがすべてで、ほかには関心がないのかと」
 ロブはにやりとした。「きみにはもっと深い関心を持てるだろう」
 ジェマイマはあわててあとずさった。「無理なことはわかっているくせに」
「ぼくがその気になったら拒むかい? この前はいやがったね。愛は罠《わな》だというきみの考えは忘れていないよ」
「わからないわ」ジェマイマは赤くなった。「あなたのことをずっと考えているのは事実だけれど」
 ロブは喜びをあらわにした。「わが愛する妻」
「でも」ジェマイマは言い張った。「まだ五十四日残っているのが気になるわ」
 ロブは手を伸ばして彼女を引き寄せた。キスはしなかったが、しっかりと抱き締めた。ジェマイマは夢見心地になると同時に不安にかられた。彼の肌は冷たく、白檀《びゃくだん》の香りがする。この胸に顔を埋《うず》めて味わいたい。うっすらにじむ汗と、ひんやりした肌の感触を。
 彼女はほてった顔を見られないようにして言った。「夫といっしょに過ごしたいと望むのは平民だけかしら?」
「上流社会ではないことだな」ロブは笑いを含んだ声で言った。「妻にたまらなくキスをしたいと思うのもね。ぼくたちはかなりの不良かもしれないぞ」
 ジェマイマは彼の唇に指を当てた。「待って。キスはいけないわ」
 ロブはうめいた。「ああ、ジェマイマ、お願いだ」
「だめ。ここはあなたの寝室で……」
「そうだ」ロブの声にはとげがあった。「それがどうした」
「とても危険だわ」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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