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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・スペシャル・エディション

女神の贈り物 ペルセウス

女神の贈り物 ペルセウス


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・スペシャル・エディションペルセウス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 リンゼイ・マッケンナ(Lindsay McKenna)
 アリゾナ州在住。アメリカ海軍に三年間所属し、気象官として国のために働いた。作品には、その時の経験で得た知識が生かされている。さらに、作品ごとに国防総省や軍事基地を訪ねて、取材を行っているという。彼女はまた航空機も操縦する。結婚して二十年以上、彼女も夫も山歩きが好きで、岩石の採集も楽しんでいる。

解説

 今回の旅は、アリアナにとって初めての冒険だった。これまでずっと支配的な父の言うとおりに生きてきたけれど、いま初めて父にそむき、夢を―母の夢を実現させるのだ。八歳のときに死別した母は、アマゾンを旅して蘭を収集し、それを絵に描いて、本として出版したいと願っていた……。母のように上手には描けないかも。でも、やってみなくては。
 興奮と不安を覚えながらブラジルの空港におりたつと、アリアナはハンサムで逞しい男性の出迎えを受けた。父の手配した現地ガイド、レイフ・アントニオだ。いきなり手に口づけされ、顔を赤らめて恥じらった瞬間、レイフの目が険しく光る。いったいどうして? アリアナは狼狽した。甘やかされて育った愚かな娘だと嫌われてしまったの。

抄録

 レイフはこわばった笑みをアリに向けた。「セニョリータ、ぼくはレイフ・アントニオ。なにも謝る必要はないよ。それに、ほら、誰も気になどしてない。だから、ぜんぜん……」
 アリの目には、傷ついた動物のような、あるいはなにかとても悪いことをした子供のような、痛々しい表情が浮かんでいた。なぜだろう、とレイフは不思議に思った。愛らしい卵形の顔が赤く染まっている。そしてこの唇……。彼はあわてて彼女の口もとから注意をそらした。アリの唇は、朝日を受けて花開きつつある美しいばらを連想させた。たとえ彼女が、甘やかされて育った金持の娘だとしても、信じられないほど美人であるのは否定しようがない。広い額に、澄みきったブルーの目。アリがバランスをとろうと身動きしたとき、豊かなブロンドの髪がアマゾン川の水面にたつさざ波のように揺れた。
 レイフの強烈な視線に耐えられなくて、アリは目をそらした。まっすぐ立ちあがると、彼から離れようと一歩あとずさりする。レイフは片方の腕は放したものの、また倒れるのを気づかってか、もう一方の腕はつかんでいた。
「もう大丈夫よ……本当に、わたしったら……」そこまで言って、アリはくどくど弁解しようとしている自分に気づいた。「ごめんなさい。わたしはアリアナ・ワージントンです、ミスター・アントニオ……」手をさしだす。「あの、スペイン語のほうがいいかしら? なんとか話せますので」
 レイフはさしだされた手をとると、からだをかがめて、手の甲にキスをした。「どうぞよろしく、セニョリータ・ワージントン。それと、ありがたい申し出だが、英語にしよう。なかなか英語を使う機会がないものでね」
 アリはぞくぞくする興奮を覚えた。アリの手と比べると巨大といってもいいくらい大きな手が、彼女の指をそっと握る。まるで繊細な磁器を扱うように。力強い唇が手の甲に押しあてられたときは、ショックが腕を伝いのぼり、心臓が激しく打ち始めた。手にキスをされたのなんて初めてだわ! そうよ、ここはブラジルなのだ。風習だって違う。それを肝に銘じておかなければ。レイフが顔をあげたとき、その目は険しかった。わたしに不満でもあるのかしら? きっとそうに違いない。そう思うと、アリの心は沈んだ。父もそうだった。なにをやっても父を喜ばせることはできなかった。レイフも父のような人間なのだろうか?
「まあ……そういうことでしたら。ありがとう、セニョール・アントニオ」
 アリは急いで手を引っこめた。キスされたところが甘くうずいている。自信をみなぎらせた、力あふれる男性を前にして、彼女は自分がとるに足らない愚かな人間に思え、狼狽せずにはいられなかった。
「ぼくのことはレイフと呼んでくれ」
 レイフはハンドバッグをアリに手渡し、荷物を持ちあげた。彼女を好きになりたくはなかった。アリはいかにも純真そうに見える。それとも単なる見せかけにすぎないのだろうか? もしかしたらそれは、かつてのフィアンセ、ジュスチーネがよくつかった、女性が得意とする手練手管のひとつではないのか?ジュスチーネも、表面的には無邪気で頼りなさそうな態度を装っていた。ちょうどこのアリアナ・ワージントンと同じように。ジュスチーネはぼくをやすやすと手玉にとった。ぼくはジュスチーネの言いなりになって、ジャングルを離れ、マナウスで公務員の職につくことに同意したのだった。それがある晩、彼女の仮面がはがれた。そこにいたのは、恋におちた相手とは似ても似つかない女性だった。それ以来、ぼくは女性に対して用心深くなったのだ。
 レイフは険しい視線をアリに注いだ。ここにいるのは、変装したジュスチーネではないのか? 彼女がジュスチーネのような女性なら、一緒に六カ月も過ごすのはごめんこうむりたい。
 アリはレイフに導かれて前へ進んでいった。彼が歩いていくにつれて、不思議なことに、まるで海が割れるように人波が割れる。人々はレイフを見あげ、彼が汗と埃まみれの服を着ているにもかかわらず、あたかも王侯貴族に対するような尊敬のまなざしを向けて道を譲るのだ。彼女には人々の気持が手にとるようにわかった。そして、またもやぞくぞくする興奮を覚えた。誇り高くそらした顎、広くてたくましい肩、そして堂々とした足どり。アリは、自分も彼のように堂々とふるまえればいいのにと願った。
「わたしのことはアリと呼んでちょうだい」アリはレイフに追いつこうと急ぎながら、息をはずませて言った。
 すぐにレイフは歩く速度をゆるめた。自分より背の低いアリがついてくるには速すぎることに、ようやく気づいたのだ。彼女を見おろすと、その頬がピンクに染まっていた。不安そうな表情も浮かんでいる。アリは二度つまずいて転びそうになり、その都度彼が腕をつかんで支えてやった。
「ありがとう」アリは恥ずかしそうに小声で言った。「わたしったら、いつもへまばかりして……」


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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