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仮面の奥の情熱

仮面の奥の情熱


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ロビン・ドナルド(Robyn Donald)
 ニュージーランド北部の牧場主の家に、一男五女の長女として生まれた。十五歳で師範学校に学び、十九歳で結婚、同時に小学校の教師となる。子育てを終えて一時休んでいた教職に戻り、かたわら執筆を始めた。蘭の花が咲き、キウイやオレンジの実る美しい北部の村に住む。

解説

 精いっぱい真面目に生きている彼女に、男を手玉にとる女だという噂が立てられ……。

 ■ニュージーランドの小さな町で暮らすナタリアは、莫大な借金を遺して死んだ父のあとを継いで農場を営んでいる。セクシーな容貌ゆえ、男関係が派手だと誤解されがちだが、実際は幸せな結婚生活を夢見る堅実な女性だ。ある日、ナタリアは友人に誘われてしぶしぶ仮面舞踏会に赴き、会場で、隣の農場を買った大富豪のクレイと出会った。クレイはナタリアに惹かれ、彼女に対する思いを率直に口にする。そして彼女の生活に、なにかと口実を作って入りこんできた。だが、かつて隣人だった男にだまされたことのあるナタリアは、クレイも自分の体が目的なのではないかと心を許せない。世間の噂を真に受け、お金で私を愛人にしようとしているのでは? そんな思いとクレイの魅力のあいだで、ナタリアの心は激しく揺れた。

抄録

 バックミラーに映る下を向けたライトを見て、ナタリアは不安になった。ザナドゥーの門が見えてきたので方向指示器をつけ、私道に車を乗り入れた。門を開けたままにしておいてよかった。
 前方に光る水たまりに、背後の車のライトが小さな月のように映っている。ナタリアは車庫代わりにしている大きな納屋の前で車を止めた。
 背後の車も止まった。自分でもばかなことをしているとわかっていたが、ナタリアはトラックのドアをロックし、いつでもクラクションを鳴らせるよう身構えた。背後の車からクレイが降りるのが見える。
 ナタリアはほっと肩の力を抜き、ゆるんだ口元から息を吐きだした。彼女はすぐにロックを解除してドアを開けた。「どうしてあとをつけてきたの?」いつになくこみあげた激しい怒りを抑えて、静かにきく。
「そうしたかったからさ」クレイはトラックを降りる彼女に手を貸した。
 ウエストに食いこむ手を意識しながら、ナタリアは彼の肩をつかんで体を支えた。
 クレイはナタリアを地面に立たせ、彼女から手を離した。「ぼくも一緒になかに入るよ」
「うれしいけど、家のなかまで送っていただく必要はないわ」
「ぼくを制止できるかな」
 もうこんなことはおしまいにしなければ。ナタリアは心を決め、静かに言った。「クレイ、わたしたちが軽く戯れたことで、今夜ベッドをともにする機会があるんじゃないかと期待を持たせてしまったのなら、ごめんなさい。でもわたしは、ひと晩だけの関係を楽しむような女じゃないのよ」
「きみの言う“軽い戯れ”とは、適度な興奮を伴う楽しい前奏曲だ。きみの率直さに応えて言わせてもらうが、ぼくもきみとひと晩だけの関係を楽しむつもりはない。ぼくはきみを求めているし、きみもぼくを求めているのは間違いない」
「どうしてわかるの?」あからさまな言葉に、ナタリアの胃のあたりがざわついた。
 厚い雲を通して月が顔を出し、クレイの力強く鋭角的な顔が浮かびあがった。彼の唇に笑みが浮かんでいる。彼はナタリアの手首を握って引き寄せ、顔を傾けた。
 重なった唇の温かさとその激しさのとりこになり、ナタリアは息が止まりそうなほどの激しい欲求を覚えた。ところが彼女の唇がゆるみ、かすかに開いて降伏を示すと、クレイは体を起こした。
「わかっただろう」彼は抑揚のない声で言った。
 恥辱がナタリアの情熱を洗い流した。彼女は背筋を伸ばし、決意を新たにした。「わたしはあなたとおつきあいするつもりはありませんから」
 荒れ模様の空を背に、クレイの頭が動いた。興奮と恐怖がナタリアのなかでせめぎあう。もう一度キスしてもらいたい、という自分の思いが怖かった。こんな気持ちになったのは初めてだ。クレイがキスしてくれないと、これまでの人生が根底から崩れてしまいそうだ。
 おびえた兎のようにクレイを見つめているうちに、ナタリアは小刻みに震えだした。
「まったく、こんな寒いところでぼくたちは何をしているんだろう。なかに入ろう。今にも雨が降りだしそうだ」
 ナタリアはありったけの威厳をこめてクレイに背を向け、歩きだした。
 玄関に着くと、彼女は鍵をとりだし、クレイに向き直った。「家の前まで送ってくださってどうも」
「きみが家のなかを調べているあいだ、ぼくはここで待っているよ」
 クレイが自分で調べると言いださなくて喜ぶべきなんだわ。ナタリアはドアの内側にあるスイッチを押して明かりをつけ、短い廊下を進んだ。
 しばらくして彼女が戻ったとき、クレイは戸口に立ってナタリアの小さな領土を眺めていた。静かに近づいたつもりが、彼女の気配を察したのかクレイがさっと振り向いた。
 ナタリアは目をみはった。クレイは彼女と同様、仮面をはずしていた。神秘的な妖しさはうせたものの、彼の本質的な美をつくりだしているダイナミックで力強い骨格がはっきりとわかる。ナタリアは両手を体のわきに押しつけ、彼の右眉の下から顎まで達する薄い傷跡に触れたいという誘惑と必死に闘った。
「がっかりされるかと思った」クレイは磁力を秘めた目でナタリアの顔を探っている。
 ナタリアはうっとりとしたまなざしをまっすぐクレイに向け、口元に無理やり皮肉っぽい笑みを浮かべた。「あなたも仮面をつけていないわたしがお気に召したかしら?」
「きみはかわいい魔女だ。ぼくたちが仮面をすべてはずすには、時間がかかるだろう。しかしその日は必ず来る。それまではきみもぼくと同様、よく眠れないだろうね」
 クレイはきびすを返して立ち去った。ナタリアはからからになった喉をごくりとさせ、彼を見送った。なんて理想的な体形だろう。逆三角形の上半身、筋肉質の長い脚、獲物を求めて歩きまわる豹にも似たしなやかでゆったりした歩き方。門のところでクレイは振り向き、手を振った。

 ‘ねずもどき’とエニシダのあいだをのっそりと歩いているヘレフォード種の雄牛を大声で追い払いながら、ナタリアは顔にかかる黒髪をかきあげた。
「今度うちの土地に入ったら、おまえを殺して犬の餌にしてしまうわよ」彼女は色あせたTシャツの袖で額をぬぐった。
「柵をきちんと修理しておいたら、牛も迷いこんだりはしない」


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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