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異国のドクター

異国のドクター


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャサリン・スペンサー(Catherine Spencer)
 三十数年前にイギリスからカナダのバンクーバーに移り住む。英語の教師からロマンス作家に転身。カナダ人の男性と結婚し子供にも恵まれ、現在は孫もいる。あいた時間があれば、ピアノを弾いたり、アンティークショップをのぞいたり、庭の手入れをしたりしている。

解説

 父が事故に遭い、意識不明の重体――突然の知らせを受け、ダニエルは父のいるイタリアへ向かった。決して仲のいい父娘とは言えず、息子を望んでいた父が、愛情を向けてくれたためしはない。でも母を亡くした今、たったひとりの肉親なのだ。ダニエルは我が身も顧みず、不眠不休で病床につき添った。そんな彼女を優しく支えてくれたのは、父の主治医カルロ。ときに独善的だけど、イタリア一の腕を持つ魅力的なドクターだ。ダニエルは、日増しに強くなるカルロへの好意を抑えようとした。彼の心に自分が入る隙間などないと、知っていたから。

抄録

「たくさんボーイフレンドがいたのかい?」カルロは口の端を曲げてほほえんだ。「君みたいな女の子は、言い寄ってくる男の子たちを棒切れで撃退していたんだろうね」
 ダニエルは顔をしかめ、片手で脇腹《わきばら》を押さえながら、声をあげて笑った。
 カルロはダニエルの手を取った。「そんなふうに顔を輝かせると、君の目に星がきらめき、唇からまるで音楽のように笑いがこぼれる。君に目を奪われて、僕は自分が何を言っているのかわからない」
 ダニエルの笑いがやんだ。彼に触れられているところが熱い。トムがいくら努力しても何も感じなかった体が奇妙な反応を示したので、カルロの手を振りほどこうとした。
 だがカルロは放してくれなかった。片手でダニエルの顎を捕らえ、親指で口元をかすめた。ダニエルの喉はからからになった。心臓が止まり、二度と戻れないところへ落ちていきそうだ。
「知り合ってまだ数日だというのに、何度君にキスしたいと思ったことか」カルロがささやく。
 ダニエルはごくりと唾《つば》をのんだ。「なぜなの?」
「ここだ」カルロはつかんでいたダニエルの手のひらを自分の胸に押し当てた。「君のせいで心臓がどきどきしている。とても快いんだ」
 ダニエルは喜びでめまいがした。その一方で“快い”という生ぬるい響きが、自分が異性を虜《とりこ》にしたためしが一度もないことを思い出させた。トムに捨てられた日、彼に欠点をずばりと指摘された。
“君とベッドをともにするのは、退屈だ。バスの時刻表を読む程度の刺激しかないよ、ダニエル”
 いやな記憶がよみがえり、ダニエルはカルロから目をそらした。「私にキスするなんていい考えじゃないわ」
「なぜだ?怒ったのかい?」
「そうじゃないの」
 カルロはダニエルの顔を自分に向け、引き寄せた。「じゃあ、どういうことだ?」
 うろたえながら、ダニエルは彼の口元を見た。彼の唇は未知の情熱を約束してくれているようだ。キスするなんて口にしないで。ただキスして、私を惨めさから救い出してほしい。
 でも黙ってされるがままになるには、キス以上のもの……奇跡が必要だ。そんな奇跡が起こるはずがない。私はベッドをともにする相手として面白みに欠ける女だと早く知らせたほうが、二人のためだ。そうすれば、彼も初対面のときのような医者としての顔に戻れるし、私も今度こそ、この男性となら違うかもしれないという愚かな考えを捨てられる。
「半年前まで婚約していたの」手の内をすべて見せるのがいちばんだと決め、ダニエルは話し出した。「でもフィアンセに婚約を破棄された。私が彼の……期待に応《こた》えられないからと。だからあなたの期待にも応えられるとは思えないの」
 カルロは二人の距離をさらに縮め、再びダニエルの顔を両手で挟んだ。「僕に判断させてくれないか」
「だって私……」
 最後まで言えなかった。カルロに唇をふさがれ、その感触に頭がぼうっとなる。まるで温かい蜂蜜《はちみつ》に浸したように、ぼろぼろだった自信が回復していく。まぶたの奥でさまざまな色が渦巻き、めまいを覚えた。体じゅうの血がわき立ち、なじみのない強烈な感覚が下腹部に広がった。
 キスされただけなのに。カルロの巧みなキスに息をのみ、欲望にとろけそうになる。
 知り尽くしていると思っていた自分の体が未知の反応を示すのに当惑し、彼女は考えるのをやめ、本能に従うことにした。行儀よく膝の上で組んでいた手をそっと伸ばし、カルロのシャツをつかむ。彼に胸をこすりつけると、体に電流が走った。
 カルロの低いささやきに励まされるように、ダニエルは彼の手を取り、肩に巻いたスカーフへと導いた。カルロがさっとそれをほどき、床に落としたかと思うと、冷たい指が襟ぐりの深いブラウスの胸元に差し入れられ、胸に直接触れた。彼女の体は熱く燃え上がった。
 カルロの手のひらが胸を包み、指で先端にそっと触れる。ダニエルは純粋な喜びの声をあげた。彼の舌先が唇をかすめると、彼のために唇を開いた。
 舌で柔らかい口の中を愛撫《あいぶ》され、コントロールできない欲望を感じた。突然、彼のすべてが欲しくなる。抑えきれない激しい情熱に身を任せたい。ダニエルは、女としての喜びと自由を堪能《たんのう》した。それに気づかせてくれた男性に夢中になった。
 カルロの舌がゆっくりと唇から首筋に滑っていく冷たい感触に、ダニエルの体は総毛立つ。彼の唇がさらにさがり、乱れたブラウスの布越しに胸の先端をついばんだとき、ダニエルは小さく声をもらした。ほんのわずかな隔たりでさえ、耐え難い罰のようだ。
 遠くで小鳥のさえずりが聞こえ、シルクが肌にこすれる衣擦《きぬず》れの音がそれに混ざる。心臓が激しく鼓動している。肋骨《ろっこつ》が痛かろうがかまわない。今この瞬間だけが大切だ。どんな痛みもこの至福を消せないし、この激しい欲望を抑えられない。
 だが、ダニエルはなんらかの苦痛のサインを示したらしい。親密な触れ合いは始まりと同様、突然終わった。カルロは身を引き、彼女の手を捕らえた。ダニエルはぼんやりと彼を見つめていた。もう少しで味わえるはずだった喜びを思うと泣きそうだった。
 しかし、カルロの言葉が再び希望を与えてくれた。「君が肋骨と足首を痛めていることを思い出してよかった。許してくれ、我慢できなかったんだ」
「あなたが我慢できなかったと知って、うれしいと言ったら?」
「僕にはもったいないくらい親切な言葉だ」
「親切とはなんの関係もないわ、カルロ。相手の男性に魅力を感じなければノーと言えるもの」ダニエルは震える息を吸うと、カルロの目をまっすぐ見た。「でも今はそうじゃないわ。つまり……あんなキスをされたのは初めてで……とてもすてきだった」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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