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チェス盤の上の恋

チェス盤の上の恋


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 サンドラ・フィールド(Sandra Field)
 イギリス生まれ。人生の大半をカナダで過ごす。カナダ北部の静寂と広大さを愛し、現在住む町を作品の舞台に選ぶことも多い。“私は経験から小説を書いています。私自身の喜びと痛みをもって、愛がなにより大切だと学びました。それが私の小説を豊かにしてくれることを、そして読者の皆様の心に届くことを祈ります”と言っている。

解説

 助けた少女の父親は初恋の相手――チェス盤の上の駒のように人を操る男だった。
 ■消防士のリーザは、火事から女の子を救出する途中、怪我を負って病院に運びこまれた。やがて目を覚ましたリーザは、ベッドのわきに立つ男性に気づいた。従姉の前夫、十代のころから憧れてきたジャッドだ。聞けば、リーザが救った女の子はジャッドの娘だという。従姉からはひどい男だとさんざん聞かされていたが、ジャッドは今でも体が震えてしまうほど魅力的だった。ああ、どうして私が助けたのが彼の娘でなくてはならなかったの? こんな偶然から、はるか昔の恋を思い出してしまうなんて。運命を恨みつつも、ふとしたことからジャッドにキスされた瞬間、リーザは自分の本当の気持ちを悟った。このままジャッドと突き進みたい。どんな危険を冒すことになっても。

抄録

「リーザ、僕の家に来てもらえるかい?」ジャッドは髪に指を差し入れた。「ずうずうしい頼みだとわかっている。でも、夜中に娘があんなふうに叫ぶのには耐えられないんだ」
 ジャッドは感情を高ぶらせ、荒々しい声でそう言った。とても芝居とは思えない。リーザにほかの選択肢はなかった。どんなに大きな危険を冒すことになるかわかっていても。「ええ、行くわ」リーザは言った。
「来てくれるのかい?」
「私だって怪物じゃないわ、ジャッド。いつがいいのかしら? 今日?」
「早いほうがいい。娘は三時半ごろ学校から戻る」
「それなら四時に行くわ」
「君は本当に寛大だな」
 ジャッドの笑顔を見ると自分でも理解できない感情がこみあげ、リーザは身じろぎした。「そうでもないわ。ジャッド、彼女は子供なのよ。私にはわかるの……」
「君のご両親は、たしか火事で亡くなったんだったね?」
 リーザの顎がこわばった。「調子にのらないで」
「車をよこすよ」
「タクシーで行くわ」
「自立していることが君のモットーなのかい?」
「お世辞として聞いておくわ」リーザはからかうように言って、棚からマグカップを取り出そうと手を伸ばした。
 そのときジャッドが近づいてきた。棚に伸ばした手が彼の腕に触れると、リーザの体に震えが走った。ジャッドは一本の指で彼女の頬骨から髪の生え際をなぞり、乱れた赤い巻き毛をやさしく引っぱった。その一つ一つのしぐさがリーザの肌に刻みこまれた。「僕にとって君は謎だよ。わかっているかい?」ジャッドはかすれた声で言った。
 瞳の中の黒い斑点が見えるくらい近くにジャッドがいた。親密さがリーザの防御をすべて無意味なものにし、彼女を危険にさらし、無防備な気分にした。こんな気持ちになりたくない。リーザは体を離そうとしたが、ジャッドが片手を彼女の腰にまわした。彼の胸に手を当てて押しやろうとすると、コットンのシャツを通して伝わってくる彼の体の熱さが指を焦がした。リーザは自制心と良識と警告と闘いながら、ジャッドの瞳にとらわれて我を失っていった。彼が身をかがめてキスしようとしているのがわかり、リーザの中に恐怖と喜びの入り混じった興奮が押し寄せた。
 彼女はもう一度、ジャッドの腕から逃れようともがいた。「ジャッド、やめて。お願い」
 ジャッドは答えるかわりにリーザの唇をふさいで彼女を黙らせた。唇が触れた瞬間、リーザは自分を見失った。夢と現実が溶け合う。押しつけられたジャッドの熱い唇が反応を求めている。リーザは怪我をしていないほうの手を上にすべらせ、ジャッドのなめらかな黒髪に指を埋めた。体を彼にあずけ、唇を開いてジャッドの舌を迎え入れる。激しい欲望が彼女を開放し、警戒心を吹き飛ばした。ジャッドの頭を強くつかんで、リーザは熱く反応する彼の体を腹部に感じていた。
 ジャッドはリーザの唇に、頬に、まぶたにキスの雨を降らせ、彼女の名前をささやいている。リーザの全身に広がる欲望はまるで大火災のようだった。闘いたくない。このまま突き進んでいきたい。この炎がどんな危険に私を導くとしても。
 デーヴにいつもとがめられるように、すべての規則を破って。
 デーヴのやさしい顔が割りこんできて、リーザは冷水を浴びせられたような気分になった。ときどき、デーヴは私のことが好きなのだろうかと考える。もちろん彼は親友だ。いつも一緒に仕事に挑み、一緒に危険をくぐり抜けてきた者どうし、理解し合っている。でも、ジャッドは……ジャッドは敵だ。こんなふうに彼とキスをするなんて、私はいったいなにを考えているのだろう? こんなに奔放に、こんなに安易に。
 苦悩に満ちた声をもらし、リーザはジャッドの胸を強く押しやった。右腕から肩にかけて激痛が走る。リーザは痛さのあまりうめき、ジャッドから顔をそむけた。目には涙があふれていた。
「リーザ……どうしたんだ?」
「放して」リーザは息を切らして言った。「放してよ!」
「泣かないでくれ」ジャッドがかすれた声で言った。
「ジャッド、放して!」ジャッドが手を放すと、リーザはカウンターの端にもたれかかった。そしてしゃくりあげながら、思いついたことをそのまま口にした。「こんなふうに私にキスをする必要はなかったのよ。エミーに会いに行くことには同意していたんだから」
「保険かなにかとして君にキスをしたと思っているのか?」ジャッドは怒ったように言った。
「ほかにどう考えろというの?」
「ただキスしたかったからそうしたんだ! 君がとても美しくて、山猫みたいにワイルドだから。そして、勇気があってやさしいから。どうしても君の唇を味わって、その肌に触れたかったから。君の髪を指に巻きつけたかったからだ」
 リーザの頬が真っ赤になった。ジャッドは真実を語っている。「そんなこと許されないわ」リーザは口ごもった。「あなたは私の従姉と結婚していたのよ。私はあなたが嫌いだし、私たちはまったく違う世界に住んでいる。ええ、今日の午後、エミーに会いに行くわ。でも、それだけよ。もう二度と会うこともないわ」
「今、僕に応えたのと同じように、デーヴにも応えているのかい?」
「あなたには関係ないわ! 単なる欲望……あなたと私の間にあったのはそれだけよ。軽蔑する男とのキスはおぞましいものだったわ」
「君は僕のことなどなにも知らないだろう!」
「アンジェリーンのことなら知ってるわ」
「袋小路だな」ジャッドは穏やかに言った。


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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