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謎だらけのプロポーズ

謎だらけのプロポーズ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャスリン・ロス(Kathryn Ross)
 ザンビア生まれのイギリス育ち。現在はランカシャー、アイリッシュ海に面するブラックプール郊外に住んでいる。ビューティー・セラピストとしても活躍する異色の作家。旅行が大好きで、多くの国々を訪れた。社交的で明るい射手座の女性。

解説

 “指輪がぴったりなら一年間だけ結婚してくれ”彼女は息をのんで自分の薬指を見つめた……。

 ■ペイジは大学を卒業し、故郷のカリフォルニアに戻ってきたが、彼女を待っていたのは過酷な現実だった。父が莫大な借金を背負い、失意のうちに亡くなったのだ。ペイジは父の協力要請を拒否した隣家の主人ブラッドを恨んだ。少女のころの憧れなんていつかはうち砕かれるもの……。そう思いつつも、密かに思いを寄せていた人の仕打ちに、ペイジは悲嘆にくれ、運命の皮肉をのろった。葡萄園も屋敷も何もかも手放すしかないと諦めていたある日、ブラッドがやってきて、家を出ていくなと引き留める。「僕のパートナーになればいい。ただし、一年間だけの結婚だ」この人は何を言いだすの? お金で私を自由にしようというの? ブラッドの驚くべき提案に、ペイジは呆然とした。

抄録

「氷を持ってくる」
「いいわよ。自分で冷やすから」慌てて立った瞬間、足がずきんとうずき、ペイジは思わずよろめいて木箱にもたれた。
 氷をタオルに包んで戻ってきたブラッドはペイジの傍らにひざまずき、患部にタオルをあてがった。
 どうして彼のやさしさがこんなにも悲しいの? ペイジは、下を向いている彼の黒髪に手を差し入れたい衝動に襲われた。
「楽になったかい?」
 見あげるブラッドに、ペイジはうなずいた。「ありがとう」彼女の声はかすれていた。
 ブラッドはおもむろに立ちあがり、ペイジを見つめた。
 ペイジは、彼への怒りがもっと強い感情の波に押し流されるのを感じた。この男性は私がずっと恋い焦がれ、尊敬してきた人。悲しみのあまり、ペイジの青い瞳が深い紫の陰りを帯びた。もし、父がブラッドに援助を請いさえしなければ……。ブラッドのことを悪く思いたくない。すべてを忘れて、昔のように彼を信じ、頼りたい。
 ブラッドのやさしげな目が、ペイジの表情をうかがっていた。「君にそんな悲しい顔をされると、僕はつらくてたまらない」
 彼女はこみあげてくるものをのみこんだ。泣いたりしないわ。「返済期限の延長をお願いしたときに、こうなる可能性について考えてほしかったわ。あと二、三カ月待ってくれていたら……」
 ブラッドは首を振った。「こんなことになるなんて」ホールを見まわしていた彼は、大きな木箱に目を留めた。「君がこんなに早く荷造りを始めるとは思わなかった。まだしばらくは時間があると踏んでいたよ」ブラッドは思いつめた顔をして髪をかきあげた。「引っ越しとなると、大仕事だな」
 ペイジはうなずいた。「三世代にわたって暮らした家ですもの。整理して荷造りするにはかなり手間がかかるわ」
「どうする気だ? 倉庫にでも預けるのか?」
 ペイジは肩をすくめた。「不動産会社の担当者は、すべて売ったほうがいいって言うの。でも、思い出がしみついて、手もとに残したいものもあるから、一応ぜんぶ確かめるわ」彼女は胸の張り裂けそうな思いを悟られまいと、努めて実務的に話した。
「君はこの家を深く愛しているだろうに」
 ペイジは大きく息を吸いこんだ。「我が家だもの……」
 二人の目が合った。
「君がどう思おうと、僕はこんな事態を望んではいなかった。ついでに言えば、君のお父さんに金を貸したのは僕じゃない。母だ」ブラッドは穏やかに続けた。「母は君たち一家の力になりたかったんだろう。母は君が大好きだったからね、ペイジ」
「私も好きだったわ」ペイジの青い目が潤む。「お母さま、助けようとしてくださったのね」
「ペイジ、泣かないで」
「泣いてなんかいないわ」ペイジは怒ったように否定したが、彼女の青白い頬を涙が伝い落ちた。
 ブラッドが近づき、温かい両腕に彼女を包みこんだ。ペイジは夢見心地の中でため息をついた。
 ブラッドがペイジの名をそっとささやいた。そのとたん、彼女の肌はひりつくように熱くなった。キスをしてほしい。わきおこった欲求の激しさに、ペイジはおののいた。
 ペイジは涙の跡に彼の唇が押し当てられるのを感じた。体に熱いものが流れ、欲望が目覚めていく。
 長い間、ブラッドとの情熱的なキスをひそかに夢見ていたけれど、こんなふうに欲望の嵐を巻きおこすものだったなんて……。
 ブラッドの唇が離れたとき、ペイジは呆然として彼の瞳の暗闇を見つめるばかりだった。
 だがまもなく、ペイジは一気に現実に引き戻された。父親がとぎれとぎれにもらした言葉――ブラッド・モンローへの恨みの言葉がよみがえった。
“冷酷無比な男だ”
 父親の声がペイジを責めたてるように頭の中でこだまする。父を裏切るつもり?
 ペイジはブラッドを突き放した。「私ったら、なんという間違いを……」
 彼の片方の眉が上がった。「僕はうれしかったけれどね」
「あなたの恋人はさぞ不愉快でしょうに」
「恋人はいない。気にする必要はない」
 ペイジは顔を曇らせた。半年前からキャロリン・マーフィーとつき合っているくせに。ウエディングベルが鳴るのも近いとみんな噂しているわ。
「キャロリンはどうしたの?」
「別れた」
「だって私、いえ、みんな、あなたたちが結婚するものと思っていたわ」
 彼は眉をつりあげた。「みんな好き勝手に想像しているだけさ。とにかく彼女とは終わったんだ」
 意外な告白に、ペイジは目を丸くした。「傷ついているの?」
 ブラッドが唇をゆがめた。「慰めてくれるつもりか?」そして、からかうように続けた。「確かに、さっきみたいなキスをあと二、三回すれば、気分が晴れるかもしれないな」
「ばかなこと言わないで」
 ペイジの心臓は一瞬止まりかけた。ブラッドに恋人がいようといまいと、私には関係のないことよ。厳しく自分に言い聞かせながら、彼女はどこかであのキスを思い出していた。
 ペイジはブラッドに背を向けた。「さあ、もう帰って」
「君がそうしてほしいのなら」いったん言葉を切り、ブラッドは改めて口を開いた。「信じてほしい、ペイジ。僕にはお父さんを追いつめるつもりなど毛頭なかった」
 ペイジは答えなかった。すっかり混乱していた。これほどの孤独感に襲われたのは生まれて初めてだった。
「君の助けになるなら、借金の返済はいつでもかまわない」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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