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ミスター・シンデレラ

ミスター・シンデレラ


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:300pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

 富豪の父親を亡くし、若いみそらでけなげに跡を継いだマデリン。ずっと良き娘として生きてきたけれど、一度くらいはめをはずしてみたい! ある夜、パーティーで見事にタキシードを着こなしたカウボーイに一目惚れ。そのまま自分のアパートへ連れていき、一夜を過ごしてしまう。が、翌朝彼の姿はなく、あとには片方のカウボーイブーツだけが……。

抄録

 マデリンはジャックの視線を追いかけて、裸の樅の木を眺めた。「私、クリスマスはだめなの」マデリンはどこか寂しそうに言った。
「俺はだめじゃない。電飾と飾りはどこ?」
 そう口にしたとたん、ジャックはその言葉を取り消したくなった。ちくしょう、俺はなんてばかなんだ。あとちょっとでマデリン・ラングストンをくどき落とすところまでいってたのに、クリスマス・ツリーを飾りつけてやろうだって? まったく、どうかしてる。
 マデリンはアイリッシュ・コーヒーをもうひと口飲んだ。コーヒーカップの縁ごしに彼を見たその目は底知れず、青々としていた。「泣くかもしれないわ」マデリンはそっと言った。
 ジャックはふとやさしい気持ちにかられた。「なぜ?」
「パパがいつもにぎやかにクリスマスを祝っていたから」
 ジャックはマデリンの体に腕を回した。「わかった。君がいやなら……」
「いやだなんて言ってないわ」マデリンはさえぎった。「つまり……もしツリーを飾りつけたら、私は泣いてしまうかもしれないけど、あなたは女性に泣かれるのがいやかどうか知りたかったの」
「いやかどうかだって?」この女性には驚かされてばかりだ。「いいかい、スィートハート、ほろ酔い機嫌の美女に肩の上で泣かれるなんて、男にとっちゃ、めったにあることじゃないよ」
 マデリンは頭を傾けた。「広くて、気持ちのいい肩をしてるのね。結局は私、泣かないかもしれないわ」

 もちろん、やっぱりマデリンは涙をこぼした。二人とも予想していたとおり。電飾のもつれた束をほどき、寒々としたクリスマス・ツリーにかけながら笑っているうちに泣き出したのだ。
 ジャックがスイッチを入れると電飾に明かりが灯り、てっぺんに飾られた星がきらきら輝いた。マデリンは光り輝くツリーの前に立ち、まばゆい光をあびた。色電球の明かりが反射して、彼女の黒い夜会服に飾られたビーズがきらめく。マデリンはすっかりツリーに心を奪われ、身じろぎ一つせずに立ちつくしていた。大きく見開いた目は涙でうるみ、しどけなく乱れたブロンドの髪が顔や首筋にかかっている。
「マディ?」大声を出すと、メモレックスのコマーシャルに出てくるゴブレットのように、彼女が粉々に砕けてしまうと思っているかのように、ジャックはそっと声をかけた。
 マデリンは黙ったまま泣いていた。大粒の涙がしみ一つない頬を流れ落ちていく。やがて彼女はささやいた。「あなたの肩、遠すぎるわ」
 やさしさがこみ上げてくるのを感じながら、ジャックは彼女を両腕に抱きしめ、その頬を自分の胸に押しあてた。マデリンの涙がハリー・フォドゴザーのシャツを濡らす。「大丈夫だよ」ジャックは顔をしかめた。毎日、文章を書いている人間のくせに、なんて月並みなせりふだ。
 やがてマデリンは体を離した。「ええ、本当に大丈夫よ。パパのことは恋しいわ。ときどきもう息ができないような気分になることもあるくらい。でも、次の瞬間にはちゃんと息をしている。そのあとも息はちゃんと続いて、空には相変わらず太陽が輝いていて、私もちゃんと生きていくことになるのよ」
 ジャックは思わずマデリンの眉にキスしていた。そのしぐさはほとんどうやうやしいと言っていいほどだった。彼女の肌の温もりと味わいが伝わってくる。まさか今夜、マデリン・ラングストンが実はこんなにかわいらしく、傷つきやすく、聡明な女性だと知ることになろうとは、夢にも思っていなかった。
 ジャックは暇な時間はたいてい保護施設でボランティア活動をしているが、施設の子供たちの中に、母親をなくしたばかりの女の子がいた。その子にマデリンが今言ったことを聞かせてやろう、と彼は思った。救いになるかもしれない。
 ジャックはテーブルの上の箱からティッシュペーパーを取り出してマデリンに渡した。彼女が顔をぬぐう間、ジャックは少し離れて立っていた。マデリンは少しよろめくと弱々しく笑った。「アイリッシュ・コーヒーは首にしたほうがよさそうね」
 ジャックはカウンターからミネラル・ウォーターの瓶を二本もってきた。猫のブレイクが姿を見せ、横柄でしなやかな動作で、クリスマス・ツリーの飾りを前足でさわろうとする。ミネラル・ウォーターの栓を開けて飲みながら、二人は不格好に飾りつけられたクリスマス・ツリーを満足そうに眺め、猫がじゃれる様子を面白がった。
 マデリンがジャックによりかかる。ジャックは彼女の腕をなぞった。マデリンは彼に向き直ると、瓶を二本とも取り上げて脇へどかした。そしてジャックの胸の上から顔へとてのひらをはわせていき、彼の顔を自分の方へ引き寄せた。「ありがとう」マデリンはささやいた。「今夜、一緒にいてくれて」
 彼女はどうかしてしまったのか? この俺と一緒にいられてうれしいだって?「まったくだ」ジャックはやさしく笑った。「これは拷問だよ。美しい女性をただ腕に抱いているなんて」
 マデリンも笑い声をたてた。それから、爪先立ちになった。二人の唇が触れ合い、やがて一つに溶け合う。唇と唇を合わせると欲望がうずき、ジャックは理性を失いかけた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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