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いたずらな運命

いたずらな運命


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ニコラ・コーニック(Nicola Cornick)
 イギリスのヨークシャー生まれ。詩人の祖父の影響を受け、幼いころから歴史小説を読みふけり、入学したロンドン大学でも歴史を専攻した。卒業後、いくつかの大学で管理者として働いたあと、本格的に執筆活動を始める。現在は、夫と二匹の猫と暮らしている。

解説

 運命とは皮肉なものだ、とジェームズは思った。イギリスに戻って最初に会ったのが、よりによっていちばん会いたくない女性だとは。二台の馬車がすれ違い、あやうく衝突しそうになった。その相手の馬車に乗っていたのが、誰あろう、七年前に婚約しておきながら、彼を捨てて、父親ほども年の離れた金持ちと結婚したアリシアだったのだ。馬が暴れ、気絶した彼女は今も変わらず美しく、ジェームズはついときめいてしまった自分が許せなかった。彼は苦い思いを噛み殺し、そっと彼女を抱き起こした。
 ★運命のいたずらで別れた恋人たちの麗しい再会を描きます。★

抄録

 アリシアが息継ぎをする間もなく、ジェームズはいきなり彼女を抱き寄せた。彼女の唇に唇を押し当て、強引に開かせる。アリシアは激しいキスにわれを忘れた。逃げ出そうとしても、彼の腕から逃れることはできなかっただろう。彼女を抱き締める腕は鋼のようだ。彼が怒りといらだちからキスをしたとわかっていても、アリシアはいつしか官能の海を漂い、気づいたときには本能のおもむくままキスに応《こた》えていた。体が燃えるように熱い。キスがさらに深くなり、ぴたりと重なり合った彼の引き締まった体が痛いほど意識された。そのあと、なにも考えられなくなる寸前に、わずかに残された理性がささやいた。彼はあなたのことなどなんとも思っていないわ。信頼してもいないし、愛してもいないのよ。あなたはいまだに彼を愛しているというのに。
 アリシアは頭から冷たい水を浴びせられたようなショックを受けた。いきなり身を引き離し、ドアめがけて走り出した。だが掛け金に手をかけたところでジェームズに追いつかれ、その手をつかまれた。
「頼む、アリシア……」ジェームズは荒い息をして、せっぱ詰まったように言った。「逃げないでくれ。わたしが悪かった。きみにひどいことをしてしまった。どうかわたしの話を聞いてくれ」
 鉄の掛け金が手に冷たく感じられたが、アリシアには手を離すだけの気力も残っていなかった。めまいがして、自分の声が遠くから聞こえてくるような気がした。
「あなたとはもうなにもお話ししたくないわ、ムリノー卿。もう手遅れよ」
 アリシアは頬を伝う涙を拭《ぬぐ》おうとしたが、涙は次から次へととめどなくあふれ出た。突然目の前が暗くなり、なにも考えられなくなった。もうなにもしたくない。彼女はそのまま目を閉じた。
 ジェームズはアリシアが気絶する前に抱き留め、暖炉のそばの長椅子に運んだ。長椅子に寝かせられたときにはアリシアは意識を取り戻しかけていたが、そのままじっと横になっていた。聞こえるのは、暖炉の火がぱちぱち燃える音と、台所で鍋《なべ》や食器がかちゃかちゃいう音だけだった。目は閉じていたが、ほかの感覚は鋭くなっていた。椅子の布張りのベルベットのなめらかな肌触りと、頭の下にあてがわれたクッションの柔らかな感触が心地よかった。そして部屋にはおいしそうな料理のにおいが漂っていた。
 アリシアはゆっくりと頭を横に向けて、そろそろと目を開けた。外が暗くなり、大広間はよりいっそう重々しく感じられた。ジェームズが水を持ってきた。彼はアリシアを助け起こして、なにも言わずにグラスを渡したが、彼女の手がまだ震えているのに気づき、その手に自分の手を重ねて唇にグラスを運んだ。
「夕食の準備ができた」ジェームズは静かに言った。「なにか口に入れたら、気分もよくなるだろう」
 するとメイドが現れ、テーブルに銀食器やグラスを並べはじめた。ジェームズはアリシアが立ち上がるのに手を貸し、テーブルまでエスコートした。アリシアはまだ体がふわふわ宙に浮いているような感じで、抵抗する気にもなれなかった。ジェームズもあえて沈黙を破ろうとはしなかった。
 料理は質素だった。冬野菜を使ったおいしいスープと牛の脇腹肉、デザートはクリームを添えたアップルパイだった。どれもおいしく、アリシアはひどくおなかがすいていたのに気づいて驚いた。しばらくするとだいぶ落ち着き、目の前に座っている男性がますます気になってきた。
 ジェームズが顔を上げて、目が合うと、アリシアはどきりとした。彼の黒い瞳は悲しみに曇っている。感情的な話題を避けるかのように、ジェームズは領地の話を始め、何度か地元のことを尋ねた。アリシアは林檎酒の生産から村の学校に至るまで、きかれたことには丁寧に答えた。
「きみはかなりの時間をチャートリーで過ごしているようだね」ジェームズはそれぞれのグラスにワインのお代わりを注いだ。「ロンドンよりもこちらのほうが好きなのかい?ほかの領地に行くことは?」
「社交シーズンのあいだはロンドンにいるわ。ロンドンも楽しいけれど、チャートリーの静かな生活が気に入っているの。スカーバラの海のそばに家があって、夏になるとそちらにも何度か出かけるけれど、ほかの領地は長期間の契約で人に貸しています」
「孤児院やそのほかの慈善施設にもただ同然で土地を貸していると聞いた。代理人にすべて任せているようだが、貸しているのはきみだということは、調べればすぐにわかるよ」
 いつのまにか気まずい雰囲気は消えていた。会えばいつもぎくしゃくしていたのに、今はなんでも話せる気がする。まるで十九歳のときに戻ったみたいだ。ジェームズに出会ったアリシアは彼に親しみを覚え、ふたりはすぐに意気投合した。あのときふたりを結びつけていた絆《きずな》を取り戻せそうな気がした。
「わたしのビジネスのことをよくご存じなのね」アリシアは穏やかに言った。「ほかになにをご存じなの?なぜそうまでしてわたしのことを知ろうとなさるの?」
 ジェームズはほほえんだ。「本当のきみが知りたいからだ。七年前、きみから別れの手紙を受け取ったとき、わたしは頭からそれを信じてしまった。わたしは若くて、あまりにもプライドが高かった」グラスを傾け、中身の液体が暖炉の火を受けてルビー色に輝くのを見つめた。「わたしがさっき言ったことは本当だ。帰国してきみに会うまで、きみとのことはもう終わったことだと思っていた。そのあと、きみが、わたしがずっと思い込んでいたような女性ではなかったのではないかと気づいたが、すぐには信じられなかった。そこでカロラインやマーカスに話を聞いてみた。モンクス・ダコラムの人たちにも。みんな口をそろえて、きみは優しくて思いやりにあふれた人だと言う。わたしが考えていたきみとはまるで違う」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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