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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

恋は予想外

恋は予想外


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 マリオン・レノックス(Marion Lennox)
 オーストラリアの農場で育ち、ロマンスを夢見る少女だった。医師との結婚後、病院を舞台にしたロマンス小説を書くことからスタート。現在はハーレクインの常連作家として、作品の舞台も多様になり、テンポのよい作風で多くの読者を得ている。トリシャ・デイヴィッド名義でも作品を発表していた。

解説

 あたたかい目をしたこの若い女性に、幼子を託したいと彼は願った。

 ■ベイビーチの児童ホームに高級なスポーツカーが入ってきたとき、ホームマザーのウェンディは引っ越しの荷造りをしていた。ウェンディは、児童ホームを辞めて、母親から虐待を受けているギャビーの里親になるつもりだったのだ。車から降りてきたのはルークと名乗るハンサムな男性で、父親の愛人が産んだ赤ん坊を預かってくれと言う。ウェンディは、施設を辞めるから無理だと告げたが、なんとしてもきみに世話をしてもらいたいとルークは譲らない。そこへ後任のホームマザーが到着し、ルークが解決策を思いついた。経済的に裕福なルークがウェンディを子守りとして雇い、ギャビーも一緒に暮らせばいい、と。渋るウェンディに、ルークは祖父母が遺してくれた古い家を提供する。二人の急務は、無人だった家を住めるようにすることだったが……。

抄録

「もう一度、屋根に戻らなければならない」ぽかんと口を開けている二人にルークは言った。「うまくいくよう祈っていてくれ」
「全身全霊をこめて祈りつづけるわ。ギャビー、あなたもお祈りして」
 驚きのあまり少女は口がきけないようだ。
 ふたたび屋根にのぼり、いよいよ仕上げの段階だった。煙突にもたせかけた梯子の上に立ち、ルークはロープを少しずつ慎重に引っ張った。
 縛られた脚がゆっくり引きあげられると、からすは狂ったように暴れ、一瞬ルークは失敗かと思った。だがそのあと信じられないことに、からすはいくらか抵抗をゆるめた。羽をばたばたさせていたが、最初ほど力は入っていない。おそらく疲れてきたのだろう。あるいは、これが唯一のチャンスだと察知したのかもしれない。
 ルークはロープを引っ張りつづけた。屋根の上にひとりで立っているのに、不思議にもひとりの気がしなかった。ウェンディがそばにいるし、ギャビーも、そしてグレイスさえ……。
 てっぺんから六十センチほどのところが手際を要する部分だった。自由を察知したからすは羽をばたつかせ、明るい日差しのなかへとうれしそうに飛びだした。だが脚にはまだロープが結びつけられている。ルークは梯子の上で懸命にロープを握りしめた。われながらよくやれたものだと思う。彼は生きた凧のように激しく羽をばたつかせるからすを手になんとか屋根に下りた。
 革ジャケットの袖に手を入れ、バランスを崩さないよう煙突に寄りかかってロープをたぐり寄せる。ちょっとしたつきもあったかもしれないが、自分でも信じられないほどの手早さでからすの脚に結んだロープをほどいた。からすはぎこちない動きで屋根の上に転がり落ちた。
 けがをしているのだろうか?
 ルークは不安そうに見つめた。からすは甲高い鳴き声をあげて立ちあがり、空へ舞いあがると、待ち受けている仲間たちに迎えられた。歓喜の声をあげてからすの群れは飛び去っていった。
 ロープと台なしになった革ジャケットを手にルークは屋根の上に座りこんだ。その顔には晴れ晴れとした笑みが浮かんでいる。
「やったわね!」下から叫び声がした。ウェンディは笑いと涙で顔をくしゃくしゃにし、ギャビーを抱きあげて草の上で勝利のダンスを踊っている。「下りてきて、ルーク・グレイ。あなたは世界一すばらしい男性だわ!」
 彼は敏捷な身のこなしで梯子を下りた。地面に足が着くなり、勝利をたたえる両腕に包まれた。
「ああ、ルーク、本当にみごとだったわ」今やウェンディは大っぴらに涙を流していたが、顔は笑っている。そしてギャビーはにこにこしっぱなしだ。ウェンディに抱かれた少女は二人の大人のあいだでサンドイッチ状態だった。
 抱擁にルークが慣れかけたとき、ウェンディが抱擁を解き、ギャビーを彼の腕に預けた。彼女がそうしたのは、グレイスを抱きあげて抱擁の輪に加えるためだった。
「ルーク、最高にすばらしかったわ……信じられないくらい……」
 ウェンディはなんとか身を乗りだし、二人の子供の頭越しに彼に祝福のキスをした。
 そのキスをきっかけに、ルークのなかで何かが変わった。
 彼女の唇はふっくらとして温かく、慈愛に満ちていた。感触は、彼がこれまでキスした女性たちとまったく違う。ルークは自分のなかで動きと変化が生じるのを感じ、どういうわけかその時点で人生が再認識された。あいまいだった物事が鮮明になり、それまで重要だったことが急に一歩後退した。
 何かが大きく変化しつつある。なぜだ?
 わからない。わかっているのは、彼女が煤の味がすること、ベビーパウダーと粉ミルクのにおいがすること、そしてなんだか……。
 彼女はとても幸せな気持ちにさせてくれる!
「ねえ、つぶれちゃいそう」下のほうから声がした。少なくともギャビーの口調は苦しげではなく、笑っているような感じだが、彼を正気に引き戻すには充分だった。
 ルークは唇を離し、ウェンディの上気した顔を見下ろした。そこには自分が感じているのと同じ当惑の色があった。
「あたしたちは鳥さんを助けたのね」ギャビーがうれしそうに言った。
「そうだよ、ギャビー、助けたんだ」
 ルークはウェンディを見つめたままだったが、彼女は心なしか名残惜しそうに子供たちへと注意を向けた。ルークをちらっと見上げ、グレイスを渡して代わりにギャビーを抱きとる。それから数歩下がり、身をかがめてギャビーを地面に下ろした。彼女は少女に注意を向けているふりをしているが、日焼けした肌がうっすらとピンクに染まるのをルークは見逃さなかった。
 自分に何が起こっているか、相変わらずルークには判然としなかった。ただ、それがとてつもなく大きなことだというのはわかっている。
「鳥さんはママとパパと一緒に飛んでいったわ」ギャビーが誇らしげに言った。
「そうだね」声が喉に引っかかる。ルークは驚いた。いったいどうしたんだ。これまで何人もの女性とキスしたことがあるけれど、こんなふうになったのは初めてだ。
「お兄さんやお姉さんが鳥さんの帰りを待ってるわね」ギャビーの顔は誇らしげに輝いている。「あたしたちが命を助けてあげたのね」
「そしてきみは梯子を押さえていてくれた」ルークはいくらか自分をとり戻した。「押さえていてくれなかったら、うまくいかなかったよ」


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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