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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・スペシャル・エディション

潮風の償い

潮風の償い


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・スペシャル・エディション
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シェリル・ウッズ(Sherryl Woods)
 シルエット・スペシャル・エディションを代表する作家。オハイオ大学でジャーナリズムの学位を取ったあと、新聞社に勤め、政治からエンターテイメントにいたるさまざまな記事を担当する。このキャリアのおかげで人間への洞察力が身につき、作家活動に役立っていると言う。1982年のデビュー以来、七十作以上の作品を発表し、多くの読者を魅了し続けている。

解説

 ジョーは困惑していた。姉の強いすすめで、祖母の遺したコテージで週末を過ごすことになった。だがそこは、ジョーが十代のころに夏を過ごし、将来を誓い合った男性から手ひどく裏切られた過去のある町なのだ。すぐに逃げ帰るつもりだったジョーは、修繕に立ち会うため、コテージにさらに数日泊まることになる。その夜、訪ねてきた建築家を見てジョーは全身が凍りついた。ピート――私の心を打ち砕き、去っていった男性。「帰って!」思わず叫んだジョーは、次の瞬間、ピートに抱きしめられて恍惚となった。
 ★ヒロインは四姉妹の末っ子ジョー。姉妹のなかでもっとも繊細で物静かな彼女の恋ははたして……。★

抄録

 山のような材木を積んでピートがようやくローズコテージに現れたのは、日暮れ近くになってからだった。ジョーは中庭に入ってきたトラックの音を聞きつけると上着をつかんで外へ飛び出し、玄関の前で彼を迎えた。
「遅かったのね」運転席から降りたピートに声をかける。
「すまない。あちこちで足止めを食ってしまったんだ。午前中の現場で次々とトラブルが発生して」
「何か大きな問題でも?」
 ピートは首を振った。「いいや。ただ、手間取ることが多くてね。今夜のうちにこの材木を降ろして、明日の朝いちばんにまた来るよ。そして一、二時間作業をしてから、ホワイト・ストーンの建築現場へ行くつもりだ。ちょうど君に景観デザインを頼もうと思っている現場だから、よかったら一緒に行かないか」
「もちろん行くわ」ジョーは不審そうな顔でピートを見つめた。ピートはさっきから一度も目を合わせようとしない。「ピート、大丈夫? なんだか元気がないみたい」
「べつにいつもと変わりはないよ」
 ピートはトラックの荷台から板を降ろし、きれいに積み上げはじめた。ジョーは黙って手伝おうとしたが、近づいてきた彼女を見てピートは顔をしかめた。
「何をしているんだ?」
「手伝おうと思って」
「君がそんなことをする必要はないよ」
「どうせ暇なんだからいいじゃない」ジョーはピートの目をじっと見つめた。何やら得体の知れない陰のある、険しい光をたたえている。
「僕は金をもらってこの仕事をしているんだ」ピートはジョーを脇へ押しやろうとした。
「でもあなたの報酬は時給計算でしょう。つまり、私が手伝えばそれだけアシュリーの支払うお金が浮くというわけ」ジョーはそう言うと、再び板へ手を伸ばした。
「ジョー!」
 ピートの大きな声に、ジョーの笑顔がすっと消えた。「なあに、ピート?」
 ピートは険しい顔をようやく緩め、ため息をついた。「僕はいったい、どうすればいいんだ?」
「手伝わせてちょうだい」ジョーは気軽な口調で答えた。
「そんなことを言っているんじゃない」ピートはジョーにつめ寄った。
「ピート?」
「なんだい」ピートの口元に笑みが浮かんだ。
「何をするつもり?」
「すぐにわかるさ」ピートは小声で言うと、頭を傾けて彼女の唇に唇を重ねた。
 抵抗するべきだった。すぐに彼を突き飛ばすべきだった。だがピートのキスに遠い昔の思い出を呼び起こされ、その感触を確かめもしないうちにどうして抵抗などできるだろう?
 まるで毎朝飲んでいるモーニング・コーヒーのように、ピートのキスは長年慣れ親しんだ味がした。柔らかい唇の感触。巧みな舌の動き。体の奥で小さな火花がはじけ、数秒のうちに全身がかっと燃え上がるのは、七年前とまったく同じだ。
 こんなはずではなかった。主導権は私が握っていると思っていた。彼の言いなりになるつもりなどなかったのに。ピートの体にぴったりと寄り添いながら、彼の手で二人の体に魔法をかけてほしいとジョーは願った。だがピートはキス以上のものを求めるつもりはなさそうだった。今はただ、唇をむさぼることに夢中になっている。
 頭のなかがぐるぐるとまわり、膝ががくがくと震え、熱い炎に身を焦がしているとピートが名残惜しそうに唇を離した。いやよ、離さないで――心のなかで叫びながら、どうしても声が出なかった。
 あらんかぎりの理性をかき集め、ジョーはピートの腕から逃れるとトラックにもたれた。ピートはキスの余韻に酔いしれているのか、放心したような顔をしている。それを見て、ジョーはかすかな安堵《あんど》を覚えた。私が人生を根こそぎ覆されるほどのショックを受けているのに、彼だけが何もなかったように涼しい顔をしているとしたら許せない。
「なぜ、こんなことを?」声が震えている。
「どうしようもなかった。こうせずにはいられなかったんだ」
 ジョーは唇をゆがめた。「本当に?」
 ピートは笑い声をあげた。「子供じみたことを言わないでくれ。お互い、そんな年齢でもないだろう」
「私があなたを困らせたから、キスでごまかそうとしたのかと思ったのよ」
「だったら、君はおとなしく僕の言うことを聞いていたかい?」
 ジョーは少し考えてから首を振った。「いいえ。ますます困らせたくなったでしょうね」
「で、キスの感想は?」
「すばらしかったわ」
 ピートは怪訝《けげん》そうな顔でジョーを見た。「君は変わったな」
「お互いさまよ」
「でも、変わったのは髪形や大学を出たからというだけじゃない」
「あら、そう?」
「今の君は火遊びを楽しもうとしているみたいだ」
 ピートの言葉にジョーはショックを受けていた。そうだろうか? ほんの十分前まで、彼女はまるで正反対のことを考えていた。この心を危険にさらすような過ちは二度と犯すまい、と。それなのに、今のキスで何もかもが変わってしまった。
「そうかもしれないわ」ゆっくりと答え、ジョーは無邪気な顔でピートを見た。「悪いかしら?」
 ピートはしばらくの間じっと彼女を見つめていたが、やがて大きく口元をほころばせた。「僕としては、ちっとも悪くないさ」
「そう。だったら、さっさと材木を降ろしてしまいましょう。それがすんだら夕食を作るわ」ジョーはピートを見つめ返した。「食べていく時間があるなら、だけど」
 ピートは一瞬ためらった。「夕食だけだろうね?」
 警戒心を忘れ、ジョーは思わず“いいえ”と答えそうになった。あなたを誘っているのよ、と。だがほんのわずかに残っていた理性が衝動に歯止めをかけた。彼は私の人生をめちゃくちゃにした男なのよ。
「夕食だけよ」きっぱりとジョーは答えた。
 彼はうなずいた。「それを聞いて安心したよ」
 だがその顔に浮かんだまぎれもない落胆の色を見て、ジョーはつい口にした。「デザートは、あとのお楽しみよ」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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