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悪魔公爵の愛撫

悪魔公爵の愛撫


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・デジタル
価格:300pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆2
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著者プロフィール

 アリス・ゲインズ(Alice Gaines)
 カリフォルニア州サンフランシスコ近郊オークランド在住のアメリカ人作家。名門のカリフォルニア大学バークレー校卒で、人格心理学の博士号を持つ。90年代からエロティック・ロマンスの執筆を始め、数多くの受賞作がある。肉体的に惹かれ合う恋が花開き、成熟し、永遠のハッピーエンドにたどり着く過程が好きなのだと語る。いちばんの趣味は読書だが、料理の腕前もプロ並みで、手打ちのパスタが得意だという。

解説

 ロザリンドは従者も連れず、徒歩でファロン公爵の屋敷にたどり着いた。“悪魔公爵”と噂される男の屋敷を女が1人で訪れるなど正気の沙汰ではないが、誰も頼る者のないロザリンドにとって、ファロンだけが残された救いだった。ギャンブル好きの父は常に金に困っており、金目のものならなんでも売る。そしていま、娘さえも売り飛ばそうとしているのだ。好色な年寄りの貴族に。私があの老人のものになるより早くファロンと結婚してしまえば、父も手を出せない。突拍子もない申し出を携えて現れた娘に、ファロンは思いがけない提案をした。妻としてふさわしいかを見る試験に合格すれば、おまえを娶ってもいいと。いったいどんな“試験”なのかとロザリンドがおそるおそる訊くと、公爵は答えた。「おまえがわたしの愛撫によって絶頂に達するところを見たい」

抄録

 控えていた従僕が物陰から進み出て椅子を引いた。サイドボードから磁器や銀食器がとり出され、続いて大皿の料理が運ばれてきた。ローストビーフに、ポテトの料理。たちのぼるおいしそうなにおいに、空っぽの胃がきゅっと収縮する。はやる気持ちを抑えて上品に切り分け、間違っても口につめ込んだりしないよう気をつけた。
「ここへはどうやって?」しばらくして公爵がきいた。
 ロザリンドは視線を上げた。ゆらめく淡い明かりの中、離れているせいもあって公爵の顔は大半が濃淡の影に沈んでいた。とはいえ、家ではもう何度も見かけた顔だった。公爵のほうから領地の検分で訪れるのだ。立派な栗毛の馬にまたがる姿は見上げるほどの長身で、肌は日に焼けていて、黒い頭髪と眉は量が多くてぼさぼさだ。一度まともに目が合って、はっとさせられたことがある。ハンサムとは言わないまでも、とても魅力のある人物だ。
「ミス・ウィーヴァー……」公爵が返事を促した。
「あ、ごめんなさい」フォークとナイフを横に置いた。「乗合馬車で来ました」
「あとは歩いた? ひとりでか?」
「徒歩がいちばんの近道でしたから」
「君の父上は馬車を持っていた。いくら賭けごとが好きでも、まだ全財産をなくすほどではあるまい」
「はい、今のところは」
「ここに来ることは話していないようだな?」
 ロザリンドは黙っていた。首を振っても暗くて見えないと思い、沈黙を答えの代わりにした。
「父親は信用できない、だからひとりで来た、か」
「公爵さまの妻になれば隠しごとはいっさいしません。ですけど、今お話しするのはちょっと」
「その話が、妻にするかどうかの決断に影響するかもしれないんだぞ」
「公爵さま」
「トム、ワインを。ミス・ウィーヴァーにもだ」
「私、お酒は飲まないんです」
「飲んでみなさい。うまい酒だ」
 従僕が満たしたグラスに、ロザリンドは口をつけた。深みのある花のような味わいが、ぱっと舌に広がった。比べるものがないため、これがいいお酒なのかどうかはよくわからない。
「さて、本題に入るとするか」公爵は椅子の背にもたれてロザリンドを観察した。「君は結婚して公爵夫人になる。君の父上には私から莫大な金がわたる。で、私が手にするものは?」
「公爵さまが長年求めていらっしゃるものです。跡継ぎがないことはみんな知っています」
「なぜ君なんだ?」
「悪魔公爵のもとに娘を嫁がせたい家は、そうはありません」ロザリンドは彼の世間での呼び名を口にした。たとえ面と向かって言われたことがなくても、彼には教えておく必要がある。
「今、なんと?」
「悪魔公爵、みんなそう呼んでいますわ」
 ろうそくの明かりに彼の瞳がきらめいた。あれは怒り?「理由は知っているのか?」
「奥方さまが二人とも亡くなられています」
「私が何かしたと考えている連中もいる」公爵はため息をついた。「事実ではあるがな」
 ロザリンドは、かたん、とグラスをテーブルに戻した。
「そんな顔をするな。手にかけたわけじゃない。私にも原因があるということだ」
 噂が真実なら、最初の夫人は出産のときに亡くなり、二番目の夫人は自分で自分の命を絶っている。なんらかの悪意が介在した証拠はない。しかしながら、疑念を抱かせるには充分だ。
「まだ私の跡継ぎを産みたいと思うか?」
「はい」
 公爵はグラスを口に当てて、グラスの縁越しにロザリンドを凝視した。「それがどのような行為を意味するか、わかっているな?」
「もちろんです」
「よし。では試験をしよう。合格すれば、君をファロン公爵夫人としてここに迎える」
 ロザリンドは胸を張った。「合格してみせますわ」
 公爵はくくっと笑ったが、そこに楽しげな響きはなかった。「本当だろうな?」
「試してごらんになればわかります」
「うむ」公爵は従僕に合図した。「トム、寝室の用意だ。前に話していたとおりにな。それから、デザートを頼む」一礼して従僕が出ていくと、公爵はロザリンドに注意を戻した。「テーブルを立ったら、トムが部屋に案内する。そこですべての服を脱ぎなさい。用意してあるナイトガウンを着て、そのほかは何も身に着けず、べッドに横になるのだ」
「そのあとは?」
「私が部屋に入る」
「いけません。まだ結婚前です」
「傷はつけない。終わっても体は清いままだ」公爵はグラスを置いた。「ただし、手は触れるぞ」
「それが試験なんですか?」
「君が達するところを見てみたい」
「達する?」
「そう、悦びの極致にだ。絶頂する君が見たい。どうだ?」
「断るという選択肢はありますの?」
「父上のところに戻りたければ、それでもいい。馬車を用意させよう」
 父親のもとに戻れば、今度は別の選択をしなければならない。公爵よりも多く金を出すと言った男と結婚するか、家を追い出されるかだ。
「試験を、受けさせてください」
「わかった」公爵は椅子に体を預けた。石を彫ったかのような硬い表情。
 従僕がトレイを持って現れた。
「デザートを楽しみなさい」公爵が言った。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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