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シェヘラザードの嘘【ハーレクイン・セレクト版】

シェヘラザードの嘘【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 オリヴィア・ゲイツ(Olivia Gates)
 カイロ在住のエジプト人。作家だけにとどまらず、眼科医、歌手、画家、アクセサリーデザイナーという実にさまざまなキャリアをもち、妻と母親業もこなしている。キャラクター設定やプロットのアドバイスをしてくれる娘と、ストーリーが気に入らなければキーボードの上を歩きまわる辛口批評家のアンゴラ猫の助けを借りながら、情熱的なロマンスを書き続けている。

解説

 ただひとりの肉親である姉夫婦のため、ラリッサは処女のまま代理母となった。ところが生まれてくる赤ん坊を見ることなく、義兄は癌で亡くなり、姉もあとを追うように事故死してしまう。妊娠3カ月で独りぼっちになってしまったラリッサは、子供の家族を探そうと、義兄の故郷ビダリヤ国へ移り住む。そこで彼女を待っていたのは、新しい勤務先の上司、ハンサムで優秀な外科部長のシーク・ファレスだった。二人は一目で惹かれ合うが、ラリッサはその日のうちに事実を知る。なんてこと。彼は亡き義兄の弟なの……?

■権力者ならではの強引な求愛に動揺するラリッサにファレスは時間をかけることを約束し、王宮のゲストハウスへ招待します。けれど彼の亡き兄の子がおなかにいるとはとても言い出せず、強く惹かれながらも、ラリッサは彼に抱かれることを拒むしかなくて……。*本書は、初版ハーレクイン・イマージュから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

  ラリッサは彼に触れられるのを拒めなかったショックから立ち直り、クスクスのはいったボウルを取って砂糖をかけ、味見をしてつぶやいた。「今になって後悔している? やはりプロジェクトに関わっている時間はないと?」
「いや、それどころか最高のアイディアだったと思っているよ。そのおかげで君と会えたんだから」
 ラリッサは咳きこみそうになり、もう少しで口に入れたクスクスを吐きだすところだった。
 彼はそれを見逃さず、ちょっと笑って続けた。「さらに言えば、君が来たことは僕にとってだけじゃなく、病院にとっても最高の出来事だ。君がいてくれれば僕はこれまでの仕事をこなしながらこのプロジェクトを運営できる」
 彼は女心をくすぐるのがとてつもなく上手なだけだわ、とラリッサは自分を戒めた。「つまり?」
「僕の右腕になってもらいたいんだ。一緒に大まかな計画を練り、毎日のスケジュールを決めたら、あとは君にほかのトレーナーを指揮してもらいたい。細かい問題の対処も、ボランティア各自に関する報告書の作成も君に任せる。僕はできるだけ顔を出すから、その都度進捗を報告してくれ」
 あっけにとられたラリッサは、なんとか声を取り戻そうと努めた。「私を買いかぶられても……」
 ファレスは肩をすくめて自信ありげに言う。「一緒に仕事をしてわかった。君は患者を大勢抱える最悪の状態の中で、生死に関わる判断を見事にやってのけた。腕前も申し分ない。冷静で、初対面のアシスタントたちの力を最大限に発揮させた。僕の右腕にする者がいなくて困っていたが、君が問題を解決してくれた。君こそ適任だ」彼はそこで言葉を切り、急に口調を変えて続けた。「君は僕の求めていた人だよ、あらゆる意味で」
 ラリッサは言葉を失った。彼の言葉に胸が高鳴っているのはたしかだが、もうやめて、と叫びたかった。
 ほめられ、求められる分だけ、ここに来た本当の目的を打ち明けたときの彼の怒りも大きくなるだろう。いや、今すぐ打ち明けても遅いほど、事態はすでに妙な方向に進んでしまっている。最初に彼と視線を交わし、心ひかれていることを悟られてしまった段階で、もう遅かったのかもしれない。
 混乱していたラリッサは、彼が顔をしかめているのに気づいてぎくりとした。
「気乗りしないようだね」ファレスは体を乗りだし、緊張した表情を浮かべている。「喜んで受けてくれると思っていたのに」
 それだけでこんなに怖い顔をするのだったら、彼が本当に怒ったらどんなことになるのだろうか。
 何も言えずにいるラリッサに、彼は初めて耳にするこわばった口調で言った。「僕が提案している職は、君が当初契約した仕事よりもずっと要職だし責任も重いが、それだけ特典も給与も増やす」
 同じ給料でさらに重い責任を負わされるのはごめんだと、私が思っているとでも?
 合理的な推測だとは思ったが、それでもひどく腹が立った。
 ラリッサは立ちあがり、相手を見おろした。「私がお金を要求しているとでも思ったの、殿下?」
 ファレスも猛獣を思わせる素早い身のこなしでラリッサに近づき、長身をいからせて立ちはだかる。
「今なんと言った?」これまで聞いたことがない、低い、危険な声音だった。
 だがラリッサは平気だった。前からやりたいと思っていた仕事に高給が約束されていることは心苦しかったが、無給でやっていける立場にはない。ボランティア・プロジェクトに関わってお金をもらうのは気が引けたけれど、いつまで働けるかわからない妊娠中の彼女にとって当面経済的な安定が保証されるのはありがたかった。ファレスの言葉はそんなラリッサの痛いところを見事に突いたのだった。
「給料の値あげを求めていると思ったのなら――」
 さっきよりさらに低い声で彼がさえぎる。「いや。そんなことはない」
「じゃあ、殿下と呼んだことが……?」
 獲物に襲いかかる鷲のように、ファレスが体を寄せてきた。ラリッサはまばたきする時間も、考える間も与えられなかった。
 考えたところで逃げられなかっただろう。熱く湿った唇が押し当てられ、舌が唇を割ってはいってきた。自分のものと思えないすすり泣きが体を揺るがすようにしてもれた。それに応えてファレスの腕に力がこめられると、ラリッサの体は電気ショックを受けたように震えた。震える下唇が軽くかまれ、彼女はファレスの口の中で叫び声をあげた。それは彼の舌の侵入をさらに許すことになった。
 体がばらばらになるかと思ったとき、唇が離れ、抱擁が解かれた。
 うめき声をもらして彼が離れると、ラリッサはよろよろと一歩下がり、近くにあった椅子に座りこんだ。あと少し今の状態が続いたら、彼のオーラに包まれて体が燃えつきていたに違いない。
 ファレスは改めてラリッサに近づくと顎を指先で押しあげ、視線を合わせた。恥ずかしさに身を縮めて見あげた彼の瞳に炎が宿っていた。それを見たラリッサは、もう一度彼と唇を、体を、合わせたい欲望に身を焼かれた。
「今度殿下と言ったら、またその口を封じてやる」
 それが脅しになると思っているのだろうか? 女なら彼に見つめられるだけでもうれしいのに? キスが罰になると、本気で思っているの?

 *この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

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