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さよならの演技【ハーレクイン文庫版】

さよならの演技【ハーレクイン文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★☆☆☆1
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著者プロフィール

 ダイアナ・ハミルトン(Diana Hamilton)
 イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供をもうけた。就寝前の子供たちにベッドで読み聞かせるために物語を書きはじめる。ロマンス小説家としてのデビューは1987年、その後数多くの名作を世に送る。2009年5月、ファンや作家仲間に惜しまれつつ亡くなった。

解説

 ボスのジェイクと契約結婚をした、秘書のクレア。だが迎えた2度目の結婚記念日、クレアの心は沈んでいた。先日、夫と令嬢の熱愛が新聞に取りざたされたのだ。二人は2年前、ある条件を交わしていた――どちらかが誰かを真剣に愛し、再婚を望んだときは、きっぱりと契約を終えて離婚しようと。きっと彼は記念日の今日、わたしに別れを切り出すつもりだわ……クレアの胃はよじれた。なぜならジェイクのことを、心から愛してしまっていたから。

 *本書は、初版ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 彼はテーブルの表面を、美しい長い指でこつこつとたたいていた。クレアは目を伏せた。罪悪感を持つ必要などないのに、彼の放つ威圧感の前で気持ちがすっかり萎縮している。
「どうした、あくまでしらを切るつもりか?」ジェイクが冷たく言った。「ゆうべの電話の相手はどこかの男なんだろう? 隠さずにそうはっきり言ったらどうだ? 契約上認められた行為なんだから、べつにとがめるつもりはない。ただし、慎重を期するという条件だけは守ってほしいね」
「ふざけないでよ。あなたと一緒にしないで!」クレアは胸が張り裂けそうになったが、すぐに平静を取り戻し、硬い口調で言った。「何度言わせれば気がすむの? あの電話はリズだったのよ。母は遺産相続のことを早くあなたに伝えてくれって、わたしに催促の電話をしてきたのよ」
「なるほどね」ジェイクは少しも納得していない口調で言った。「リズはぼくに一刻も早く朗報を届けようと、それでわざわざ電話をね」
「信じないなら勝手にすれば」クレアは結局ジェイクの用意した朝食に手をつけないまま、憤然と立ち上がった。彼にはわたしを信じる気なんて全然ないんだわ。自分のことを棚に上げて、図々しい。「リズにすればすごく大事なことなのよ。あなたからの仕送りをできるだけ早く止めてもらいたがってるわ。サリーへのお給料もこれからは自分で払うそうだし、ラーク・コテージの購入費もあなたに全額返すって言い張ってるのよ」
「あの家はぼくらの結婚記念に彼女にプレゼントしたものだ」ジェイクは不機嫌そうに言って立ち上がり、居間のほうへ歩いていった。彼の目にちらりと苦痛の色がよぎったように見えた。きっと、リズに対するこれまでの厚意を踏みにじられたような気がしたんだわ。クレアは戸惑いながら彼のあとを追った。
 ジェイクは両手をズボンのポケットに突っ込み、窓辺に立って外の静かな通りを見下ろしていた。クレアがスリッパを履いた足で分厚い絨緞を敷きつめた居間へ入っていくと、彼は気配でわかったのか、振り向きもせずに厳しい口調で言った。
「リズがラーク・コテージの購入費をぼくに返済する理由などまったくない。それから月々の生活費についても、それがぼくらの結婚条件なんだ。彼女が気にかけるべき問題じゃない」
 クレアはたくましい大きな後ろ姿に向かって静かに歩み寄った。リズに対する彼のこれまでの心遣いは経済的なものだけではない。イギリスに戻れば必ず会いに出かけ、たとえそれができなくても近況を尋ねる電話を欠かさなかった。さらに毎年春には、リズと住み込みで彼女の看護師兼話し相手を務めるサリー・ハーディングの二人をイタリアの湖水地方へ旅行させ、そのうえ暇を見て好みの本を見つくろって送ったりもしている。彼のありあまる財力からすればわけのないことだろうが、そこまで気の回る人はなかなかいない。結婚に際して交わした契約内容をはるかに上回る心配りだった。
 そんな彼を、厚意をあだで返されたような気分にさせたくない。彼の気持ちを傷つけたくない。
 クレアは前に回り込んで彼に両手を差し伸べた。「お願い、誤解しないで。リズは心からあなたに感謝してるの。本当よ。でもこれまでプライドだけを頼りに頑張ってきた人だから、自活できるようになったことが嬉しくてたまらないのよ。その気持ちをわかってあげて」
 気がつくとジェイクの頬を両手にはさみ、冷たい指でこめかみを優しくなでていた。彼はクレアの目をまっすぐ見つめたまま、彼女の手のひらに唇をそっと押しあてた。彼女はびくりとして手を引っ込めた。体内を小さな熱い炎がぐるぐると駆けめぐっている。
 二人の結婚の条件には、ベッドをともにすることは含まれていない。クレアには愛のないセックスなど考えられなかったし、ジェイクのほうも感情のもつれからこの関係にひびが入ることを恐れて、親密すぎる行為は望んでいなかった。
 そうはいっても、彼がわたしに触れることを極端なまでに避けてきたのはなぜだろう。まるでたわいのないスキンシップさえもタブーだとばかりに。もしかしたら彼は、わたしがほんの少し触れられただけでのぼせ上がってしまうことを、最初から見抜いていたのだろうか。
 クレアは頬を赤らめたりするような醜態を演じないうちに素早くあとずさりして、わざと陽気な口調で言った。「ラーク・コテージに泊まったあと、リザートンへ行く予定よね。急いで支度に取りかからなくちゃ。だけど……あそこに二週間もいるなんて、正直言って気が進まないわ。いくらあなたの妹さんがいい人でも、することがなくて退屈しそうだもの」
 本心ではなかった。ウィンター家の大邸宅リザートン・コートでは、昨年の初秋とクリスマスにもジェイクと一緒に楽しい休暇を過ごした。気が進まない理由は退屈だからではなく、二週間もジェイクと離れ離れになるからだ。そうはっきりわかっているのに、なぜかどうしても素直に口に出す気になれなかった。
 そのくせ出かける準備のため居間を出ると、クレアは彼に本心を言い出せなかったことに無性に歯がゆさを覚えた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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