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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・スペシャル・エディション

孤島で愛して ある運命の物語 XVII

孤島で愛して ある運命の物語 XVII


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・スペシャル・エディションある運命の物語
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アン・マリー・ウィンストン(Anne Marie Winston)
 ベストセラー作家で、“ロマンス小説界のオスカー賞”ともいわれるRITA賞の最終候補者にもなった経歴を持つ。赤ん坊やあらゆるタイプの動物、これから開花しようとするものすべてを愛し、執筆活動以外の時間は、子供たちの運転手や読書をして過ごす。ちょっとした刺激ですぐに踊りだしてしまう陽気な性格。庭の手入れは、雑草で太陽が見えなくなってからするという。

解説

 ダニーがハワイの孤島に隠遁して四年が過ぎた。愛息の誘拐、妻の死……いまだ、心の傷は完全に癒えていない。ある朝、ダニーはビーチで倒れている女性を発見した。幸運にも、大きな怪我はないらしい。ほっとしたのもつかのま、彼女が言った。「私……自分が誰なのかわからないわ!」

抄録

「ああ……ちょっと持ってきた物があるんだ」
 彼はスーツケースとハンドバッグと小さなリュックサックを持って入ってきた。
「まあ」シドニーはひと目見てわかった。「わたしの荷物ね!」彼女は彼の心遣いに感激した。「ホテルに取りにいってくださったの?」
 彼はうなずいた。「きみが自分の服を着たいだろうと思って。チェックアウトもしてきたから宿泊していない分の料金は請求されないよ。もしまたきみがホテルに戻りたい場合は、部屋を確保してくれるそうだ」
 シドニーは短いガウンをひっぱりおろしながら戸口へ行った。「ありがとう」
「どういたしまして」彼はシドニーにバッグとリュックを手渡したが、スーツケースは渡さなかった。「これは重いから。どこに置いてほしい?」
 スーツケースに伸ばした手が彼の手と触れ合った。彼の大きな体がすぐそばにあった。シドニーは慌ててうしろにさがり、部屋を見まわした。
「あそこに」
 あそこ、というのは小さなテラスに通じる窓のそばの大きな長椅子だった。ダニーは部屋を横切り、スーツケースをおろした。
 彼のあとについていったシドニーは、スーツケースの横にバッグとリュックを置いた。
「鍵をどこに入れたのだったかしら。細かなことはまだ思い出せないの」
「今調べてみたらどうだい」ダニーは言った。「もしなかったらジョニーに開けさせよう。あの男はじつになんでもできるんだ」
 シドニーはほほ笑んだ。レイラニの夫には一度会っただけだが、レイラニのてきぱきとした働きぶりを見ているので、彼女の夫もなんでもこなせる人なのだろうと想像できた。
 収納力たっぷりのバッグのファスナーを開けて、中をのぞいた。入っている物を見ると記憶がいろいろ戻ってきた。
「どこに入れたか覚えているわ!」シドニーは内側のポケットを探って小さな鍵を取り出し、ダニーの顔の前で得意気に振って見せた。「ほらね」
「すばらしい。中に入っている物のことを覚えていたんだね」
 ダニーはほほ笑みながら彼女の手首を取り、顔の前から鍵をのけた。
 シドニーはうなずいた。「それにどこに何を入れたかも」彼女の微笑が少し陰った。「ニックの――息子の顔を見たら、あの子のこともこんなふうにぱっとぜんぶ思い出せるかしら。そうだといいのだけれど」
「心配なのかい?」
 シドニーは肩をすぼめた。「ニックの顔は思い出せるけれど、それがまるで絵を見ているような感じなの。どんな声だったか思い出せないし、あの子の好き嫌いもわからない。抱きしめたときの感触もまるで思い出せないの」
 ダニーはシドニーの手首をゆるく握ったままだったが、その手をわきにおろした。彼女の顔を見おろした。彼の澄んだ青い目はとてもやさしかったが、目の奥は悲しげに陰っていた。
 坊やのことを、また思い出させてしまったんだわ。シドニーは気がとがめた。
「じきに思い出すよ。記憶はだんだん戻ってきているじゃないか。大丈夫さ」
 そう力強く言われるとシドニーは涙ぐんだ。
「ありがとう」声が震えないようにこらえながら言った。あいているほうの手を彼の頬に当てた。「あなたのおかげでどうにか……」無理にでも微笑しようとした。「さもなかったら、わたしはきっと精神病院の隔離病棟に入れられていたわ」
「それはどうかな」めったに笑わないダニーの口元が珍しくほころんだ。
 シドニーは思わずほほ笑んだ。二人はそんなふうに少しの間見つめ合った。シドニーは、まるで心がさらわれるように強く彼に引き寄せられていくのを感じた。彼の目の中に同じ思いが見て取れた。
 ダニーは頬に当てられているシドニーの手を取り、目を閉じてその手に口を近づけた。シドニーは彼のやわらかくしっとりとした唇の感触を手のひらに感じた。体が震えた。いやおうなく反対極に引きつけられる磁石のようだった。
“わたしにキスをして”体がささやいた。“わたしに触れて”足がふらふらとして前によろめくと、彼の体がこたえているのがわかった。
「ダニー」シドニーはささやいた。
 ダニーは目を開いた。彼が手のひらにほんの軽くキスをするのが感じられた。それから彼はゆっくりとあとずさり、握っていた手を放した。彼の目はもはや熱く輝くブルーではなく、やさしく悲しげな色で、わかってほしいと訴えていた。
「もう行かないと」ダニーは静かに言った。
 ものも言えなくなっているシドニーを残し、彼は行ってしまった。
 シドニーは震えながら長椅子に座りこみ、手のひらをじっと見つめた。彼の唇が触れたところに火ぶくれができているにちがいないと思った。火ぶくれはなかった。彼女はその手をゆっくりと上げ、さっき彼の唇が触れたところに唇を当てた。
「ダニー」彼女はささやいた。
 彼に何を望んでいるの? 頭がまだぼうっとしていてまともに考えることができない。切望で体が震えていた。記憶が欠けていたとしても、こんなことは生まれてはじめてだとわかる。手首や手のひらに触れられただけで膝ががくがくするなどという経験はない。そんなことができた人は誰もいない。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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