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通い猫アルフィーの奇跡

通い猫アルフィーの奇跡


発行: ハーパーコリンズ・ジャパン
シリーズ: ハーパーBOOKS通い猫アルフィーの奇跡
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

 飼い主の老婦人を亡くし、ひとりぼっちになった猫アルフィー。帰る場所もなく空腹でさまよい続けたすえ、とある住宅地にたどり着いたアルフィーは、そこで“通い猫”として生きようと決める。だが訪ねた先の住民は揃いも揃って問題だらけ。世をすねた無職の男に育児疲れの主婦、デートDV被害者――そんな彼らに、いつしか1匹の小さな猫が奇跡を起こす!? 全英絶賛、ハートフル猫物語。

抄録

 猫ドアから入ると、ジョナサンがキッチンにいた。すべての家に猫ドアをつけるべきだと、つくづく思う。
「よう、アルフィー」ジョナサンが思いのほかやさしく声をかけてきた。
 ぼくは喉を鳴らした。
「思っていたほどひどくなかったよ。そんなにくだらない仕事じゃなかったし、なかなかいい会社だった。だからお祝いにスシを買ってきた。猫がコメを食べるかわからなかったから、おまえにはサシミを買ってきたぞ」
 サシミがなにかわからなかったが、ジョナサンが茶色い紙袋からトレイをいくつか出すと魚だとわかった。生の魚だ。ジョナサンがお皿にサシミを置き、残りを冷蔵庫にしまった。ぼくは目で問いかけた。
「ぼくはジムに行ってくるよ。帰ってから食べる」ぼくはミャオとお礼を言って、がつがつ食べはじめた。サシミはすごくおいしくて、ぜひまた買ってきてほしいと思った。ジョナサンといると、いろいろおいしいものを食べられそうだ。ある日突然、クレアがくれるような缶詰に切り替えようと思い立ったりしませんように。
「これが当たり前だと思うなよ」ジョナサンが言った。「今日は特別だ」
 やっぱりぼくの心を読めるらしい。
 食事をしているあいだにジョナサンは着替えてジムへ出かけてしまったので、ぼくは急いでクレアに会いに行った。

 クレアは居間でテレビを見ていた。もう悲しい顔はしていない。どうやら気持ちを新たにしたらしい。
「おかえり、アルフィー。どこに行ったんだろうって、気をもみはじめてたのよ」クレアがぼくを撫でまわした。ぼくは嬉しくて喉を鳴らした。
 クレアとは睦まじい助け合いの関係が築けている。いまでもこの家はぼくにとって一番で、それは最初に見つけた家という理由だけでなく、クレアとすぐ強い絆を結べたからでもある。ジョナサンは本音ではぼくに好意を持っている気がするけれど、絆がどの程度のものかはまだわからない。それに二十二番地のフラットはまだ初期段階だ。でもクレアとはもう家族だから、大事にしたいと思っている。
「さてと、着替えてくるわね」どういうことだ? どこへ行くんだろう?「近所のジムに行くの。そろそろもっと体を大事にしないとね」クレアがにっこりほほえんで階段をあがっていった。
 人間が言うジムって、どんなところなんだろう。ジョナサンが行ったところと同じなんだろうか。ふたりが顔を合わせることがないと思いたい。ふたりともぼくを自分の猫だと思っているから、ややこしいことになりかねない。
 でもいまはそんな心配をしている場合じゃない。腹ごなしをしたければ、散歩に出かけるしかない。外に出ると、タイガーがいた。
「一緒に散歩に行かない?」
「のんびりするつもりだから、また今度にするわ」
「そんなこと言わずにつきあってよ。ジョナサンのプレゼントを探したいんだ」最終的には、最初につかまえた獲物をあげる約束で口説き落とすことができた。女ってほんとにめんどくさい!
 眺めのいい場所を通って近所の公園に向かうあいだに、感じのいい猫や感じの悪い犬に会った。一頭の犬はぼくの倍ぐらいの大きさで、しかもリードをつけていなかった。やかましく吠えながらこちらへ走ってきた犬が、鋭い牙をむいてうなった。
 ぼくより攻撃的なタイガーはシャーッと威嚇したが、ぼくは相手の敵意をあおりたくなかった。いまでも犬は怖いけれど、危険回避はうまくなっている。だから踵を返してタイガーを呼び、全速力で走って近くの木に駆け登った。幸いタイガーも機敏だったから、すぐあとから木に登ってきた。犬は木の根元で激しく吠え立てていたが、間もなく飼い主に引っ張られていった。ぼくたちは乱れた息を整えた。
「もう、だからうちにいようって言ったじゃない」タイガーが文句を言った。
「でも、走っていい運動になっただろう?」
 帰りかけたところで、ジョナサンのプレゼントを探しに来たことを思いだした。運よく、通りかかった家のゴミ容器の近くをおいしそうなネズミが二匹うろついていた。おなかが空いていたら、自分で食べたい誘惑に負けていただろう。ぼくはタイガーがぺろりとネズミを一匹平らげるのを見ていた。
 ジョナサンの玄関の前にネズミを置いたあと、足の向くままぶらついた。そしてタイガーのうちの庭でしばらくのんびり過ごしてから、クレアの家へ帰った。
 帰宅したクレアは血色がよくなって汗でキラキラ輝いていた。とびきりの見栄えとは言えないし、正直言ってにおいもよくなかったけれど、晴れやかな顔をしている。
「アルフィー、もうくたくただわ。でも運動してすっきりした。エンドルフィンのおかげらしいけど、たしかに効果があるみたい」クレアがぼくを抱きあげ、楽しそうに笑いながらくるくるまわった。上機嫌なのがわかったからおとなしくしていたけれど、やっぱり体を洗ったほうがいいと思う。
「シャワーを浴びてくるわ」ぼくはほっとした。そのあいだにぼくも体をきれいにしよう。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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