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傷を負った天使【ハーレクインSP文庫版】

傷を負った天使【ハーレクインSP文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクインSP文庫
価格:400pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 クリスティ・ゴールド(Kristi Gold)
 作品がウォールデンブックスのベストセラーリストにたびたび登場する人気作家。RITA賞の最終候補に選ばれた経歴があり、最近では、昨年日本でも刊行された大人気ミニシリーズ『バロン家の受難』第九話「シークとの契約」(D−1049)でみごと全米読者選賞を受賞した。十二歳のときからロマンス小説を書き始め、当時のヒーローは学校の男の子や芸能人だった。やがてカウボーイと医者に変わるが、夫はその両方でもあった。テキサスの小さな農場に、元神経外科医の夫と三人の子供、様々な種類の家畜と共に住む。かつては馬を乗りこなして大会にまで参加していたが、小説を書くために乗馬をやめて、今は末娘に“愛のむち”をふるっている。執筆をしていないときは、オフィスで執筆している夢を見るという。

解説

 ダイヤモンドをちりばめたような夜空の下、サックスの音色がミランダの体を恋人の指先のように愛撫する。ミランダは目を閉じ、なまめかしい空想に身をまかせた。どこからともなくセクシーな恋人が姿を現す、完璧な設定だわ……。数時間後、彼女は見知らぬサックス奏者とベッドの中にいた。普段のミランダなら即座に断ったはずの誘いだったが、まさに完璧な彼の魅力に、抗うすべがなかったのだ。お堅い看護師の姿に戻り、新しい職場での初日を迎えた翌朝。担当医として彼女の前に現れたのは、昨夜の謎めいた男性だった。

*本書は、ハーレクイン文庫から既に配信されている作品のハーレクインSP文庫版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 ミランダは思い切って一歩前に出た。「それならなぜ呼んだの?」
「話がある」
 ミランダは、彼ではなく、部屋を観察するふりをした。驚くほど整頓されたその部屋は、深みのある男性的な色使いで、重々しいくるみ材の家具が配され、リックに似つかわしい。「何について?」
「僕らについて」
 二人が“僕ら”という表現でくくられる関係とは思えなかったが、彼女は体に走る興奮を止められなかった。彼の魅力にぐらつくわけにはいかないのに。「話などないはずよ。私の能力が問題なら別だけど」
 リックは立ち上がり、セクシーな笑みを見せた。「それなら文句ない」
 しまったわ。誤解されたみたいだ。「仕事上の能力のことを言ったのよ」
「わかってる」リックはミランダのほうへ机をまわりこみ、縁に腰かけて腕を組んだ。「ゆうべのことだ。僕らがつきあえない理由を考えてみた」
「もうはっきりしてるわ。私はあなた担当の看護師。その関係を越えたら、仕事上さしつかえが出る」
「いかにも」
「じゃあ、何が問題なの?」
「問題は、そんなふうに方向転換できないかもしれない、と思えることなんだ」
 ミランダは息をするのがやっとだった。「決まった人がいるんでしょう?」
 リックは眉をしかめた。「決まった人?」
「週末は恋人に会いに行くとメアリー・ジョーに聞いたわ」
 リックは首を振った。「メアリー・ジョーめ」彼は目を上げて、ミランダを見つめた。「恋人がいたこともあったが、今はだれともつきあってない」
 認めたくはなかったが、ミランダはほっとした。もし彼の言葉を信じるなら。「そうなの。でも、恋人がいないなら、勤務外には何をしているの?」
「いろいろとね。それについては今は話したくない。まずは僕らのことだ」リックは首を揉んだ。「つきあうとしたら、慎重が第一だ。職場恋愛の例は多々見てきた。最悪なのは、どちらかあるいは両者が既婚者の場合だが、幸い僕らには当てはまらない。だが僕は、人に知られたくない多くの事情を抱えている。だから二人の関係は表沙汰にできない」事務的で冷静な口調。同僚に講義でもしているみたいだ。
 ミランダは、湧き上がる怒りを胸に、リックから遠ざかって室内を歩きだした。彼は、流行遅れの服よろしく、私をクローゼットに隠しておくつもりなのね。もうそんな生き方はまっぴら。「交際を始めたら最後、私が看護師仲間に言いふらすと思ってるのね。あの難攻不落のジャンセン先生を落としたと自慢し、仕事もせずに浮かれだす、と」
「そうじゃない」
 ミランダはリックに向きあい、力まかせにバッグの紐を肩にかけた。「ご心配なく、先生。あなたを誘惑したなんて、だれにも言いませんから。もし魔が差してうっかり口をすべらせても、あの女は嘘つきだと否定していただいて結構よ」
 涙をこらえながら、ミランダはリックに背を向けた。泣き顔だけは見せたくない。
「待って、ランディ」ミランダの肩にリックの手が伸びる。ゆうべと同じやさしい口ぶりだ。抗おうとしても、ウイスキーのような彼の声は今もミランダを酔わせる。
 ミランダは頑なに振り向くのを拒んだ。心が負けてしまいそうだったから。「行かなくちゃ。用事があるの」本当は、空っぽの部屋に帰る以外、何もすることなどなかったけれど。
「こっちを見て」
 心がだめと命じても、足が勝手に動いてしまう。ミランダは向き直り、リックの黒い瞳を見た。
「今君がどう思おうと、ゆうべは特別な一夜だった。君を傷つけた自分が許せないし、今日は今日で、医者という職業を初めて呪ったよ。でも、過ぎたことは変えられない。今後も君とつきあいたいんだ。しばらく考えてみてくれ。その間、僕らは友だちだ」
 ミランダが今聞きたかったのは“友だち”という部分だけだった。「無理よ」
 リックの唇が険しく結ばれる。「なぜだい?」
「友だちは普通、ベッドをともにしないわ」
「それは違うな」リックは、ミランダの意に反して彼女の頬を伝った一筋の涙を指で拭った。「ベッドから最高の友情が生まれることもある」
 ミランダは、泣きじゃくりたいのをこらえ、ほほえもうとした。「ゆうべの私たちは、友情を育むステップを飛ばしてしまったんじゃない?」
「そうかな。でも僕は、君に会ったとき、恋人ではなく、まず友だちになれそうだと思った。そういう友人が、今の僕にはすごく必要なんだ」
 甘い言葉、セクシーなほほえみ、漆黒の瞳。すべてが憎らしい。いつしかミランダは、彼の唇を見つめて祈っていた。お願い、もう一度だけ……。
 何の前触れもなく、リックはミランダのひそかな願いに応え、彼女の唇をふさいだ。友だちになろうと言ったそばから、膝の萎えそうなキスで、私に魔法をかけるなんて。
 抱き寄せられたとき、ミランダはキスに応えることも、彼に腕をまわすことも拒もうとしたが無駄だった。彼女は降参して、リックのミント味の繊細な舌とほのかなコロンの香り、スローダンスとそれ以上にスローな愛の行為がすべてだったゆうべの思い出に浸った。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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