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シークの罠【ハーレクイン文庫版】

シークの罠【ハーレクイン文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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著者プロフィール

 サラ・モーガン(Sarah Morgan)
 イギリスのウィルトシャー州生まれ。看護師としての訓練を受けたのち、医療関連のさまざまな仕事に携わり、その経験をもとにしてロマンス小説を書き始めた。すてきなビジネスマンと結婚し、小さな男の子が二人いる。子育てに追われながらも暇を見つけては執筆活動にいそしんでいる。アウトドアライフを愛し、とりわけスキーと散歩が大のお気に入り。

解説

 エミリーは砂漠の王国カズバーンへやってきた。兄が作った800万ポンドの借金の返済を延ばしてもらうためだ。だがプリンスのザックは耳を貸そうとせず、目の前に立ちはだかると、いきなりエミリーの髪どめを奪った。流れ落ちる金髪を、値踏みするようなまなざしで睨めつけて、あざ笑うように唇を歪める。「君は美しいな……女の魅力で迫ってこいとでも言われたのか」わが耳を疑う彼女に、さらにザックは残酷すぎる提案を強要した。彼の妻となれば兄の借金を帳消しにするというのだ。

 *本書は、初版ハーレクイン・イマージュから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「もし追っ手をつけていなかったら、今ごろ君はあの男たちに好きにされていただろう。護衛兵たちは君を見失い、通りという通りをくまなくさがしていたんだ。どこでもシルクのような髪を振り乱した美しい西洋の女性の話でもちきりだったそうだ。カズバーンには、西洋の女性の一人歩きが危険な地域もある。宮殿にいたほうが安全だとよくわかっただろう。一歩外に出れば、多くの危険が待ちかまえている。照りつける太陽、砂漠、気の荒い部族――」
 そして、ものすごくハンサムなプリンスも。
 胸をどきどきさせながらエミリーはザックを見つめ、たぶん目の前の男性がいちばん危険だろうと思った。困惑と不安の中で、足首に走る痛みに顔をしかめる。「私、ただ家へ帰りたかったの」
 ザックは怒りもあらわにエミリーを見つめた。「そんな格好でどこまで行けると思ってたんだ?」
 エミリーは自分の姿を見おろして、恐怖のあまり息をのんだ。ワンピースの襟元が大きく裂け、白い肌がむき出しになっている。彼女は顔を真っ赤にして服をかき合わせ、ザックをにらみつけた。「ジャケットをとられたのよ。バッグもね」
「背中に流れるその金髪も、服装と同じく露骨に誘っているようだ」そのいらだたしげな口ぶりに、思わずエミリーはかっとなった。
「髪はあなたのせいよ! 宮殿で髪どめをはずしたりするから、なくなったの。市場で帽子を買おうとしたんだけど、見つからなくて」
「帽子なんて旅行客しか買わない。それに、このあたりに店などない」ザックがうんざりした顔をしたかと思うと、急に身を硬くした。二人の耳に、叫び声が近づいてくるのが聞こえた。
 ザックが声をもらしそうになったエミリーの口をすかさず手でふさぎ、体でドアに押しつける。
「静かに!」小声で命じられたとき、エミリーはやっと自分の愚かさに気づいた。こんな見知らぬ町を歩いて家までたどり着けると思っていたなんて。もし彼が見つけてくれなければ――。
 エミリーは目を閉じた。感じられるのは日没直後の蒸すような熱気と、押しつけられたザックのたくましい体の感触だけだった。エミリーを隠そうとする彼の荒い息づかいを聞いていると、しっかりと守られている気がした。初めての経験に我を忘れて男らしい香りを吸いこみ、頼もしくたくましい体に身を任せる。無意識のうちに手足から力が抜けていき、ザックの手にふさがれた唇が開く。ふいに褐色の長い指を味わいたくなり、エミリーは舌で触れた。
 その瞬間、鋭く息を吸いこんだザックがかすれた声で何事かつぶやき、エミリーの唇から手をどけた。そしてなんの予告もなくその手をシルクのような金髪に乱暴にすべりこませると、彼女の顔を上向かせ、鋭い目で見おろした。
 ザックが荒い息をつきながら瞳を怒りと欲望にきらめかせた瞬間、罰するかのような激しさでエミリーの唇を奪った。炎のようなキスの中で、彼女は驚きの叫び声をあげた。
 興奮が全身をつらぬいた。口を巧みにさぐられ、熱い体を押しつけられて、エミリーはすべてをザックにあずけた。温かくたくましい手が背中を撫でおろし、強く抱き寄せる。やわらかな体とがっちりとした体がぴったりと合わさった。
 うっとりとしながらも、エミリーは正気になろうともがいた。しかし押しつけられるザックの体とキスに自制心は奪われ、頭がくらくらし、体に力が入らない。生まれて初めて経験する、あまりにも強烈な感覚だった。二人はどこからが自分でどこからが相手なのかもわからないほど強く抱き合い、夢中になって唇を重ねつづけた。
 またしても大きな叫び声が、白く輝く欲望の靄の向こうから聞こえた。声は鋭い剣が布を切り裂くように、たちまち二人の間に燃えあがった炎を消した。ザックがさっと唇を離して体を引くと、エミリーはよろめきながらも困惑した目で厳しい表情の浮かぶハンサムな顔を見つめた。初めて味わった刺激的な喜びを中断されて、体は不満の叫び声をあげていた。
 全身がうずいていた。彼が始めたことをやめないでほしいと。
 同時に、エミリーはそんなふうに反応してしまった自分を心から恐れた。まったく説明がつかない。彼を嫌いながら、すべてが欲しくてしがみつくなんてことがあっていいのだろうか?
 彼の頬をたたき、体を押し返すべきだった。先に体を離したのがザックだったことに、エミリーは屈辱を覚えた。
「まずかったな」ザックはうめくように言うと、さらに一歩あとずさった。「カズバーンでは、こんなことを人前でしてはいけないんだ」
 どちらがよりショックを受けているのだろうと考えながら、エミリーは無言でザックを見つめた。
 涼しい顔で深刻な過ちを犯したと言わんばかりの彼のほう? それとも、熱いひとときを初めて経験した私のほうかしら? エミリーは今まで、女性としての喜びというものをあまり信じていなかった。年ごろになってから何度かキスをしたことはあったけれど、どれも味気なかった。だから、性にはあまり関心のない女だと思いこんでいた。
 でも、関心がなかったわけではなかった。その事実を教えてくれたのがザックだということに、エミリーはぞっとした。
「面倒なことになる前に帰ろう」ザックが厳しい声で言った。
 面倒なことってなに? ほかの誰かに襲われること? それとも、私に襲われると思っているの?
 きっと彼にとっては、さっきのキスなどなんでもないに違いない。プリンスにつくしたい女性なんて星の数ほどいるのだろう。暗い路地裏で一度キスしたくらいでは、火がつくことなどないのだ。


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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