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この愛を諦め

この愛を諦め


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:900pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ペニー・ジョーダン(Penny Jordan)
 1946年にイギリスのランカシャーに生まれ、10代で引っ越したチェシャーに生涯暮らした。学校を卒業して銀行に勤めていた頃に夫からタイプライターを贈られ、執筆をスタート。以前から大ファンだったハーレクインに原稿を送ったところ、1作目にして編集者の目に留まり、デビューが決まったという天性の作家だった。2011年12月、がんのため65歳の若さで生涯を閉じる。晩年は病にあっても果敢に執筆を続け、同年10月に書き上げた『純愛の城』が遺作となった。

解説

 1902年、英国。運命に翻弄される少女の壮大な愛の物語。故ペニー・ジョーダン、幻の未邦訳作品。

美しい少女エリーは小さな町で生まれ育ち、やがて町の青年ギデオンと恋に落ちた。だが幸せな日々は、母の突然の死で一変する。名家出身の母は駆け落ち同然に結婚したことを悔やみ、娘には自分と同じ道をたどらせるまいとしていた。そこで死に際、しがない青年と恋に落ちた娘に約束させたのだ――二度とギデオンには会うなと。愛する母の遺言にそむくこともできず、エリーは事情を告げられぬまま、涙ながらに彼に別れを告げた。そして家族とも引き離され、裕福な伯母のもとへあずけられる。待ち受けていたのは壮絶な日々だった。

■ロマンス界を牽引した人気作家、ペニー・ジョーダン――2011年の暮れ、突然に飛び込んだ彼女の訃報に編集部は騒然となりました。総発行部数1億部。日本でも多くの読者さんに愛され、まるでその人物が実在するかのような巧みな描写と圧倒的筆力は唯一無二。ペニー・ジョーダンの一ファンとして、もう彼女の新作は読めないのかと無念に思っていたのですが、そんな彼女の別名義による作品が、このたび満を持して刊行できる運びとなりました。舞台は1902年英国。悲しい遺言によって引き裂かれた少女と青年の切ない愛は、胸を震わす、壮大な物語へと広がっていきます。584頁という長さながら、気がつけば物語の世界に放り込まれて無心に読んでしまうこと間違いなし。訳者さんも担当編集も涙した、傑作です。

抄録

「このハンカチは一生このまま取っておくよ」エリーが礼を言って返すと、ギデオンはそうささやき、美しい彼女の瞳に隠すことのできない愛がきらめくのを見つめた。
「ミラーズ・アーケードに寄るのを忘れないでね」岸に着くと、エリーが言った。
「ほんとだ。それに、きみに教えたい特別のニュースがある」
「お店を見つけたの?」エリーは興奮して叫んだ。「まあ、ギデオン……」
「いや、残念だがそっちはまだなんだ。でも、もうすぐ見つかるさ。とくに新しい仕事をもらえそうだからね」
「新しい仕事?」
「そうなんだ。ウィンクリー広場のミス・イシャーウッドから、下宿に手紙が届いていたんだ。家具職人の仕事があるから自宅に来てほしいそうだ」
「ミス・イシャーウッド?」エリーは眉根を寄せた。「でも、あの人は――」
「知ってるのか?」エリーが浮かべた気まずそうな表情を見て、ギデオンも眉をひそめた。
「いいえ、知り合いとは言えないの。名前を聞いたことがあるだけ。母とアメリア伯母が、何週間か前にその人の話をしていたから。遺産を相続したんですって。少し前に町に戻ってきたばかりだそうよ」
「それが眉をひそめた理由なのか?」
「もちろん違うわ! ただ伯母が言うには、ミス・イシャーウッドは亡くなったお父さんとけんかをして家を飛びだし、ロンドンに住んでいたみたい。ロンドンで何をしていたか、誰も知らないのよ」
「興味深い謎だな。よし、きみのためにその謎を解き明かせるよう努力するよ」ギデオンは笑った。
「どうしてあなたのことを知ったのかしら?」
「さあ。手紙には、ただ会いに来てくれと書いてあっただけだ」彼は肩をすくめた。「会って話をすれば、いろいろわかるだろう。誰かが推薦してくれたのかもしれないな。いまだに正当な代金を払おうとしない鉄道会社の大物でないといいけど」言葉を切り、ためらいがちにエリーを見た。「本当は、勉強して建築家になりたかったんだ」
 ギデオンは思いきって打ち明けると、息を止めてエリーの反応を待った。彼女が笑うか、不可能な野心をいまだに大事に持っていることをばかにしたら、ほかの人々にはずっと隠してきた自分のもろい部分が、永遠に傷つくはめになるだろう。
「建築家に?」エリーは畏敬の念をこめて目を見開いた。「まあ、ギデオン」
「もちろん不可能だよ。でもエリー、もしもおれが美しい建物を建てることができたら、一番すばらしいものをきみのために建てるのに」
 ギデオンの声ににじむ情熱にエリーは体を震わせた。彼を守りたいと激しく思い、きらめく瞳と甘い表情でその気持ちをはっきりと告げた。
「おれは分不相応で愚かな夢を持つ、愚かな男なんだ」
「いいえ、ちっとも愚かなもんですか」エリーはきっぱりと言った。「それに、あなたの夢はとても――」
「でも、いまはもうひとつ夢ができた」ギデオンは低い声でささやき、エリーの目を覗きこんだ。「きみがおれの夢だ。きみとふたりで分かち合う人生が」
「わたしも同じ気持ちよ」エリーはおずおずとつぶやいた。
「いい夫になるよ。それに必死に働く。家具職人は建築家のようにすばらしい職業じゃないが、立派に家族を養える。プレストンには裕福な人が多いからね」彼は熱心にそう言った。「おれの名前が権力者たちの耳に入るようにするつもりだ。家具職人を探している金持ちが真っ先に頼みたがるように。誰よりも立派な家具職人になるよ、エリー」
 ギデオンの言葉を聞いているだけで、エリーの胸は愛と喜びで満たされた。ギデオンが語るふたりの将来が実現する日がたまらなく待ち遠しくなった。
 岸に着くと、ギデオンはまず前のふたりとレックスをボートから降ろした。
「ギデオン、やめて!」彼がようやく自分を降ろしに来て、さっと抱きあげると、エリーは息を弾ませて叫んだ。「自分で降りられるわ。ちゃんと――」
「だが、おれはこうしたいんだ。エリー、きみにキスしたくてたまらない」彼はかすれた声で言った。
 彼の唇はわずか数センチしか離れていない。エリーはそれを見つめ、自分でも気づかずにかすかに口を開き、かわいいピンクの舌で唇をなめた。
 ギデオンが喉を絞められたような声をもらす。エリーは銀色の目が黒ずむのを見てとり、自分をおろしかけた手に力がこもるのを感じた。
「エリー……きみが欲しくてどうかなりそうだ」
 エリーは興奮に身を震わせた。


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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