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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・ダンフォース

禁断のときめき

禁断のときめき


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・ダンフォース
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アン・マリー・ウィンストン(Anne Marie Winston)
 ベストセラー作家で、“ロマンス小説界のオスカー賞”ともいわれるRITA賞の最終候補者にもなった経歴を持つ。赤ん坊やあらゆるタイプの動物、これから開花しようとするものすべてを愛し、執筆活動以外の時間は、子供たちの運転手や読書をして過ごす。ちょっとした刺激ですぐに踊りだしてしまう陽気な性格。庭の手入れは、雑草で太陽が見えなくなってからするという。

解説

 シリーニは一人庭園のベンチに座り、ただ時が過ぎるのを待った。
父の政敵の資金集めパーティーにもぐりこんものの、命じられたとおりにスパイ行為を働く気にはなれなかったのだ。
「君は幽霊ではないんだね?」振り返ると、タキシードに身を包んだすてきな男性がいた。
男性はこのホテルの庭園に出るという幽霊の話を皮切りに、歴史や伝説を語り、心から楽しませてくれた。
やがて二人はあらがえぬ魔力に導かれるように踊り、口づけをする。しかし男性の名を聞いたとき、シリーニは慄然とした。
アダム・ダンフォース? 彼が政敵の息子だったなんて!

抄録

「お気の毒に」シリーニは身近な知り合いの死を悼むように言った。「彼女はどこから来た人? 彼女が事故で亡くなったことは身内の人たちに知らされたのかしら?」
「わからない」アダムは言った。「どうだったんだろう」
 沈黙が落ちた。彼らは昔日の若い女性の悲しい運命について思った。
 やがてシリーニが言った。「でも、なぜ彼女だと――ミス・カーライルだと思うの?」
「その一件より前はクロフトヘイブンには幽霊が出るという噂も見たという話もなかった。二十世紀になってから何度も目撃されているんだ。どの場合も彼女が葬られた木の近くで。その木はいまもある」アダムは言った。「僕の先祖の客の一人が幽霊のドレスについて詳述していて、ある歴史学者はそれを十九世紀末から二十世紀はじめの服のデザインに似ていると言っている」
「最後に目撃されたのはいつ?」
 彼らは足をとめた。彼女は卵形の顔を上げてアダムをじっと見た。
「それが不思議なんだ。この九カ月のあいだに三度も目撃されている」
「まあ!」シリーニは両手で腕をこすった。「鳥肌が立ったわ。詳しく聞かせて」
「いいとも」アダムは近くの広場の石のベンチに彼女を導き、腰かけるように促した。彼女が腰を下ろすと、彼は並んで座った。「二月にキンバリーのフィアンセが道の側で彼女を見た。彼女は話しかけてきたが、ザックは彼女が何を言っているのかわからなかった。ザックが言うには、彼女はのみこみの悪い男に腹を立てたのか怒ったように行ってしまったそうだ」
 シリーニは微笑した。アダムは夜の暗さの中で彼女の歯がきらりと光るのを見た。「何を言いたかったのかしら」
「さあね。彼女は五月にまた目撃された。このときには泊まり客が――僕の義理の姉の兄なんだが、デニスはべつの客が寝室をまちがえて入ってきたのだと思ったそうだ。つぎの日になって彼はじぶんが見たのが幽霊だと知ったんだ」
「まあ! それまでにも彼女が家の中に出てきたことはあったの?」
「いや。そのことにみんながショックを受けた。彼女は七月にも現れた。こんどはリーのフィアンセが見た。彼は彼女が“もっと遠く”だか“お父さん”だかと言いつづけていたと断言している」
 シリーニは頭を振った。「かわいそうに。誰か彼女がいまになって何を訴えているのかわかってあげられる人がいればいいのに」
「僕もそう思う」アダムは言った。「彼女がさまようことになんの害もない。びっくりする人間はいるだろうが。しかし彼女はしきりと何かを求めているのだと思う。訴えようとしているのかもしれないし、捜しているのかもしれない」
「彼女を目撃するのがお客さまや、ダンフォース家と血のつながりのない人ばかりだということに何か意味はないかしら?」
 アダムは彼女を見つめた。「その点には気づかなかった」彼は考えこみながら言った。「そのとおりだ。昔のことも調べてみよう。目撃した人間が家族だったのかどうか」
「本当の血族。養子や婚姻によって家族になったのではない人」
「血族」アダムはおうむ返しに言い、彼女の手を取った。「ありがとう。ばかげているかもしれないが、彼女が哀れで、気になって仕方がないんだ」
「少しもばかげていないわ」シリーニはやさしく言った。「とても思いやり深いことよ」
 本当に彼女はそう思っているのだろうか。彼は胸が熱くなり、体を寄せて彼女の両手を取った。「また会ってくれてとてもうれしい」
 彼女はまつげを伏せた。「本当はいけないことだわ。父が知ったら……」
「いっそ引き合わせてくれないかな。そうすればこそこそすることはないし、君も気をもまなくてすむ。選挙まであとたった二カ月だ。僕たちが控えめにしていればお父さんだって」
「アダム、あなたはわかっていないわ」彼の手の中で彼女の指がこわばった。「父は理解しない――いえ、理解しようとしないわ。私があなたと会っていると知ったら、二度と会うのを禁じるわ」
 彼女の口調にアダムは胃が縮んだが、無理にも微笑した。「まさかそんな。僕がなんとか――」
「いいえ! 何もしないで。さもなければ私は二度とあなたに会わないわ」
 彼女はアダムの手から手を引き抜き、立ちあがった。明らかにひどく動揺していた。
 アダムは座ったまま彼女のこわばった背中を見ていた。何を言ったらよいかわからなかった。彼は絶えずうしろを気にしているようなのはいやだった。
 シリーニがこちらをむいた。アダムは月明かりの中、彼女の頬に一筋の涙が光っているのを見た。
「あなたまで悲しくさせたくないの」
「わかった」アダムは立ちあがって彼女を抱き寄せた。シリーニは小さくやわらかく、彼女が彼の肩に腕を投げかけ信頼しきって体を預けると、彼の心臓ははじけて胸から飛びだしそうになった。「君のやり方でいこう。だが約束してくれ。お父さんに会うのを禁じられるようなことはしないと」
「もちろんよ」彼女は体を離して彼を見あげた。「アダム、あなたとめぐり合えたのは私の人生の中で一番すばらしい出来事だわ」
 アダムはシリーニの美しい顔と、訴えるような大きな目を食い入るように見つめた。魂を奪われた。「僕もそうだ」彼は頭を下げ、唇を重ねた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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