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別れの代償

別れの代償


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジャクリーン・バード(Jacqueline Baird)
 趣味は油絵を描くことだったが、家族からにおいに苦情を言われ、文章を書くことにした。そしてすぐにロマンス小説の執筆に夢中になった。旅行が好きで、アルバイトをしながらヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアを回った。英国に戻ったときに結婚。二人の息子に恵まれ、現在も生まれ故郷のイングランド北東部に夫とともに暮らしている。「二人のバレンタイン」と「恋は強引に」がお気に入りの作品だという。ロマンティックタイムズ誌の賞の受賞歴があり、ベストセラーリストにもたびたび登場する。

解説

貧村で息子と暮らす日々に、アビーは満足していたはずだった。だが偶然村を訪れた、大富豪の元夫ニックとの再会が、彼女の運命を狂わせる――。ギリシア人の夫との結婚は最初はおとぎ話のようだったが、彼が外で遊ぶようになり、やがてベッドも冷たくなった。しかも妊娠がわかると罵倒され、追い出されたのだ……。あれから4年、いまになって現れたニックに再婚を迫られて、断れば村への融資を延期すると脅されてしまう。

抄録

 よくそんな批判ができるわね。アビーのグリーンの瞳が怒りで暗くなった。「あなたはアドバイスできる立場にないわ」
 彼の唇が引きつった。「そう思われても仕方ないが、ぼくはあの子の父親だ。心配するのが当然だろう」
 アビーは喉まで出かかった無遠慮な言葉をのみ下し、いちばん手近にあって大きなものを彼にぶつけたいという衝動を抑えるために、ソファまで行って座った。「あなたがわたしの子供の父親だとは知らなかったわ」
「否定してもむだだよ、アビー」彼女の青ざめた顔をじっと見つめながらニックは静かに言った。
 ニックの目に浮かぶのは優しさ? まさか……。
「この前ここから帰ったあと、いろいろと調べたんだ。きみはあの子にカーディスの名をつけた。そのことからも、ぼくが父親であることは明らかだ」
「信じられないわ! 認知もしなかったくせに。あなたが父親? 笑わせないで。父親という言葉の意味も知らないんでしょう」
「言いたいことはそれで終わりかい?」ニックは静かにきき、品定めでもするようにゆっくりと熱いまなざしをアビーに注いだ。
 アビーは、急に自分のくたびれたジーンズや絵の具のしみだらけのスエットシャツが気になった。言いあいなどやめて、一刻も早く彼を追いだすべきだ。彼の怒りには向きあえるけれど、物静かなニックはそれよりもはるかに手強い。「ええ、すんだわ」古い話を蒸し返してもなんの得にもならない。「だから、あなたも早く用件を言って出ていって」
「座ってもいいかな?」
「ノックもしないで入ってきたくせに、やけに礼儀正しいのね」アビーは皮肉った。
 ニックは何も答えず、彼女の隣に腰を下ろした。そしてアビーが抵抗もできないうちに両手をとり、彼女が引き抜こうとすると指の力を強めた。
「お願いだ、アビー。ぼくの話をきいてくれ」
「言ってみて」メラニーから情報を得たばかりなので、アビーの好奇心がわいた。どんな言いわけをするか聞いてみるのも一興だ。アビーは期待するような表情を浮かべ、あえて彼と目を合わせた。グレーの瞳には一瞬、勝ち誇っているとも見える表情が浮かんだが、すぐに消えた。
「ぼくはきみにひどい態度をとった。それを許してもらおうとは思わない。しかし、いつかは忘れさせたいと願っているよ。ぼくはばかだった。たいへんな過ちを犯し、そのために何年も苦しんだ。だが真実を知ったいまは、きみとぼくらの息子に償いをしたいんだ」
 過ちですって。そのためにわたしは身を滅ぼすところだったというのに、厚かましいにもほどがある。アビーは意志の力をかき集めてなんとか座っていた。深呼吸して心を静め、甘ったるい声で尋ねる。「償う? 何を償うの?」
「もう一度きみと結婚したいんだ。過去のことは水に流して。ぼくらの息子のためにふさわしい家庭を築くんだよ」ニックは大胆に言ってのけた。
 アビーはさっと顔を上げ、ニックをにらんだ。彼はほほ笑んでいる。なんてずうずうしいの! メラニーから話を聞いていても、こうして実際にプロポーズされるのはショックだった。アビーの唇が動いたが、怒りのあまり言葉にならなかった。
 ニックは彼女の沈黙を誤解し、アビーを抱き寄せて唇を近づけた。アビーが、体が麻痺して動けずにいるうちに彼の唇が頬を撫でた。耳に温かい息が吹きかかるのを感じてわれに返り、ニックがしようとしていることに気づいた。アビーは彼を押しやり、走るようにして部屋の反対側に行った。
 窓の下枠をつかむ手が白くなっている。胃がむかむかし、アビーは深呼吸をした。見慣れた入江の景色、朝の日差しに金色にきらめく海が、高ぶった神経をしだいに静めてくれた。
 過ち。また結婚しよう。キス。そうよ、彼はもっともらしい作り話をしようともしない。なんてうぬぼれの強い男性だろう。キスひとつで、昔の女をとり戻せると思っているのだ。そんなことさせないわ。
 ニックが背後に来た。彼の体のぬくもりが感じられる。アビーは決然と背筋を伸ばし、ゆっくりふり向いて、彼がそれ以上近づくのを片手で制した。
「アビー、どうか最後まで聞いてくれ」ニックは長い腕を脇に垂らしたまま続けた。「あんなふうにきみの唇を奪うつもりはなかったんだ。でも、あまり久しぶりだから、誘惑に勝てなくて……」
「いつものことね」アビーは苦々しげに言葉をはさんだ。この人はどんな女性に対する誘惑にも勝てないのだ。
「きみが何を考えているのかわかるよ。だが違うんだ。チャンスさえくれたら証明するよ。きみとジョナサンが必要なんだ。きみを幸せにするためなら、なんでもする。信じてくれ、アビー。きみに心の準備ができていないうちは関係を迫ったりしないよ」
*この続きは製品版でお楽しみください。

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