マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクション恋愛小説ロマンス小説

甘やかな陥落

甘やかな陥落


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★★1
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


著者プロフィール

 ステファニー・ローレンス(Stephanie Laurens)
 セイロン(現スリランカ)生まれ。五歳のとき、一家でオーストラリアのメルボルンに移り住む。大学では生化学を専攻して博士号を取得、その後、夫とともにロンドンに渡り、四年を過ごしたのち、帰国。研究活動に従事しつつ、十代のころから愛読していた歴史ロマンス小説を書き始める。現在ではアメリカでも人気が沸騰し、ベストセラーリストの常連となっている。

解説

 彼にすてきな花嫁候補を紹介するのが、わたしの役目――ベストセラー作家が華麗に紡ぐ、ヴィクトリア朝ロマンス。

世にいう嫁き遅れのヘンリエッタは、社交界での長い経験を活かして、若い令嬢たちが放蕩者に騙されないように助言をしている。あるとき彼女は、色男として名高い貴族のジェームズが妙に慌ただしく友人に結婚を迫っていることに気づく。ヘンリエッタの忠告により、友人は求婚を断り、事は丸く収まった。ところが、怒り狂ったジェームズは彼女の前に現れ、お節介を罵った!彼は女性を騙すつもりなどなく、領地と使用人を守るために4週間以内に結婚しなければならないのだ。責任を感じた彼女は、花嫁探しを手伝うことになり……。

■お待たせしました!愛され度ナンバー1のヒストリカル作家ステファニー・ローレンス、待望の初邦訳作品が登場します。しかも、本作はローレンスの代表作といえる〈シンスター・シリーズ〉の関連シリーズ、〈The Cynster Sisters Duo(シンスター姉妹2部作)〉の1作。ヒロインのヘンリエッタは29歳。社交界での経験と幅広い人脈をいかして、放蕩者たちの本心を見破り、若い令嬢たちに結婚の助言を与えるため、“縁壊し屋”と呼ばれています。そんな彼女がひょんなことから兄の親友ジェームズの花嫁探しを手伝うことに。さて、“縁壊し屋”の縁結びはどうなるのでしょうか。ファンにはおなじみのシンスター家の面々も八面六臂の活躍。懐かしい再会に歓喜します!

抄録

 唇をなめ、彼女の目を見つめながら、気がつくとジェームズは口を開いていた。「ずっと考えていたんだ……キスのことを」
 ヘンリエッタは驚いて彼を見つめた。「キス?」
「そうだ」ジェームズは自分を指さした。「社交界のプレイボーイ、忘れたのか?」みずからの過去がこれほど役立つとは思ってもいなかった。
 ヘンリエッタは眉間にしわを寄せた。「どういうこと?」
「いいか、キスにはいろいろな種類がある」ジェームズは声をひそめる。「じつにいろいろな種類のキスが。令嬢たちと一緒にいるときに、ぼくは考えていた。どんなキスなら満足してもらえるのか? つまり、どの程度のキスなら」
 ヘンリエッタの顔に浮かんだ表情は、どう答えていいのかさっぱり見当もつかないということを言葉よりも如実に物語っていた。
 予想どおりだ。「よかったら」ジェームズは切り出した。彼女が鵜呑みにしてくれることを願いながら。「実際にやってみせよう。そうすれば、若い令嬢に対するキスと経験豊富な人妻を誘惑するキスがどれほど違うのか、きみもよくわかるだろう」
 案の定、ヘンリエッタは疑うような表情を見せたが、それも計算のうちだった。ジェームズはため息をついた。「こんなことを頼むのは度が過ぎているとわかっている。だが、きみはぼくに協力を申し出てくれた。それに、そうでもしなかったら、ぼくはどうやって確かめればいいんだ? もしぼくがまちがっていたら、どこかの令嬢をコルセットが外れるほど動揺させてしまうかもしれない」
 ヘンリエッタは鼻で笑った。「若い令嬢のほとんどはコルセットを着けないわ。あなたなら、よく知っているだろうけれど」
 ジェームズは目を丸くして、どうにか真顔を保った。「それは知らなかった。言っただろう、ぼくは社交界のプレイボーイだ。ぼくのような男が相手にするのは、もっぱら経験豊富な人妻なんだ。きみも知ってのとおり、彼女たちは概してコルセットを着けている」ヘンリエッタの目を見つめながら、よどみなく続ける。「だが、ぼくたちはコルセットについて話すためにここにいるわけではない」
 ヘンリエッタはわずかに目を細めてこちらを見つめていたが、やがて、うれしいことに小さくうなずいた。「わかったわ。一度だけ若い令嬢に対するキスを。一度すれば、あなたが勘違いしているかどうかを教えてあげられるわ」
 ジェームズの唇の両端が吊りあがる。そこに必要以上に勝ち誇った表情が浮かんでいたとしても、ヘンリエッタには気づく暇もなかった。華奢な腰に腕を回すと、ジェームズは彼女を抱き寄せた。それほどそばに引き寄せずに、彼女が許すであろう距離に。そして、同時にもう一方の手で彼女のあごを上に向けると、彼女が息をついて声をあげないうちに、すばやく顔を近づけて唇を重ねた。
 やさしく。
 もっと深く彼女を味わいたい、唇をこじ開けて貪り尽くしたい――口だけでなく彼女のすべてを――という欲望に押し流されそうになりつつも、ジェームズは必死に抗い、欲望を封じこめた。なぜなら、彼にとっては軽いキスにとどめておくことが何よりも大事だったからだ。あたかも夢のごとく、このうえなくうっとりするような感覚として脳裏に刻みこむことが。
 自分が何をしているのかは、はっきりわかっていた。何をするつもりなのかは。それは、これまでとはまったく異なる誘惑だった。少なくとも彼のようなプレイボーイにとっては。
 これほど軽く触れただけで誘惑するのは、生まれてはじめての試みだった。唇をかすめただけで。水晶のようなはかなさで焦らして。
 まつ毛の下からちらりと見ると、ヘンリエッタは目を閉じていた。彼のキスに、その感覚に心を奪われているようだった。ジェームズが望んでいたとおりに。
 ヘンリエッタは息ができなかった。何も考えられなかった。けれども、いまはそれでもかまわない。考えることなど大事ではないから。大切なのは感じること、彼のキスがもたらす刺激を吸収することだった。キスをするのは、はじめてではない。何度か経験したことがある。それでも、一度としてこんな感覚を味わったことはなかった。これほど抗いがたいものではなかった。
 たとえこのキスが――ジェームズの“若い令嬢”とのキスが――おとぎばなしのように現実とはかけ離れているとしても。
 このキスには、約束や希望といったものが満ちあふれていた。
 彼の唇が触れるだけで……みずからの唇が疼いた。極上のシャンパンから細かい泡が立ちのぼるかのごとく、全身の神経が甘い期待にざわめいた。ヘンリエッタはジェームズを強く意識していた。これほど間近で自分を包みこんでいるのに、ちっとも触れていない彼の体、そのたくましさを……唇以外は。みだらで、しなやかで、心を乱す唇。
 ゆっくりと、静かに、ジェームズは顔を上げた。
 口を開き、かろうじて息を吸いながら、ヘンリエッタは彼を見あげる。
 彼の目――溶けたチョコレートのような瞳――には、まったくよこしまな表情はないように見えた。その視線がゆっくりとヘンリエッタの顔をよぎり、一瞬、まだ疼いている唇で止まったかと思うと、やがてジェームズは彼女の目を見つめ、片方の眉を上げた。「どうだった? 合格か、それとも……?」
 ヘンリエッタは大きく息を吸いこむと、後ろに下がって、彼の腕から逃れた。そして、無理やり頭を働かせながら、何か気の利いた言葉を探した。けれども結局は、短くうなずき、息を弾ませて「合格よ」と答えることしかできなかった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。