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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン文庫

傷ついても愛したい

傷ついても愛したい


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アン・マリー・ウィンストン(Anne Marie Winston)
 ベストセラー作家で、“ロマンス小説界のオスカー賞”ともいわれるRITA賞の最終候補者にもなった経歴を持つ。赤ん坊やあらゆるタイプの動物、これから開花しようとするものすべてを愛し、執筆活動以外の時間は、子供たちの運転手や読書をして過ごす。ちょっとした刺激ですぐに踊りだしてしまう陽気な性格。庭の手入れは、雑草で太陽が見えなくなってからするという。

解説

「ぼくと結婚してくれないか。君がほしい…」突然のトムの熱い求婚に、タニスは呆然とした。親友でトムの妻でもあった女性が亡くなってかれこれ3年になる。トムは妻の代わりになる女性を求めていて、タニスも母の介護で、経済的な窮地に追いつめられている。結婚はお互いのためになると彼は言うのだ。だが、タニスはトムとベッドを共にすることに悩んでいた。磁石に惹き寄せられるように惹きつけられているのに、彼に愛されていないと知っていたからだ。

抄録

 トムはタニスを家の前まで送ると言って聞かなかった――ふたりの家は数メートルとはなれていないのに。トムはすぐには帰りたくないような顔をして、タニスの家の柵に囲まれた小さなポーチに立っていた。
「夕食はどうだった?」タニスはたずねた。
 トムは肩をすくめた。「じつを言うと、あまり楽しくなかったんだ」
 タニスは黙っていた。夫婦間の問題を知りたいとは思わなかったが、トムはだれかに話さずにはいられないようにみえた。
「メアリーと……治療法をめぐって意見が対立してね」トムはタニスから目をそらして、ズボンのポケットに両手を突っこんだ。広い肩をいからせて、深いため息をもらす。「怖くてたまらないんだ。メアリーがいなくなったらと思うと。もし、彼女が死んだら――」
「しいっ」タニスは衝動的にトムの体に片方の腕をまわし、もう片方の手で唇をふさいだ。「悲観的になっちゃだめよ。まだ時間はあるわ。きっとお医者さまが彼女を説得して……」タニスのことばが途切れた。
 トムはタニスの肩に両手を置いた。それからゆっくりと手を伸ばして唇をふさいでいるタニスの手を取り、その手を自分の肩に載せた。「タニス。きみが必要なんだ」トムはタニスの肩をぐいとつかんで引き寄せた。
 タニスはどきりとした。心臓が二倍の速さで打ち出した。彼は慰めてほしいだけよ、そう自分に言い聞かせる。慰め。そう、慰めがほしいだけ。トムに抱き締められると、タニスは彼の首に両腕をまわした。「トム、わかるわ、わかるけど――」
 そのとき、トムの唇がタニスの唇にふれた。
 電流にふれたようなショックがタニスの全身を駆け抜けた。タニスは彼からはなれようとしたが、トムに強く肩をつかまれていて身動きできなかった。トムの顔が近づいてきて、ふたたび唇を奪われた。いけないとわかっているのに、どうしてこんなに感じてしまうのだろう? でも、ほんとうにいけないことなの? こんなに感じるのがどうしていけないことなの? タニスは抵抗しなかった。いや、できなかったのだ。
 タニスはトムの髪に指をからませ、唇を開いた。
 トムがのどの奥でうめいた。タニスの背中に両手を滑らし、自分の体を強く押しつけながら、いっそう激しいキスをする。
 いったいいつまでそうしていたのだろう。短かったのか長かったのかタニスにはわからない。
 しかし、小さな罪悪感が叫び声に変わるにはじゅうぶんだった。“この人はあなたの親友のご主人よ!”
 タニスはトムのどんな刺激的な要求にも応えたかったが、わずかに残っていた理性がトムの唇から唇を引きはなさせた。
「いけないわ、トム」
 タニスは息を切らしながら訴えた。トムの動きはぴたりと止まったが、それでもタニスをはなそうとはしなかった。
 もう一度タニスは言った。「トム、あなたはとても魅力的な男性だわ。でも、いまはメアリーのことを一番に考えなくちゃ。このことを彼女が知ったら、きっと傷つくわ」
「そうだな」トムはタニスの額に自分の額を押し当てた。「どうかしていたよ」
「満月のせいよ」タニスは言った。「慰め合っただけ。さあ、はなして。このことはなかったことにしましょう」
 トムはうなずいたが、なかなかタニスをはなそうとはしなかった。ついにタニスはトムの肩を両手で軽く押した。トムは彼女をはなして後ずさり、沈痛なため息をもらした。「タニス、きみはかけがえのない人だ。メアリーとぼくの一番の親友だ。ばかなまねをしてしまってすまない」
 トムは片手を上げて指先でそっとタニスの頬をなぞると、くるりと背を向けて家の前までつづく芝生を大股に横切っていった。
 その夜のことはそれ以後二度と口にされることはなかった。トムのメアリーへの愛は疑う余地がなく、トムはメアリーが亡くなるまで献身的に看病をつづけた。
 トムが立ち去ってふたたびひとりになると、タニスはリラックスしようとした。そうしようと努力した。しかし、もはやジャグジー・バスを楽しむことはできなかった。小声でぶつぶつ言いながらタオルを体に巻き、バスタブから出る。コンクリートのスペースを通って地下の娯楽室にはいり、部屋のなかを見渡した。バスケットからあふれている汚れた洗濯物の山や、クリスマスのデコレーションや、がらくたをうんざりしたように見る。これを見たら、ジェレミーはかんかんになって怒っただろう。わたしの欠点をひとつひとつあげつらい――もうそんなことを考えるのはよしなさい。タニスは自分をいさめた。確かに散らかっているかもしれないけれど、どこになにがあるかちゃんとわかっているし、先週掃除機をかけたばかりだから汚れてなんかいないわ。
 タニスは若い情熱を燃え上がらせた日々を苦々しい気持ちで思い出した。彼女は夫のジェレミーを愛していた。だからこそ、完璧な家事を要求する夫に不満を抱くこともなく、柔順に従っていたのだ。夫に気にいられようとへとへとになるまで働いたが、決して夫は満足してくれることはなかった。ジェレミーはいつもなにか足りないところを見つけては、タニスを激しく非難した。
 もう二度と男性の言いなりになったりしない。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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