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ハートブレイカー

ハートブレイカー


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャーロット・ラム(Charlotte Lamb)
 第二次大戦中にロンドンで生まれ、結婚後はマン島で暮らす。大の子供好きで、五人の子供を育てた。ジャーナリストだった夫の強いすすめによって執筆活動に入り、百作以上の作品を著す。二〇〇〇年秋、多くのファンに惜しまれつつこの世を去った。

解説

夫の家から逃げ出して、3年が経った。幼い娘とロンドン郊外の小さな隠れ家に落ち着いたものの、カロラインはいまだに夫への恐怖に怯えている。夫ピーターはアルコール依存症で、酔うと暴力をふるった。カロラインは娘を守りたい一心で家を飛び出したのだった。暗い過去の思いにとらわれていると、ふいに誰かがが戸を叩いた。夫の従兄弟のニック!? どうしてここがわかったのかしら。憎しみを宿した彼の目が光る。「ピーターが死んだ……」君のせいだと言わんばかりの彼は、今でも信じているのだろう――カロラインはひどい妻だと、亡き夫が吹聴していたとおりに。

■2000年、世界中のファンや作家仲間に惜しまれつつこの世を去った偉大なロマンス小説家シャーロット・ラム。日本で刊行された作品は100冊以上を超え、今もたくさんの女性に読み継がれています。今作は1983年刊行の貴重な初期作品です。

抄録

 十一時頃、三人はドライブインに立ち寄った。ケリーはコークとビスケットをあっという間に平らげて、娯楽室へ行ってしまい、カロラインは熱すぎるコーヒーを前にして、ピンボールゲームのほうを見ていた。
 カロラインはニックがじっと自分を見つめているのを強く意識していた。ゆるくウェーブのかかったやわらかな髪に太陽が当たってきらきらと輝き、風がその髪をもつれさせていた。
「すばらしいお天気ね?」ほつれた髪を直しながら、カロラインは明るく言った。
「そうだな」声には嘲笑が含まれていて、青い目はカロラインをさらに神経質にさせるように、彼女の手の動きを追った。
「わたしたちが行くことをお母さまはご存じなの?」
「ゆうべ電話をかけた」ニックはコーヒーを口へ運んだ。「泣いておられたよ」
 カロラインは下くちびるをかんだ。「ああ、かわいそうなお母さま!」
「そのとおりだ、かわいそうに」ニックはわざとゆっくり言った。「ヘレンはきみが大好きなんだから」
「わたしだってお母さまが大好きよ」カロラインは挑むようにニックを見つめた。
「そうかい?」
「そうよ!」
「なのに、きみはこの三年間、クリスマスカードさえ寄こさなかった」片方の眉がつりあがった。
 カロラインは混み合っている店内へ目をそらした。ピンボールゲームの機械をのぞきこむケリーの姿が見える。
「広告代理店での仕事を詳しく教えてくれないか?」
 カロラインは我に返って、「コピーライターなのよ」と答えたが、じれったそうに付け加えた。「私立探偵が調べあげているんでしょうに」
 ニックは広い肩をすくめて口をゆがめた。「きみがどんな石けんを使っているかもね。なにしろ、とてもきちょうめんな男だったから」
「笑いごとじゃありません」カロラインがぴしゃりと言った。「私立探偵にわたしをかぎまわらせる権利はあなたにはないのよ。私生活がそんな人にのぞかれていたのかと思うと、胸が痛むわ」
「きみの私生活は謎のままさ」青い目は冷酷だった。「そういう方面の情報を探偵は仕入れそこなったんだ」
「はっきりさせてちょうだい……。たった今、どんな石けんを使っているかまで調べたっておっしゃったばかりよ!」
「でも、彼はきみがベッドを共にしている男の名前をつかむことはできなかった」ニックはひとことひとことをゆっくり言い、カロラインの顔にピンク色の洪水が押し寄せるのを楽しむように見ていた。
「あてがはずれて、さぞがっかりなさったことでしょうね」カロラインは嫌味たっぷりに言った。
「もちろん、きみと雇い主が慎重な約束をかわしているということは考えられるがね。探偵の話によると、彼は見かけは悪くないそうだ」
「まあ、ばかなこと言わないで!」
 ニックはにやりとした。「これで、フレイ・フォレスターが安心することだろう」
 カロラインは身を固くした。ピーターの嘘をこれ以上ニックに信じさせておくことはできない。噂は医者であるフレイの致命傷にもなりかねないのだから。「フレイとはなんでもなかったわ。あれはピーターの作り話なの。わたしは誰とも不倫な関係を持ってはいないわ」
 ニックは息をひそめて笑ったが、少しもおかしそうではなく、厳しい目でカロラインを見ていた。
「本当なのよ」カロラインは言い張った。「他の人に目を移したことは一度もないわ」
「誓って言えるのか、カロライン?」嘲笑を含んだ声と青い目にすっかり縮みあがり、首筋とこめかみのあたりで脈がどきどき打つのを感じながらカロラインは目をそらした。
 あれは晩秋のたそがれ時だった。カロラインが庭でばらの花を切っている時、ニックが彼女を呼びに来たのだった。蛾がひらひらとあたりを飛んでいた。ニックと並んで歩いている時、カロラインはとても神経質になっていて、蛾が顔の前をかすめると、声にならない叫びをあげた。ニックは驚いて彼女の上にかがみこみ、「どうしたんだい?」と尋ねた。蛾が飛んできたぐらいで大騒ぎをしたのがばかばかしくなり、微笑を浮かべてカロラインが顔をあげた時、ニックがくちびるを寄せてきた。過去も未来もない、気違いじみた感情に身を委ね、カロラインはくちづけを返してしまった。しかし、ニックはくちづけを急にやめてカロラインを突き飛ばし、ひとことも言わずに去って行ったのだった。
 それからニックはカロラインを避け続けた。自分のくちづけにあんなふうに応じる女なら、他の男と浮気をしても不思議ではないと思ったらしい。カロラインは後悔した。自ら不利な証拠を提供してしまったのだから。どんなことがあってもしてはいけないことは、“結婚してからわたしが見ていたのはあなただけよ”と告白することだった。彼はその言葉を信じてくれるだろうか? たとえ信じてくれたとしても、そんな大それたことがどうしてできよう。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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