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大富豪と偽りのシンデレラ

大富豪と偽りのシンデレラ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイア
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジャニス・メイナード(Janice Maynard)
 8歳のときすでに読書と物語を書くことに夢中だった。作家になるため2002年に小学校の教員を辞め、のちにUSAトゥデイのベストセラー作家となる。グレート・スモーキー山脈近くに夫と共に暮らし、ハイキングや旅行を楽しんでいる。

解説

あの日、身分違いの恋に終止符を打ったのはあなたを愛していたから。

姉の死後、姪を引き取ったハッティは一縷の望みを胸に、かつての恋人で大富豪ルックのオフィスを訪ねた。赤ん坊を抱いたハッティを、黒い瞳が射るように見つめる。彼女は挨拶もそこそこに切り出した。「わたしと……結婚してほしいの」そしておずおずと打ち明けた。卑劣な義兄一家に姪を渡したくない一心で、“資産家の婚約者がいる”と嘘をついてしまったことを。いちだんとセクシーさを増したルックのハンサムな横顔は険しかった。こんなばかげた頼み事、承知してくれるはずがないわよね……。「いいだろう。すぐにぼくの家に引っ越すんだ」冷たい光を宿すルックの目に、欲望の炎がともった。

■USAトゥデイのベストセラー作家としてその名を知られる実力派ジャニス・メイナードが、ディザイアから鮮烈デビュー! 身分違いの恋を諦め別れを告げた元恋人に、やむにやまれぬ事情から便宜結婚を頼んだヒロイン。あっさり承諾した彼の本当の目的とは?!

抄録

 ドアが閉まるとすぐに、ルックは革張りの椅子に腰を下ろした。そして両手を組んで椅子の背にもたれかかった。「話を聞こうか、ハッティ。昔捨てた恋人にわざわざ会いに来るなんて、いったいなにがあったんだ?」
 ハッティは顔を赤らめ、膝の上で両手をねじりあわせた。「遠い昔のことよ。蒸し返す必要はないでしょう」
 ルックは肩をすくめた。「いいだろう、いまの話をしよう。どうしてここに来たんだ?」
 ハッティは唇を噛み、ためらいがちに彼と目を合わせた。「姉のアンジェラをおぼえている?」
 ルックは眉をひそめた。「よくおぼえていないが、たしかきみたちはあまり仲がよくなかったはずだ」
「両親が亡くなったあと、親密になったの」
「知らなかったよ、ハッティ。ご両親のことは残念だったね」
 一瞬、ハッティの目に涙が光ったが、彼女はまばたきしてそれを隠した。「ありがとう。父はわたしが大学を卒業してから数年後に亡くなったの。肺癌だった」
「お母さんは?」
「母は父がそばにいないとだめな人だった。父がいない世界は耐えがたかったらしいわ。心を病んで、施設に入らなければならなくなり、結局そのまま最期を迎えた。姉とわたしはふたりが育った家を……父と母の唯一の財産を処分したけれど、母の治療にかかる費用の支払いには充分ではなかったの。わたしは自分の貯金で穴を埋めるしかなかった」
「アンジェラは費用を負担しなかったのか?」
「姉は、母の世話は州政府にまかせるべきだと考えていたの。とりわけ、母がわたしたちのこともわからなくなって、別の世界に閉じこもってしまったあとは」
「その考えに賛成する人も多いと思うが」
「わたしは違うわ。母を捨てられなかった」
「お母さんはいつ亡くなったんだ?」
「去年の冬よ」
 ルックはハッティの左手を見たが、指輪はなかった。彼女の夫はそのあいだどうしていたのだろう? 義理の母親を助けようとせず、見捨てたのか? それに子供も?
 ふいにすべてがはっきりした。ハッティは金を借りに来たのだ。彼女は自尊心が強く、自立心旺盛だった。そのプライドを捨ててぼくに助けを求めるなんて、よほど追いつめられているのだろう。
 ルックは机に両肘をついて身をのりだした。ハッティをこのまま追い払っても、ふたりの過去を知る者なら誰も彼をとがめないはずだ。だが、それでもルックは彼女を見捨てられなかった。子供がいるならなおさらだ。それに狭量かもしれないが、ハッティに恩を売るのは悪くなかった。一種の因果応報として。
「つらい思いをしたんだね」ルックは静かに言った。「必要なだけ無利子で貸そう。質問はいっさいしない。古い知り合いのよしみだ」
 ハッティはあっけにとられた顔になった。「なんですって?」
「ここに来たのは金を借りるためなんだろう? 遠慮はいらないよ。古い友達を助けるために使わないのなら、いくら銀行にあずけていたところで無意味だからね」
 ハッティは屈辱に頬を染めた。「違うわ」彼女はさっと立ちあがって歩きまわりはじめた。「あなたのお金なんてほしくないわ、ルック。違うのよ」
 ルックも立ちあがり、机をまわってハッティと向きあった。そばに近づくと、彼女がつきあっていたころと同じ香水をつけていることがわかった。つらい記憶を払いのけ、ルックは両手をやさしく彼女の肩に置いた。
 ハッティがぞくりと身を震わせた。
「それなら教えてくれ。ぼくになにを求めているんだ? きみの望みはなんだい?」
 ハッティは顎を上げた。彼女は女性としては長身で、目の虹彩はコニャック色だ。いま彼女の息は乱れ、喉もとの血管が脈打っているのがわかる。
 ルックは彼女をやさしく揺すった。「話してくれ」
 ハッティが唇をなめた。
 その瞬間、離ればなれになっていた日々は霧のように消え、かつて親密だったころの記憶がいっきに押し寄せてきた。
 ルックは思わずハッティの頬にキスをした。そのキスにふたりとも驚き、顔を見合わせた。チェリーのリップグロスの香りに気づき、ルックは、これもかわっていないと考えた。
「ハッティ?」返事を促すように、ルックは呼びかけた。
 ハッティの顔にあきらめに似た感情が浮かんだ。長い沈黙ののち、彼女は眉間にしわを寄せてため息をついた。「わたしと結婚してほしいの」
 ルックはまるで熱いものにでも触れたかのように、ハッティの両肩からさっと手を放した。警戒した表情のままだったが、ほんの一瞬、その目に激しい感情がきらめき、すぐにまた消えた。
 ルックは高級なスーツに包まれた肩を怒らせた。イタリアで祖父が興し、いまではアトランタに本社をかまえるカバロ家のファミリービジネスは、ルックたち兄弟に富をもたらした。そのスーツの精妙に織られたウールの生地は、一族の工場の製品に違いない。
 ルックは口もとをゆがめ、かすかに軽蔑の表情を浮かべた。「いまのは冗談か? 隠しカメラを捜すべきなのかな?」
 ハッティは顔が熱くなるのを感じた。「冗談ではないわ。とても真剣なの。ディーディーの安全を守るために、わたしと結婚してもらわなければならないの」
 ルックは顔をしかめた。「どういうことだ? あの子の父親がきみを脅しているのか? きみはその男に傷つけられたのか? 教えてくれ」
 ルックの激しい口調に、ハッティは身を震わせた。「そういうことではないわ。でも、複雑な事情があるのよ」


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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