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氷の中の真実【ハーレクイン文庫版】

氷の中の真実【ハーレクイン文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★☆☆☆1
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著者プロフィール

 ジャクリーン・バード(Jacqueline Baird)
 趣味は油絵を描くことだったが、家族からにおいに苦情を言われ、文章を書くことにした。そしてすぐにロマンス小説の執筆に夢中になった。旅行が好きで、アルバイトをしながらヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアを回った。英国に戻ったときに結婚。二人の息子に恵まれ、現在も生まれ故郷のイングランド北東部に夫とともに暮らしている。「二人のバレンタイン」と「恋は強引に」がお気に入りの作品だという。ロマンティックタイムズ誌の賞の受賞歴があり、ベストセラーリストにもたびたび登場する。

解説

イタリアの貴族だった、母の愛人が遺した遺産のことで、ある日、若い女性がロッコという美男をともなって現れる。眩いばかりの美貌の男に熱いまなざしをむけられて、胸苦しくなるマーリーンだったが、心はすぐに踏みにじられた。マーリーンこそを貴族の愛人と決めつけたふたりが遺産を奪うために、彼女をロッコに誘惑させようと企んでいるのを立ち聞いてしまうのだ。金づるを探す卑しい女と彼から蔑まれ、マーリーンの唇はわなないた。

*本書は、ハーレクイン・クラシックスから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 ロッコの手のぬくもりが伝わり、なんとも言えない男の香りが鼻腔を満たした。めまいを感じながらロッコの日焼けした顔を見上げ、マーリーンは一瞬、彼の言うことならなんにでも賛成したくなった。だが、そのときだれかが外から入ってきて、ひんやりした空気が流れこみ、正気に戻った。「だめよ、もうすべて手配してあるんですもの」
 マーリーンは、巧みに車を操るロッコを助手席から横目で眺めた。鷹のような横顔、ハンドルを軽く握る長い指、ギアをシフトするときの腿の筋肉の動き、それらすべてが落ち着かない気分をかき立て、ついで、はっと不安になった。ロッコはエネルギッシュでパワフルな男なのに、あまりにも簡単にあきらめた……。
 家の前に着くとロッコは言った。「入ってコーヒーでもとすすめる気はあるのか?」
 ないわと答えかけたのに、口から出た言葉は違った。「あるわ」
 ホールのテーブルの明かりはつけたままにしてあり、なぜか、ふいにそこがひどく親密な場に見えた。
「人を温かく迎える雰囲気だな」ロッコはつぶやくように言うと、マーリーンの肩をつかんで自分と向き合わせた。「女主人も同じかな?」
 欲望に我を忘れたマーリーンは何もできなかった。ロッコの顔が近づいてきて、そっと唇を重ねるまで、ただ見守るだけだった。それはかつて経験したことのないキスだった。ロッコの唇は蝶の羽のように軽くすばやく動き、離れてはふたたび戻ってマーリーンのふっくらした下唇をなぶった。口の輪郭を舌でたどられると、マーリーンはため息とともに目を閉じて唇を開いた。
 一晩中わたしはこのときを待っていたのだとマーリーンは悟った。どんなに否定しようとしてもそうなのだ。ロッコのキスがほしかった。さらにもっともっと多くのもの、ロッコが与えてくれるすべてがほしい。マーリーンはやっとそう認め、よろこびの期待に負けた。
 マーリーンの舌も旅を始めた。ロッコの口の温かさがうれしく、頬のざらざらした感触が手に快かった。硬く引きしまった唇は、世界中のどんな男の唇とも絶対に違うと思った。探りながら深めていくロッコのキスの仕方が好きだった。腕を彼の首にまわし、指をしなやかな黒髪に通した。それもまた、一晩中したいと思っていたことだった。
 ロッコはやっと唇を離してマーリーンに息をつかせた。大きな手を彼女のウエストにあてて強く抱き寄せ、自分の高まりを感じさせた。マーリーンはきらきらするロッコの黒い目を見上げた。頭の中は真っ白だった。
「こんなふうだとわかっていた」ロッコはかすれた声で言い、さらに短くぎゅっと抱きしめてから手を緩めた。「だけど、今はまだだめだ」
 マーリーンは、ロッコが実にすばやく平静を取り戻していることに気づかないわけにはいかなかった。一方、彼女自身はまだうろたえていて、いくじなく降伏したことがくやしくてたまらなかった。
「今回はビジネス第一でいこう」彼はさっさとキッチンのドアを開けた。「コーヒーをいれてくれ。そのあとふたりで全部のカードをテーブルに出そう」
 ロッコのあとを追いながら、マーリーンは懸命に落ち着きを取り戻そうとした。
「なんのこと?」ロッコは疑っているのだろうか?
“全部のカードをテーブルに”というのは不吉に聞こえたが、それでも、マーリーンは冷静に答えた。「わたしはもう全部出しているわよ」しっかりしているとは言えない足取りでキッチンの奥に行き、ロッコを見ないでコーヒーの支度を始めた。
「そうは思わないね」
 マーリーンはその言葉を無視してカップやミルクを取りだした。
「驚くね、コーヒーを一杯いれるのにそんなに手間がかかるとは」ロッコの皮肉な声が、すでにすり減ったマーリーンの神経をさらに逆なでした。「きみが神経質になっていると信じてしまいそうだ。どうしてだ? きみは男とふたりだけでいるのを怖がるような、おずおずしたタイプじゃないだろうに」
 マーリーンはゆっくりと振りむいた。ロッコは松材のいすにまたがって座り、組んだ腕をいすの背にのせてあごを支えていた。さっきマーリーンが手を通したために黒髪が乱れ、すごくセクシーに見えた。「あなたはコーヒーがほしいと言ったわよね。出すのはそれだけよ」自分の胸の中はまだ渦を巻いているのに、ロッコがくつろいで座っているのを見るのはひどく腹だたしかった。
「きみは何をそんなに怖がっているんだ?」なめらかな声だ。「まさかぼくじゃないよな?」
「わたし、何も怖がってなんかいないわよ」マーリーンはパーコレーターの方に向き直り、ふたつのカップにコーヒーを注いだ。「ミルクは?」
「いらない、さとうもなしだ。さあ、座ってくれ」
 自分のカップだけにさとうとミルクを入れてかきまぜると、とうとうすることがなくなった。深く息を吸って両手にカップを持ち、ひとつをロッコの前において、彼のむかい側に腰を下ろした。ロッコはカップを口に運ぶといっきに流しこんだ。
「イギリスの女性にしては悪くないコーヒーだな」ロッコはマーリーンに強い視線を浴びせた。「ぼくはきみに対して率直になるつもりだ」
 初めてね! 一瞬、マーリーンは口に出してそう言ってしまったのではないかとぎょっとした。だが、ロッコは話し続けていた。


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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