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王と身代わりの花嫁

王と身代わりの花嫁


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ケイト・ヒューイット(Kate Hewitt)
 アメリカ、ペンシルバニア州で育つ。大学で演劇を学び、劇場での仕事に就こうと移ったニューヨークで兄の幼なじみと出会い結婚した。その後、イギリスに渡り六年間を過ごす。雑誌に短編を書いたのがきっかけで執筆を始め、長編や連載小説も手がけている。読書、旅行、編みものが趣味。現在はコネチカット州に夫と三人の子供と住む。

解説

平凡な家政婦は、結婚2日前の王様に絶望的な恋をした……。

家政婦のオリビアは、国王アジズに突然呼び出された。アジズは2日後に結婚を控えている身だ。しかし、婚約者である隣国の女王が誘拐され、行方不明だという。その身代わりとして、国民の前に姿を見せてほしいというのだ。いくらなんでも無茶すぎるけれど、一国の君主にノーとは言えない。結局、オリビアは未来の王妃を装ってアジズの隣に立った。急場しのぎの演技なのに、歓迎する民衆の前で彼は熱く唇を重ねた。ずっと男性を避けてきたオリビアにとって、衝撃のキスだった。私は偽物。どんなに焦がれても、本物の花嫁はほかにいる。ところが、アジズの許嫁は何日経っても見つからず……。

■『純潔の囚われびと』のスピンオフをお贈りします。王位継承権を争うカリルに婚約者をさらわれたアジズ。パリに所有する豪奢なアパルトマンで彼に仕えていた地味な家政婦オリビアは、王妃の衣装をまとったとたん絶世の美女へと変貌し、彼を惑わせます。

抄録

 でも、私には関係ないことだ。エレナ女王が見つかれば、彼は二日後までに結婚する。
 でも見つけられなかったら?
 それこそ心配することではないのに、オリビアの心は揺れた。
 コーヒーが出されたときには、キャンドルは燃えつきて小さな蝋のかたまりになっていた。コーヒーはアラビア風にいれた濃厚なもので、オリビアはつい口をすぼめた。
 アジズがその顔を見て笑った。「慣れるまでは飲みにくいだろう」
「あなたはもちろん慣れているわよね」彼は表情をほとんど変えず、砂糖もいれずに飲んでいた。
「時間はかかった。しかし、この味がだんだん好きになっている」
「それなら、アメリカ風のコーヒーはもう飲みたくないかしら」オリビアはほほえんで言った。パリの屋敷では、キッチンに置いてあるコーヒーメーカーでいれていた。
「いや、飲みたい。しかし王宮にいる間は、料理も飲み物もカダールのものだけにしようと思っているんだ」
「国への愛情を示すため?」
「そんなところだ」アジズがそっけない口調で答えた。彼はいつも自分を軽く見せようとする。オリビアは、マリクが国王について言っていたことを思い出した。“ご自分で思っているより、アジズ王を慕う者は多い”――あのときは理解していなかったけれど、今夜のアジズを見ているとわかる気がする。
 アジズは自分を信じていない。ありのままの姿を、カダール国民が受け入れてくれるとは思っていないのだ。プレイボーイとして軽薄にふるまうのは、内側にある恐怖と不安を隠すためではないだろうか?
 それとも私こそ本心を隠しているから、彼もそうだと思っているだけ?
 オリビアは苦労して質問をのみこんだ。アジズについて、これ以上知る必要はない。でなければ、今日突然自分の中に生まれた感情が、もっと強くどうしようもないものに変わってしまう。
 彼女は立ちあがって、雇い主に冷たい笑みを向けた。「ディナーをありがとう」
 眉を上げるアジズを見て、オリビアは思った。私がアジズに惹かれていて、そのことを恐れているのに、彼は気づいているんだわ。もちろん“プレイボーイ紳士”であるアジズは、決して口にはしないだろうけれど。
「僕を楽しませ、王の花嫁の身代わりという茶番劇を続けてくれて、君には感謝している」アジズはオリビアを追いかけるように立ちあがった。
 国王が近づいてくると、オリビアは鼓動が速くなり、彼との距離を痛いほど意識した。ずっと前から使っているはずのシトラス系のアフターシェーブローションの香りをかいだだけで、うっとりしてめまいがしそうになる。けれど、あとずさりしなくてはと思うのに体が動かない。
 アジズが視線を落として言った。「こんなことに巻きこんで申し訳ない。しかし、君しか考えられなかったんだ、オリビア。信用できる人物として、最初に頭に浮かんだのが君だった」
 言葉にあふれる誠意に、オリビアの内なる炎が燃えあがった。頭では単なる礼儀だとわかっている。私はアジズがときどき訪れる屋敷の家政婦にすぎない。そんな女を信頼し、最初に頭に浮かんだと言われても、うのみにできるはずがない。
 それでもアジズの視線の温かさと声ににじむ真摯さは、オリビアの心を大きな渦のようにかき乱した。その中から必要とされたい、誰かにとって大切な人になりたいという気持ちが浮かびあがる。
 ばかばかしい。
 私はアジズのことをほとんど知らないし、いまはお互いに役を演じているにすぎない。何が起こっても、それは偽りなのだ。
「お役に立ててうれしいわ」オリビアは礼儀正しく答え、アジズから離れた。しかしドレスの薄いスカートが慣れないハイヒールに引っかかったせいで、うしろに倒れそうになる。何とか姿勢を立て直そうと腕を必死に振ったが、背中を床にぶつけることを覚悟した。
 アジズが流れるような動きで近づき、両腕でオリビアを支えてくれた。互いの腿と腰がぶつかって、まるで媚薬を注射されたように欲望が体を走るのをオリビアは感じた。彼女が息を吐くと、アジズの熱い視線がそこに注がれた。
 オリビアは待つことしかできなかった。心臓が音をたてて打ち、ついさっきまでの考えとは裏腹に彼のキスを求めて体がこわばった。
 ほんの一瞬、アジズにキスをされると思った。体を前に倒した彼に引き寄せられたオリビアは、熱いこわばりに触れて、電気ショックのような衝撃が爪先まで走り抜けた。
 しかし次の瞬間アジズは身を引き、オリビアをしっかり立たせて手を下ろした。彼女は息を吸い、何とか落ち着きを取り戻して何事もなかったようにふるまおうとした。本当は世界全体が引っくり返り、驚きとともに信じていたことが粉々に砕け散っていた。アジズが欲しいという気持ちのせいで、これまでの生活がどれほどわびしく空虚で単調だったか、突然気づいたのだ。
 アジズの笑顔は、ただ口角を上げただけのように見えた。目にも底知れない闇がある。
「ありがとう」オリビアがつぶやくと、アジズはうなずいた。「私……もう遅いから」彼女は言葉を切り、息を吸ってゆっくりと吐き出した。「おやすみなさい」きっぱりと言う。
「おやすみ、オリビア」雇い主の穏やかな声を聞いた彼女はぎこちなくドレスの裾を持ちあげ、またつまずかないよう気をつけながら急いで部屋を出た。


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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