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月をくれた伯爵

月をくれた伯爵


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

あの頃わたしはあなたに愛され、月さえもらえると信じていた。人気作家が描く、リージェンシー2部作の華麗な幕開け!

17歳の牧師の娘ヴィクトリアは、ある日、村で美しい青年に微笑みかけられ、ひと目で恋に落ちた。彼の名はロバート。領主の息子で爵位を持つ彼は信じられないことにヴィクトリアに愛を囁き、結婚を約束する――だがふたりの恋は身分違い。駆け落ちの夜に彼女は父親に閉じこめられ、翌日、真実を知らされた。ロバートは彼女と結婚する気など毛頭なく、ロンドンへ発ったと。打ちのめされたヴィクトリアは家を出て家庭教師となり、辛いながらも平穏な生活を手に入れた。7年後ロバートが屋敷の客として現れ、彼女を睨みつけるまでは。

■世界中のファンを魅了するベストセラー作家がMIRA文庫に初登場! ジュリア・クインの甘く切ないリージェンシー・ロマンスをお届けします。
本作のヒロインは世間知らずな牧師の娘、ヴィクトリア。17歳の彼女は偶然知り合った伯爵ロバートとひと目で恋に落ちます。でも身分違いの恋が祝福されるはずもなく、二人は駆け落ちを決意しますが、ヴィクトリアはロバートに捨てられてしまいます。7年後、家庭教師となったヴィクトリアの前にロバートが現れて……。
若い二人の夢見るような恋がとてもロマンティックなぶん、失恋の悲しみは胸が張り裂けるよう。米国ロマンス作家協会で名誉ある“殿堂入り”を果たしたジュリア・クインならではの、胸を打つ作品をご堪能ください!

抄録

「で、そいつはきみにお熱なのか?」
「ロバート・ビーチコームはまだ八歳よ。一緒に釣りに行く約束をしていたの。たぶん気が変わったんだと思うわ。お母さんに何か仕事を言いつけられそうだと言っていたから」
 ロバートはいきなり笑いだした。「それを聞いて安心したよ、ミス・リンドン。嫉妬するのは嫌だからね。あれほど不快な感情はない」
「わ……わからないわ、どうしてあなたが嫉妬するのか」ヴィクトリアは口ごもった。「わたしに将来を誓ったわけでもないのに」
「これから誓うのさ」
「わたしだってあなたに将来を誓ったわけではないし」ようやく口調が落ち着いてきた。
「これじゃあいっこうに話が進まないな」ロバートはため息をついた。再び娘の手をとり、今度は指の関節に口づけた。「たとえばこういうのはどうかな。今後二度とぼく以外の男には目もくれないと誓ってくれると嬉しい」
「なんのことを言っているのかちっともわからないわ」ヴィクトリアはすっかり混乱した。
「きみを誰とも共有したくないんだ」
「まあ、伯爵様! わたしたち、ついさっき会ったばかりじゃないの!」
 ロバートは彼女のほうへ向きなおった。一瞬にしてその目から軽薄さがかき消えた。「そんなことわかってるさ。頭ではわかってる。初めて出会ってからまだ十分しかたっていないってね。でも、ぼくの心は生まれたときからずっときみに会う日を待ちつづけていたんだ。ぼくの魂はもっと前から」
「な……なんて言ったらいいのかわからないわ」
「何も言わなくていい。こうして隣に座って、一緒に日差しを浴びていてくれればそれでいいんだ」
 そこでふたりは湖畔の草むらに腰を下ろしたまま、雲や水面やお互いを眺めた。しばし沈黙がつづいたのち、ロバートの目が遠くの何かをとらえた。彼は不意に立ちあがった。
「そこを動くな」ヴィクトリアに命じる。厳しい声音とはうらはらに、ばかみたいなにやにや笑いを浮かべている。「一センチたりとも動くなよ」
「でも――」
「一センチたりともだ!」ロバートは肩越しに叫びざま、いちもくさんに野原を駆けだしていった。
「ロバート!」ヴィクトリアはとがめるように叫んだ。“伯爵様”と呼ぶべきだということはすっかり忘れていた。
「すぐ戻る!」
 ヴィクトリアは、ロバートはいったい何をしているのかと首をのばした。木立の向こうにいるので、身をかがめていることぐらいしかわからない。ヴィクトリアは手首を見おろした。ロバートの唇が触れた部分が燃えるように赤くなっていないのが不思議だった。
 全身で感じたキスだったのに。
 森から姿を現したロバートが、さっと優雅なお辞儀をした。右手に野生のスミレの小さな花束を握っている。「お嬢様に」
「ありがとう」ヴィクトリアはささやいた。目に涙がこみあげ、胸が熱くなった。この|男性《ひと》になら世界の果てまで、いえ、宇宙の果てまで連れ去られてもいい。
 ロバートはスミレを一輪だけ手元に残し、あとはヴィクトリアに手渡した。「ほんとはこれがしたくて摘んだんだ」そうつぶやいて、残った一輪を彼女の耳の後ろに挿した。「ほら。これで完璧だ」
 ヴィクトリアは花束を眺めた。「こんなに愛らしいものを見たのは生まれて初めてよ」
 ロバートは花ではなくヴィクトリアを見つめていた。「ぼくもだ」
「うっとりするような香りだわ」彼女はうつむいてもう一度香りをかいだ。「花の香りって大好き。わたしの部屋の窓のすぐ外にスイカズラが咲いているのよ」
「そう」ロバートは上の空で応じながら、手をのばして彼女の顔に触れようとしてぎりぎりのところで自分を抑えた。無邪気な娘を怖がらせたくなかった。かわりにさっと背筋をのばした。「動くな! 一センチたりともだ」
「またなの?」ヴィクトリアは噴きだし、顔じゅうに笑みを広げた。「今度はどこへ行くの?」
 ロバートはにやりとした。「肖像画家を探しに行くんだ」
「肖像画家ですって?」
「いまのこの瞬間を永遠に焼きつけておきたいから」
「伯爵様ったら」ヴィクトリアは体を震わせて笑いながら立ちあがった。
「ロバートと呼んでくれ」
「ロバート」本当ならファーストネームで呼ぶなんて不躾きわまりないはずなのに、ごくすんなりと呼べた。「あなたっておもしろい人ね。こんなに大笑いしたのはいつ以来かしら」
 ロバートは身をかがめ、もう一度彼女の手に口づけを落とした。
 ヴィクトリアは空を仰いだ。「まあ大変、すっかり遅くなってしまったわ。父が捜しに来るかも。あなたとふたりきりでいるところを父に見つかろうものなら――」
「ぼくたちを無理やり結婚させるしかないだろうな」ロバートが物憂げな笑みを浮かべて口をはさんだ。
「ほんとにそんなことになったら、あわてふためいて隣の郡まで逃げていくんでしょう?」
 ロバートは身を乗りだし、彼女の唇をかすめるだけのこの上なくソフトなキスをした。「しいっ。もう決めたんだ。きみと結婚するって」
 ヴィクトリアは口をぽかんと開けた。「どうかしてるんじゃない?」
 ロバートは後ずさりし、おもしろがっているとも驚嘆しているともつかぬ表情で彼女を見つめた。「とんでもない、ヴィクトリア。生まれてからこんなに正気だったことはないくらいだよ」


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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