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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス・エクストラ

さまよえる愛

さまよえる愛


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス・エクストラ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 フィオナ・フッド・スチュアート(Fiona Hood−Stewart)
 スコットランドの資産家の娘に生まれる。世界各地で暮らしてきたため、七カ国語を操る国際派。現在はヨーロッパと、牧場を経営するブラジルに住んでいる。作品に出てくる生き生きとした街の描写には、世界じゅうを訪れた彼女の経験が生かされている。

解説

スコットランド貴族の血を引く母が急逝し、インディアは先祖代々受け継がれてきたダンバー邸に帰ってきた。母は、あまり苦しむこともなく旅立ったという。悲しみに沈む彼女は散歩中、隣接する屋敷に滞在中のアメリカ人――ジャック・ブキャナンと偶然知り合った。大胆さと繊細さを併せ持つ彼に惹かれて邸宅に招いたところ、インディアは思わぬ事態に直面する。ホテル業界に君臨するジャックは、ここがすばらしいホテルになると強く主張したのだ。そして、ダンバー邸をめぐる愛憎劇の幕が切って落とされた。

抄録

 とても気持ちのいい陽気だったし、ドロレスの人を飽きさせない熟練の主人ぶりもいかんなく発揮された。岩塩に表面を覆われた巨大な牛肉の塊がゆっくりと炙られている大きな煉瓦造りの炉辺に座るあいだ、ジャックはできるだけインディアのそばに座るようにした。集った二十人の客たちともほとんど言葉を交わさない。例外は、ポロ用のポニーを見せに厩舎に連れていってくれたエルナンの大おじだけだった。それ以外の時間、彼の気持ちはインディアだけに集中していた。
「今夜は街に戻って一緒にディナーを食べないか?」ようやく彼女を人々の輪から切り離して脇に引きずっていき、そう提案する。
「そうね、いいわよ。どのみち、明日早くに事務所に行かなければならないし。エドゥアルドに頼んでおいた浴室のレイアウトの変更が終わったので、作業に入る前に確認しておきたいの」
「よかった。じゃあエルナンの車で僕と帰ろう。ドロレスのアパートに滞在するのかい?」
「いいえ、今夜は違うの。モンテビデオから来たいとこがそこを使っているから、アルベアルに部屋を取ったわ」
「会社の経費で落とすよ」ジャックはきっぱり言った。
「その必要は……」
「しいっ、文句は言いっこなし。僕がそうしたいんだ。エルナンを探して、何時に出るつもりか確かめてくるよ」ジャックはさっさと帰りたくて仕方がなかった。早くインディアとふたりきりになりたい。落ちつけ、と頭の中で小さな声がささやく。とにかく落ちつくんだ。ふたりは未舗装の道路をたどり、家畜の囲い柵の脇を抜け、ゲートを抜けて庭に入った。
 ジャックはエルナンを見つけると、早めに失礼することにした。
 ドロレスがインディアにさよならのキスをしながら耳に何事かささやき、インディアが頬を赤らめた。そしてドロレスはジャックにあの謎めいた笑みを見せた。
 三人はフェラーリ・テスタロッサに無理やり体を押しこめ、おしゃべりしたりジョークを飛ばしたりしながら、街まで愉快にドライブした。夕暮れのすがすがしい空気が気持ちいい。
「今夜はどうする?」エルナンが尋ねた。「どこかにくりだすかい?」
「僕はパスする。明日は一日、忙しいんだ」ジャックは答え、インディアの肩をそっと小突いた。
 インディアはうつむき、緩む口元を隠す。「ありがとう、エルナン。でも私も明日は早いの。それに、たっぷりランチをいただいてしまったから、もうこれ以上何も入らないわ」
 ジャックは勝利の笑みを必死に隠した。ここからはきっと順風満帆だ。そして彼は心に誓った。今回は絶対に失敗するまい、と。

 ふたりは、アルベアル・ホテルの隣にあるナイトクラブ〈アフリカ〉の薄暗い照明の中、並んで座っている。ジャックの腕が何げなくインディアの肩にまわされている。インディアは横目でちらりと彼を見た。信じられないほどハンサムだわ。でも、それだけではない何かがある。似た顔をどこかで見た気がするのに、どうしても思いだせない。恋人と呼べるような人は過去にクリスチャンしかいないけれど、彼とは似ても似つかない。
 そう、ジャックはその座を狙っている。進展を急がないふりをしつつも、そう思うとなんだかわくわくした。インディアは彼をうっとりと眺め、すべてを慈しんだ。少しだけジャックに身を寄せ、裸の肩を撫でる彼の指のやさしさを楽しんだ。ディナーはすばらしかった。ジャックは細かく気配りしてくれたし、魅力的だった。だからナイトクラブで一杯やらないかと誘われたときも、インディアはためらわなかった。
「これ、好きなんだ」音楽がサルサからスローテンポのロマンティックなボレロに変わると、ジャックが言った。「踊ろう」彼はインディアを引っぱりあげ、ダンスフロアにいざなった。彼の腕が体にまわされたとたん、息が詰まる。リズムに合わせ、ふたりは体を揺らした。ジャックの手がゆっくり背中を這いあがり、彼女の頭を首と肩のくぼみに押しつけて、ふたりの体がぴったり重なり合う。レコレタ地区でのあの最悪の初デート以来、何度もインディアが夢見てきたように。いつまでも曲が続けばいいのに。彼の腕に抱かれていることがとても自然だった。いや、自然すぎた。髪に彼の指が絡まり、背筋がかすかにぞくっとする。理性などかなぐり捨てたい衝動に駆られると同時に、彼女は気づいた。私は、彼が与えるつもりでいる以上のものを求めている。また傷つきたいの? その恐ろしい思いがインディアに再びのしかかってきた。
 パラシオの事務所で顔合わせした仕事初日の朝以来、インディアは感情の嵐にもまれていた。心惹かれ、欲望に突き動かされ、怒りと自己嫌悪に苛まれ、切なく思いを馳せた。自分にこんな一面があることを初めて知り、面と向かわざるをえなくなった。自分で自分がコントロールできず、ひどく無防備になった気がして怖かった。
 背中のくぼみをそっと撫でられながら、部屋の暗い隅へと誘導される。肩にもたせかけていた頭を上げさせられ、彼の唇が唇に重なる。やさしいけれど執拗で、こたえられるかどうかもわからないのに、反応を巧みに引きだそうとする。魔法を消したくなくて、ふたりはダンスを続けた。キスも愛撫も、インディアにとっては甘い責め苦だった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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