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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・ラブ ストリーム

プリンセスと野獣

プリンセスと野獣


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・ラブ ストリーム狼たちの休息
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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著者プロフィール

 ビバリー・バートン(Beverly Barton)
 幼いころ、祖父から贈られた『美女と野獣』の絵本を読んでロマンス小説のとりことなり、九歳のときに初めて物語を書いた。それ以後、小説、詩、脚本と、学生時代を通じて創作活動に親しむ。結婚し、二人の子供を産んでから専業主婦となっていたが、執筆活動に復帰してからはアメリカロマンス作家協会に加入し、大いなる貢献をする。1990年のデビュー以来、マギー賞や全米読者選賞を受賞。ロマンス小説界の最高峰RITA賞の最終選考にも残ったことがある。とりわけ百戦錬磨のボディガードを主人公にした出世作『狼たちの休息』シリーズは新作が出るたびに各メディアから賛辞を受け、世界的ベストセラー作家リンダ・ハワードからも賞賛のコメントを贈られるほどの人気連作。

解説

 なんて礼儀知らずな人! でも、もう二度と会うこともないわ。オーランサ王国のアデル王女は、浴室の窓から抜けだしホテルの外壁を伝って下りながら心の中でつぶやいた。ひそかに王国乗っ取りを企むロズワルド公爵との政略結婚から逃れてようやく隣国までたどりついたのに、父王の雇ったアメリカ人ボディガードに見つかってしまうなんて。しかもその男、マット・オブライエンは無礼にもアデルを肩に担いで車に押しこみ、ホテルの一室に閉じこめたのだ。あと一歩で地面に足が届く。その瞬間、銃を持った男が二人現れた。もしかして公爵のまわし者かしら? 「マット、助けて!」アデルは叫ぶほかなかった。
 ★おかげさまでシルエット・ラブ ストリームは300号を迎えることができました。日頃のご愛読を感謝して人気作家ビバリー.バートンのロイヤル・ロマンスをお届けします。タフな彼女がひた隠す過去の切ない恋とはいったい……? ★

抄録

 今夜ほど大嵐を歓迎したことはない。アデルは心の中で天に感謝の祈りを捧《ささ》げた。ホテルで休むことになれば、このアメリカ人から逃げられるかもしれない。うまい手を見つけるか、逃がしてくれるよう彼を説得するか。あるいは、ホテルの誰かが手を貸してくれるかもしれない。いずれにせよ、私がオーランサ王国の王女だと気づく者がいるだろう。
 豪雨のために慎重に運転するマットを、アデルは観察した。髭も髪も手入れが必要だった。黒髪はくしゃくしゃ、ジーンズは色落ちし、革のボマージャケットもくたびれている。マッチョなタイプが好みなら、魅力的な男性と言えるだろう。シャトーで抱えられたとき、自分より三十センチは背が高く、横幅も二倍はあると感じた。オブライエンという姓からして、アイルランド系だろう。年齢はたぶん三十五歳前後。黒髪にも髭にも白いものは見あたらないが、目尻や額に細かい皺《しわ》がある。
 車が停まったので、アデルは窓の外に目を凝らした。だが、激しい雨の奥に明かりがにじんで見えるだけだった。マットがエンジンを切り、キーをポケットに入れてアデルを見た。なんて青い目だろう。夏のどこまでも晴れ渡った空の色。
「ホテルまで走るぞ」彼は言った。「ずぶ濡《ぬ》れになるだろうがしかたがない」
 アデルはうなずいた。マットがドアを開け、飛びだす。アデルも続いた。彼に腕をつかまれ、一緒に二階建ての宿を目指す。中に駆けこんだときには、二人とも体までびしょびしょだった。
 フロントの奥からホテルの主人が現れ、二人を迎えた。「グーテン・アーベント」主人はドイツ語で言った。「ヴィルコンメン・ツム・ガストハウス」
「グーテン・アーベント」アデルが答えた。
 二人が“こんばんは”と挨拶《あいさつ》を交わし、主人が“ようこそ”と歓迎したことぐらいはマットにもわかった。だがドイツ語の能力はアデルのほうがはるかに上らしい。彼にはついていけないような早口でしゃべりだされたりしては事だ。
「英語はわかりますか?」マットは尋ねた。
「ええ」主人は言った。「アメリカの方ですか?」
「私はアメリカ人です」マットが答えた。
「そして私はプリンセ……」
 マットはすかさずアデルの肩に腕をまわし、抱き寄せた。「彼女は新妻のプリシラ。オーストリアには新婚旅行で来ました」
「いいえ、違う――」アデルが言いかけたところで、いきなりマットにキスされた。
 どういうつもり? キスなんて無礼な……ああ、神様。温かく湿った、有無を言わせない唇。二十八年間生きてきて、これほど完璧《かんぺき》に唇を奪われたのは初めてだった。がくがくする脚を支えるため、アデルはマットの肩にすがった。舌が口に入ってきたとき、抵抗する気持ちはすっかり消えていた。始まりと同じくらい唐突にキスは終わり、彼女は一瞬ぼうっとした。
 でも、唇が離れると同時に、アデルは彼をにらみつけた。マットが口元でそっとささやく。「妙なまねはするな。さもないともっと手荒にするぞ」
 アデルはうなずいた。この男性《ひと》はいざとなれば何でもするつもりだわ。マットは、にこにこしながらおとなしく待っている主人のほうを向いた。主人は新婚カップルの熱々ぶりに感心しているらしい。
「ひと部屋お借りできませんか?」マットは言った。「嵐が通り過ぎるまで待ちたいのですが」
 マットは財布からクレジットカードを取りだして主人に渡した。主人が奥でカードをスキャンしてから部屋の鍵を添えてマットに返す。「お荷物は?」
「車です。でも、この土砂降りだ。わざわざ運ぶのはやめました」
 主人はうなずいた。「ヒルダにお二人分のローブを持っていかせましょう。ささやかなプレゼントです。ほかにも何かご入用でしたらおっしゃってください。私はフランツ・ゲヴァルトと申します」
「ありがとう」マットは答えた。「ではまた……」
「あの、ゲヴァルトさん《ヘル・ゲヴァルト》?」アデルは濡れた顔になごやかな笑みを浮かべて言った。
「何でしょう?」
「それに、ブランデーと枕《まくら》をもう二つお願い。暖炉はあるわね?」主人がうなずく。「まだ火が入ってないなら、今すぐおこしていただける?」
 マットは彼女の腕をぐいっと引いた。「君、ちょっと注文が多すぎるよ。まるでわがまま娘だ」
「そんなことないわ」アデルは言い返した。「ふさわしいもてなしをお願いしているだけよ」
 宿の主人はおろおろして、アデルとマットを交互に見た。「新婚旅行でもう夫婦げんかですか? いけません。喜んでミセス・オブライエンのご注文どおりにいたしますから」
「ありがとう」アデルは言った。「じつは、もうひとつお願いがあるの」
「何なりと」主人が答えた。
「警察に電話して、この男が私を誘拐したと通報してくださる?」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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