マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

孤独なナースの恋

孤独なナースの恋


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


著者プロフィール

 キャロル・マリネッリ(Carol Marinelli)
 イギリスで看護教育を受け、その後救急外来に長年勤務する。バックパックを背負っての旅行中に芽生えたロマンスを経て結婚し、オーストラリアに移り住む。現在も三人の子供とともに住むオーストラリアは彼女にとって第二の故郷になっているという。

解説

期限つきの恋で授かった命。わたしが独りで育ててみせる……。

ナースのクララは15歳で両親を失い、胸に孤独を抱え生きてきた。幼なじみの男性を心の支えにしてきたが、所詮報われない片思いだった。だがそんなクララの前に、イギリスから来た医師のティモシーが現れ、ある夜、強引に彼女の唇を奪って叶わぬ恋から目を覚まさせた。誰をも惹きつけてやまない人柄とハンサムな容貌に魅了され、いつしかクララは彼に身も心もささげていた。けれども、彼は3カ月したらまた別の地へ向かう身……。クララはここにとどまってくれることを密かに願ったが、非情にもティモシーは別れを告げ、去っていった――彼女のおなかに、わが子の命が宿っているとも知らずに。

■HQロマンスで大活躍のC・マリネッリが贈る、シークレットベビー物語!太陽のように明るいヒーローのおかげで楽しい時間を過ごしたのち、彼が去ってからの虚しさが切なく胸に迫ります。意外な結末に思わず感動の涙こぼれる珠玉作を、ぜひお楽しみください。

抄録

「ティモシー! ここで何をしているの?」
 ティモシーは肩をすくめた。「外の空気を吸おうと思ってさ。君と同じだよ」
 クララは落ち着こうとした。無作法な態度はとりたくないし、露骨な反応も返したくない。どこかに行ってほしい理由を説明するなんて論外だ。けれど、この状況であれこれ考えている時間はなかった。
「お願い、ティモシー」神経質に何度も会場のほうを振り返り、今度こそケルだとわかっている足音に意識を集中させた。「どこかに行って」
「どうして?」
「どうしてもよ」ほとんど息だけのような声で強く訴えた。「今はひとりでいたいの」
「だめだ」
 呆然とするクララの前でティモシーは腕を組み、彼女を見つめて考え込む表情になった。
「君が今すべきなのは、中に入って僕と踊ることだと思うな」
「お願い、あなたにはわからない……」
「わかるよ」初めて聞く彼の真剣な口調だった。緑の目もまったく笑っていない。「君はケルが好きなんだ。そうだろう?」
「あたりまえじゃない。長いつき合いで――」
「友人としてじゃない。君はケルが好きで、今アビーのことを話せば彼の気持ちも変わる、君への深い思いを自覚してくれると期待しているんだ」
 驚いたクララの顔は、そのとおりですと肯定しているも同じだった。
「今君の目の前にいるのは、親友がラグビーチームのキャプテンだった男でね。それはもうしょっちゅう、思い出すのもいやなくらい、ビールグラスの陰から他人の恋が花開くのを見てきている」
「あなたは勘違いをしているわ」ケルはすぐ近くまで来ているはずだ。ティモシーと二人でいるところを見られてしまう。ひとりにならなければ。
「そうかな」ティモシーが距離をつめた。「これからすることだけど、最初にあやまっておくよ。今は理解できないと思う。憎まれるのも覚悟だ。でも僕は、君が人生最大の間違いを犯そうとしているのを黙って見ているわけにはいかない」
「いったい何を――」
 終わりまで言うことはできなかった。熱い体がぶつかってきて、いきなり倉庫の外壁に押しつけられたのだ。必死にあらがってもむだだった。反射的に出た叫びは彼の唇でふさがれ、手を動かそうにも、彼の胸に押されてぴくりとも動かない。
 これだけのショックを受けていても、強い緊張に支配されても、しかし恐怖は感じなかった。意図がわかるから腹が立った。彼はストッキングをはいた脚に欲情したのではない。キスを義務だと思っているのだ。クララは身をよじって逃れようとした。これは優しさを気どったキスの中でも最悪の部類だ。それだけならまだいい。水につけられた猫のようにあがいているのに、彼の誤った暴挙に憤っているのに、ほんの一瞬、本当にわずかなその一瞬だけ、自分の体から力が抜けた。抵抗する気力がうせて、もっと別の、わけのわからない思考が脳裏をよぎった。
 おかしすぎる、ばかげた思考が……。
 たとえば、ダンスのときにかいだ刺激的なアフターシェーブ・ローションの香りがこの近さだと強く感じるとか、彼の息が荒くて胸の動きが伝わってくるとか、ひんやりしたコットンシャツに自分の胸が押しつけられているとか、彼の唇にかすかなウイスキーの味を感じるとか。
「クララ?」ケルの声がした。足音がどんどん近づいてくる。クララは今度こそ激しく抵抗したが、ティモシーは意に介さない。強すぎる彼の手にさらに力が込められたところへ、ケルが近づいてきた。「おっと!」ケルが驚いた声を出し、こほんと咳をしてあとずさる。「これは失礼」
 ケルが去り、二人になったと確信したティモシーがようやく体を離した。逃げ場を封じるようにクララをはさんで壁に手をつき、彼女の怒りと対峙した。
「どういうつもり?」クララは問いかけた。息が苦しく、脚も震えている。怒りと、そして死んでも認めたくない漠然とした感情のせいで。いくらキスが上手だろうと、こんな思い上がったイギリス男に知られるわけにはいかない。体を寄せ合ったこの二分間に、ロマンスに通じる何かをちらとでも感じただなんて。とにかく、今は怒りが沸騰している。
 それだけだ。
「どういうつもりよ?」少し声を尖らせたが、ティモシーは痛くもかゆくもないようで、クララの先手を打って言葉をかぶせてきた。
「今夜はだめだ、クララ。ロスから言ってもらったほうがいい」
 信じられない気持ちでかぶりを振った。背筋をしゃんと伸ばしたが、ヒールのある靴をはいていてさえ彼の背丈には届かない。「そう思う根拠は? ここに来て一日もたっていないのに、ケルのことをわかった気でいるのね。告げるのは男性からのほうがいいというの? 医者が言ったほうがいいって?」
 かぶりを振ったティモシーが口を開きかけたが、クララはもう止まらなかった。
「ロスは一年前に来たばかりよ。私は子供のころからケルを知っているの。友達と話をするのに、ロスの意見は関係ないわ。もちろん、あなたから指図されるいわれもない。ケルには知る権利が――」
「そのとおりだ」
「そのとおり?」混乱して一瞬言葉を失い、気勢をそがれて目顔で問いかけた。

*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。