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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

ドアの向こうに

ドアの向こうに


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 サリー・ウェントワース(Sally Wentworth)
 イギリス生まれでずっと生まれ故郷の町に住み、そこで結婚し子供は一人。作品の構想を立ててから執筆の前にいろいろ調べるのが、書く以上に好き。したがって背景として選んだ土地へは必ず足を運び、また車のラリーをテーマに選べば自分でも参加しないではすまない性格である。

解説

彼女はだれのものにもならない女だという。ならばなおさら、ぼくのものにしたい■パーティで周囲の視線を一身に引きつけて踊る赤いドレスの女。たまらなくセクシーなその女性にブレット・キングは目を奪われた。彼女の名前はナターシャ・ブライアント。アクアマリンに近い淡いブルーの瞳、きらめく赤い髪が美しい。だれのものにもならない女性さ、とブレットの友人は言う。それでもブレットは彼女に近づき、さりげなく話しかけた。長身でハンサム、悠然として気取りのないブレットが作家と知って、ナターシャも彼に興味を引かれた。彼は大半の男性とはどこか違う。内面のしたたかさを気さくな雰囲気で隠そうとしているようだ。パーティのあと、二人は夜明けの街を歩きながら語り合った。お互いの胸にまだ打ち明けられない過去を抱えたまま。

抄録

 彼女の住まいは最上階の屋根裏だった。体力に自信があるブレットは二段飛ばしで追いかけたのだが、その彼でさえ、最後には息が切れていた。それなのにターシャのほうは呼吸一つ乱れていない。
「いつからここに住んでるんだ?」ブレットは壁にもたれて、鍵を開けている彼女にきいた。
 ターシャはにっこりして答えた。「二年前からよ。わたしの脚についた筋肉を見たら、オリンピックの選手だってうらやましがるわ」
「どうりで踊りがうまいわけだ」
 ドアが開くと、もうそこは家幅いっぱいの広い居間だった。カーテンのない窓から朝の光が部屋に満ちあふれている。ブレットが最初に抱いた印象も、明るくて活気に満ちているということだった。たくさんの明るい色が次々と目に飛び込んできた。ソファにかかった赤い布、漂白して磨き込まれた床には緑と青を配したラグ。壁は白く塗られ、三面はおびただしい数の絵に占領されている。それもはっきりした形と色使いが特徴の現代絵画ばかりだ。あとの一面は、赤れんがを支柱にして板を渡した、原始的だが実用向きの本棚で覆われていた。おびただしい数の本の中には、小説のけばけばしい背表紙もあれば、辞典類のもう少し落ち着いた色も見える。
 家具は少なかった。さっきのソファと、窓際に食事用の古い椅子を二つ置いたテーブル。あとはコーナーに、また板と赤れんがの棚があって、テレビとステレオが置いてあるくらいだ。こぎれいですっきりしているが、さまざまな色と活気に満ちた部屋。これは住人の性格を反映しているのだろうか。ブレットはいっそう興味をそそられた。
「よかったらコーヒーか何か……」ターシャの言葉が終わらないうちに、ブレットは奥へ行こうとしていた彼女の腕をつかんで自分のほうに引き戻した。
「その“何か”って何かな?」
「お茶がいいかしら?」彼女は言った。
 ブレットはほほ笑み、両腕を彼女の背中にまわすと、じっと目を見つめて引き寄せた。どうしたことか、胸が異様に高鳴っている。期待と甘い興奮――とうの昔に忘れていた感情が体じゅうに広がっている。唇が乾き、手も思うように動かない。初めてデートをする十代の少年さながらに緊張している。ターシャの青い瞳の奥には警戒しているような光があった。「ターシャ」乱れがちな息とともにゆっくりと、優しくなだめるようにささやいた。それからそっと彼女の顔に触れ、唇を重ねた。
 ターシャはこれまで何人もの男性にキスをされてきた。情熱的なキスも優しいキスも知っていたから、今度も同じようなものだと思っていた。彼のほうがもっと経験が多いのかもしれないが、それでもターシャは大きく目を開け、すべてわかったつもりでキスを受け入れた。ブレットが頭を支えて顔をさらに引き寄せる。ブレットの唇が動きだすと、ターシャはゆっくり目を閉じた。唇から感情が伝わってくる気がした。彼はかすかに震えながら彼女を探り、心の奥に触れて、まどろむ魂を揺り起こそうとしている。彼の唇は温かく、力強く、驚くほど心地よい。そして優しさとも情熱とも違う、じらすような、気持をかき立てるようなキスをしてくるのだった。
 突然、想像でしか知らなかった強い欲求が突き上げてきた。わずかに緊張を緩めると、ブレットの体に震えが走るのがわかった。勝利の喜びか欲望のせいかはわからない。ターシャ自身の体が興奮に目覚め、欲望に従おうとしていたからだ。彼女の唇が動き、キスに応え始めている。
 ブレットが再び彼女の名をささやき、唇を喉元に移してきた。首筋をたどってから、また反応を求めて唇に戻る。ターシャが彼の首に触れると、激しく乱れた鼓動が伝わってきた。繰り返される小さなキスに耐えられず、ターシャは唇を開いて彼を迎え入れた。頭がくらくらする。彼女は今、渦の縁に立っていた。高まる体の欲求に従って彼を求めれば、もうあと戻りはできない。先の見えないドアを開けてしまうことになる。ターシャは低いうめき声をもらして渦の縁からあとずさり、ブレットから離れた。
「もうやめたほうがいいわ」震える声だが、きっぱりした口調で言った。
 ブレットはがっくりすると同時に、彼女の意思など無視してこの腕に引き戻したいと強く思った。無理にでも自分と同じような気持にさせたい。彼女の気が変わり、抱いてほしいと訴えるまでキスで抵抗を押さえつけたい。だが、ターシャの顔を見たとたん、そんな身勝手な考えは消し飛んだ。彼女はすっかり驚いてショックを受けたような顔をしていた。だが、その驚きが好ましいものであることは、見開いた目の穏やかさでわかる。これならまだ脈はありそうだ。事をあせらずに、クールにふるまえば大丈夫かもしれない。それでもブレットはまだ未練を残してきいた。「本気で言ってるの?」
「ええ、本気よ」ターシャは彼に笑いかけた。「着替えてくるわね」そう言って窓から離れたところにあるドアへ歩きだした。「コーヒーを飲んで帰るなら、キッチンはこっちよ」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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