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誘惑の湖【MIRA文庫版】

誘惑の湖【MIRA文庫版】


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 リンダ・ハワード(Linda Howard)
 数々の受賞歴を誇る、世界中で大人気の作家。栄えあるNYタイムズやUSAトゥデイのベストセラーリストにもしばしば顔を出す。読むにしろ書くにしろ、本は彼女の人生において重要な役割を果たしているという。読み始めはマーガレット・ミッチェルの作品。それ以後、広く読書に熱中するようになった。少女のころから書くことが好きだったリンダの作家デビューは三十歳のとき。現在はアメリカの作家大会や授賞式の席に常連の人気作家で、サイン会にもひっぱりだこである。とりわけ、彼女の描くヒーローが魅力的だというファンが多い。現在、生まれ故郷のアラバマ州に夫とともに住んでいる。

解説

大企業を統括するロバート・キャノンは、財界随一の切れ者と評判の男。そんな彼を、思いがけない事態が襲った。傘下の企業から国家機密のプログラムが流出したのだ。彼はFBIに任せておけず、みずから捜査に乗りだした。容疑者のひとりは湖畔でマリーナを営む女。入手した不鮮明な写真には、田舎臭い女が写っている。だがマリーナの客を装う彼が目にした“女スパイ”は、あまりにも美しく魅惑的だった。戸惑いながら、ロバートは強烈な欲望を覚えた。

抄録

 彼が電話を切ると、エヴィーは冷ややかに言った。「なんて優しいのかしらって喜ぶとでも思った? とんでもないわ。すごい屈辱よ」
 ロバートは意外そうに眉を上げてみせたが、それは本心を隠すためだった。まさに彼女の言うとおりのことを考えていたのだ。「そうじゃない。今日の状況はお姉さんが思っているよりずっと危なかったんだ。しかも君はまだ完全には立ち直っていない。このまま病院へ行けば、お姉さんやジェイソンに心配をかけまいと、また大変な思いをしなくちゃならないだろう」
「溺れかけていたときよりも、あなたと一緒にいるほうがよほど怖いわ」金茶色の目が冷ややかに彼を見据えた。
 またしても的確な洞察力だったが、ロバートには彼女の守りを崩せる自信があった。「今夜は休戦だと言ったら? キスもしない、手も握らない。ただ食事をして、家まで送り届ける。そして君は一晩ぐっすり眠る」
「いいえ。私、あなたと食事はしないし、家へも一人で帰るわ」
「それなら休戦は取り消しだ」
 言葉そのものよりも、その静かな響きにエヴィーはまず聞き入った。迷ったのはほんの一瞬だったのに、その隙をついてロバートは彼女を抱き寄せた。鋼に押しつぶされるようなあの感覚が、またエヴィーを襲った。どっしりと動かない体、逃れようのない手。清潔な男の肌の匂いをかいで、エヴィーの頭の中はぐるぐるまわり出した。唇と唇が重なって彼の胸に顔をうずめるところをぼんやりと思い描いていた彼女は、くすくす笑う声を耳にしてうろたえた。
「ずいぶん臆病じゃないか。君は臆病者じゃないはずなのに。でも、僕はこうして君を抱いているだけでもかまわないよ。これはこれでいいものだ」
 そう、私は臆病者。肉体的な意味ではなく、ロバートそのものが怖い。どうしようもなく怖い。私は彼の扱い方を間違えている。彼は拒まれることに慣れていないから、断られれば断られるほど我を通そうとするのだ。初めからロバートにへつらい、大げさに好意を示していれば、今ごろはうんざりして離れてくれていたかもしれないのに。でも、もう後の祭りだ。
 優しく背中を撫でられ、体がいちだんと引き寄せられた。もっと体重をかけて寄りかかるのは簡単だった。緊張と疲れに今までなんとか抵抗してきたけれど、もう降伏してしまいそうだ。ロバートの体に腕をまわしたい。温かく息づく彼の体を手のひらに感じたい。耳の下で打つ彼の心臓の鼓動と、息をするたびに上下する胸が、しきりにエヴィーを誘っている。この強い生命力が女たちを引き寄せるのだ。自分もほかの女性たちと変わらない。
「ロバート、やめて」
 肩胛骨をなぞった手が、柔らかなうなじを揉みはじめた。
「やめるって、何を?」答えを待たずに彼はさらにきいた。「エヴィーというのはイヴのニックネームかい? それともエヴリン? いずれにしても君によく似合っている」
 彼の体の温かさと力強さがエヴィーの心に魔法をかける。ああ、今にも屈してしまいそうだ。「どっちでもないわ。エヴァンジェリンよ」
「そうか」ロバートは満足げにため息をついた。本当に彼女のフルネームは知らなかったのだ。どの報告書にも“エヴィー”としか書かれていなかったのだ。「エヴァンジェリン――女らしくて気高くてセクシーで……悲しげな名前だ」
 エヴィーは黙っていたが、最後の言葉が心にしみた。そう……彼女は悲しかった。長い間、悲しくて悲しくて、太陽が照っているのかいないのかもわからなかった。何を見ても灰色にしか見えなかったのだ。容赦ない時の流れに闇の外へと押し出されて、今は太陽の輝きが見える。けれど、暗い影がつきまとわない日はやはりない。光があるところには必ず影がある。喜びがあれば苦しみが、出会いがあれば別れがある。無傷で人生を渡りきる人なんていない。
 ロバートはエヴィーの体を小さく揺らしていた。ほんのかすかな揺らし方なのに、エヴィーはどんどん彼のふところ深くへ入っていった。彼はまた興奮している。離れなくては。でも、何分かの間にその思いは選択肢から消えた。懐かしいようなリズムに抗うのはとても難しい。
「このまま眠るのかい?」
「そうかもね」目を閉じたままエヴィーは答えた。危険は承知だけれど、それ以上に心地よかった。
「そろそろ六時半になる。事情が事情なんだから、少しぐらい早めに閉めてもお客さんたちはわかってくれるだろう」
「一時間半は“少し”じゃないわ。だめよ、いつもどおり八時までいなきゃ」
「じゃあ、僕もいる」ロバートはいらだちをこらえた。彼自身には、マデリンとその家族以外のことで仕事より優先するものはないのだが、エヴィーががむしゃらに働くのは気に入らなかった。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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